↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ
第一部 ユージア国誕生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/228

第11話 歓迎会という名の、品定め

本日2話目の投稿です!

王城の大広間は、やけに華やかだった。


赤い絨毯、天井から下がる無数の魔晶灯。

長机には、肉、魚、果物、見たこともない料理が所狭しと並んでいる。


――どう見ても、祝宴だ。


「……あのさ」


ユージは、隣を歩くナーチャンに小声で言った。


「これ、本当に歓迎会?」


「はい。形式上は」


「“形式上”って便利な言葉だな」


ナーチャンは、にこやかな笑みを崩さない。


「安心してください。毒は入っていません」


「そこじゃない!」


⸻


大広間に入った瞬間、視線が一斉に集まった。


貴族、将軍、魔道士、文官。

全員が、値札を見る商人のような目でユージを見ている。


(うわぁ……)


「いかにも“勇者様”って感じの視線だな」


「ええ。測定不能という噂は、すでに広まっていますから」


「尾ひれ付きで?」


「もちろんです」


即答だった。


⸻


王座近くの席に案内され、ユージは腰を下ろす。


すぐに、年配の貴族が声をかけてきた。


「勇者殿、異世界からの召喚、さぞ大変だったでしょう」


「まあ、それなりに」


「ご安心を。この国が全力で支援いたします」


(あ、これ嘘だ)


直感がそう告げていた。


次の瞬間、別の男が割り込んでくる。


「勇者殿、魔王討伐の件ですが――

 いつ頃、前線に?」


(ほら来た)


ユージは、にっこり笑って返す。


「未定ですね」


「未定、とは?」


「まだ、この世界のこと何も知らないので」


空気が、一瞬だけ止まった。


⸻


「……勇者は、即戦力であるべきでは?」


将軍らしき男が、低い声で言う。


「魔王軍は待ってはくれんぞ」


「それ、俺に言う?」


ユージは首を傾げた。


「呼ばれたの、俺なんだけど」


周囲がざわついた。


ナーチャンが、さりげなくフォローに入る。


「勇者ユージ様は、慎重な方なのです」


「慎重?」


「ええ。無駄死にを嫌う、とても合理的なお方です」


(それ、褒めてる?)


⸻


別の魔道士が口を開く。


「では、力の一端でも見せていただければ――」


「やだ」


即答だった。


「なっ……!」


「測定も実演も、もう十分でしょ」


ユージは肩をすくめる。


「これ以上やると、“使い道”が固定されそうで嫌なんだよね」


その一言で、空気が一段階、冷えた。


(あー、言っちゃった)


だが、もう遅い。


⸻


しばしの沈黙。


やがて、王の側近らしき男が、笑顔で拍手した。


「ははは!

 なるほど、確かに勇者殿は“想定外”だ」


周囲も、遅れて拍手を始める。


「良いでしょう。

 では本日は、純粋に宴を楽しみましょう!」


(完全に誤魔化された)


ユージは内心でため息をついた。


⸻


料理は美味かった。

酒も、悪くない。


だが、どこを見ても視線がある。


(笑顔の中で、査定されてるな……)


ふと、ナーチャンが囁いた。


「ユージさま」


「ん?」


「本日の評価ですが」


「もう出てるの?」


「はい」


「で?」


「“危険だが、今すぐ切るべきではない”そうです」


「微妙!」


⸻


宴の終盤。


ユージは立ち上がり、軽く杯を掲げた。


「今日はありがとう」


場が静まる。


「でもさ」


全員の目を見渡し、はっきり言った。


「俺は、誰かの都合で死ぬ気はない」


ざわ、と音がした。


「戦うなら、自分で決める」


一拍置いて、続ける。


「それが嫌なら――

 最初から俺を呼ばなきゃよかったんだ」


沈黙。


だが、誰も否定できなかった。


⸻


部屋を出たあと、ナーチャンが小さく息を吐いた。


「……大胆でしたね」


「そう?」


「普通なら、もっと取り繕います」


ユージは笑った。


「普通じゃないって、もうバレてるし」


そして、真顔になる。


「なあ」


「はい」


「この国、面白いな」


ナーチャンは一瞬、驚いた顔をした。


「……面白い、ですか?」


「うん」


ユージは、城の天井を見上げる。


「だからさ」


小さく、しかし確かに言った。


「――壊すか、作り替えるか。

 どっちに転ぶか、見極めてから動く」


ナーチャンは、静かに微笑んだ。


「それを聞いて、少し安心しました」


「なんで?」


「ユージさまは、すでに“駒”ではありませんから」


⸻


こうして、歓迎会は終わった。


だが――

品定めは、まだ始まったばかりだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

もし少しでも面白い、続きが読みたい、と思って頂けたら、ブックマークをお願いします。

励みになるので(;^_^A

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。