第11話 歓迎会という名の、品定め
本日2話目の投稿です!
王城の大広間は、やけに華やかだった。
赤い絨毯、天井から下がる無数の魔晶灯。
長机には、肉、魚、果物、見たこともない料理が所狭しと並んでいる。
――どう見ても、祝宴だ。
「……あのさ」
ユージは、隣を歩くナーチャンに小声で言った。
「これ、本当に歓迎会?」
「はい。形式上は」
「“形式上”って便利な言葉だな」
ナーチャンは、にこやかな笑みを崩さない。
「安心してください。毒は入っていません」
「そこじゃない!」
⸻
大広間に入った瞬間、視線が一斉に集まった。
貴族、将軍、魔道士、文官。
全員が、値札を見る商人のような目でユージを見ている。
(うわぁ……)
「いかにも“勇者様”って感じの視線だな」
「ええ。測定不能という噂は、すでに広まっていますから」
「尾ひれ付きで?」
「もちろんです」
即答だった。
⸻
王座近くの席に案内され、ユージは腰を下ろす。
すぐに、年配の貴族が声をかけてきた。
「勇者殿、異世界からの召喚、さぞ大変だったでしょう」
「まあ、それなりに」
「ご安心を。この国が全力で支援いたします」
(あ、これ嘘だ)
直感がそう告げていた。
次の瞬間、別の男が割り込んでくる。
「勇者殿、魔王討伐の件ですが――
いつ頃、前線に?」
(ほら来た)
ユージは、にっこり笑って返す。
「未定ですね」
「未定、とは?」
「まだ、この世界のこと何も知らないので」
空気が、一瞬だけ止まった。
⸻
「……勇者は、即戦力であるべきでは?」
将軍らしき男が、低い声で言う。
「魔王軍は待ってはくれんぞ」
「それ、俺に言う?」
ユージは首を傾げた。
「呼ばれたの、俺なんだけど」
周囲がざわついた。
ナーチャンが、さりげなくフォローに入る。
「勇者ユージ様は、慎重な方なのです」
「慎重?」
「ええ。無駄死にを嫌う、とても合理的なお方です」
(それ、褒めてる?)
⸻
別の魔道士が口を開く。
「では、力の一端でも見せていただければ――」
「やだ」
即答だった。
「なっ……!」
「測定も実演も、もう十分でしょ」
ユージは肩をすくめる。
「これ以上やると、“使い道”が固定されそうで嫌なんだよね」
その一言で、空気が一段階、冷えた。
(あー、言っちゃった)
だが、もう遅い。
⸻
しばしの沈黙。
やがて、王の側近らしき男が、笑顔で拍手した。
「ははは!
なるほど、確かに勇者殿は“想定外”だ」
周囲も、遅れて拍手を始める。
「良いでしょう。
では本日は、純粋に宴を楽しみましょう!」
(完全に誤魔化された)
ユージは内心でため息をついた。
⸻
料理は美味かった。
酒も、悪くない。
だが、どこを見ても視線がある。
(笑顔の中で、査定されてるな……)
ふと、ナーチャンが囁いた。
「ユージさま」
「ん?」
「本日の評価ですが」
「もう出てるの?」
「はい」
「で?」
「“危険だが、今すぐ切るべきではない”そうです」
「微妙!」
⸻
宴の終盤。
ユージは立ち上がり、軽く杯を掲げた。
「今日はありがとう」
場が静まる。
「でもさ」
全員の目を見渡し、はっきり言った。
「俺は、誰かの都合で死ぬ気はない」
ざわ、と音がした。
「戦うなら、自分で決める」
一拍置いて、続ける。
「それが嫌なら――
最初から俺を呼ばなきゃよかったんだ」
沈黙。
だが、誰も否定できなかった。
⸻
部屋を出たあと、ナーチャンが小さく息を吐いた。
「……大胆でしたね」
「そう?」
「普通なら、もっと取り繕います」
ユージは笑った。
「普通じゃないって、もうバレてるし」
そして、真顔になる。
「なあ」
「はい」
「この国、面白いな」
ナーチャンは一瞬、驚いた顔をした。
「……面白い、ですか?」
「うん」
ユージは、城の天井を見上げる。
「だからさ」
小さく、しかし確かに言った。
「――壊すか、作り替えるか。
どっちに転ぶか、見極めてから動く」
ナーチャンは、静かに微笑んだ。
「それを聞いて、少し安心しました」
「なんで?」
「ユージさまは、すでに“駒”ではありませんから」
⸻
こうして、歓迎会は終わった。
だが――
品定めは、まだ始まったばかりだった。
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