表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

プレイモード:ブレインリンクシステム(専用ヘッドセット、脳内アクセス対応)

魔法世界のゲームを作りたい話

作者: かさのした

シリーズの中の短編1話です。

オフィスの休憩スペースにある腰より少し高い丸くて白いテーブルを挟んで、ボサっとした黒髪に黒メガネをかけている男性が、暗い茶に髪を染めている20代前半の男性の質問に下を向いて書き物をしながら答えていた。


「魔法世界のゲームのプログラムを作る?

どうかな?

やったことないし、俺の知らない知識だし。」


「何言ってるんですか、シキさん。

小説とかゲームとか、漫画とかエンターテイメントでも魔法世界は溢れてますよ?」


「うん。

でも、俺は魔法を使ったこと無いから知らないし。

今まで俺が作ったものは、現実にあるもので構築してたから何かしら理論があって、プログラム組めただけ。」


「魔法だって、いろんな理論が展開されていますよ?

その話の中では。

想像、仮想、映像という部分は同じじゃないですか?」


「仮想と言っても、脳にプログラムから刺激を与えて返す値をコントロールするシステムで、ただ目視するだけのモノとは組み方が違うかな。

AIも組み込んでいるから、NPCは自由にサーチ範囲から選択、判断を返してくる。

それもあって、目に見えないエネルギーの調整というところが難しい。」


「目に見えないエネルギーと言うと、この世界なら電気、電波とかそんな系のものじゃないですか。

エコ何とか的に個人に分配とか、需要・供給的にできたりは?」


「まだ、超能力をコントロールと言われた方が楽かな。

環境関係なく、個人の資質だけをコントロールすればいいから。」

シキと呼ばれた男性は、それまで使用していた紙を裏側にして、何やら書き始めた。


「自然界にある力とか、特に自然界の風、土、光、云々というのは際限がないからプログラムにはしにくい。

そのカテゴリ数を決めるとして、プログラムには必ずMAX値が必要だから、カテゴリの中での割り振りは?

最大値を無限大とか馬鹿なことをすると、処理が重くなり、悪くすれば終わらなくなったり、ループしたりしてハングアップだ。

魔法量を1つの値として、そこからの人間と自然の魔法量のタイプを区別するとして、魔法量の割合?個人が持つ割合?

発生率、取得率、成功率、失敗率、具体的にはどう割り振ればいい?

変換率もいるのか。

主人公をチートとするなら、主人公は最終的に全てのカテゴリのMAX値を取得する。

それ以外のキャラはどの程度に抑えればいい?

個々にMAX値を設定し、その総量をその世界のMAXとして得る方法もあるが、そうしたら、複数に相対するときに、主人公のMAX値を越えてしまう。

主人公をグループに組み込んだとき、そのグループと敵対グループの人数総数のMAX値の制限をどうするか。

ラスボスとその部下の割合をどうしたら、主人公を勝たせられるか。

NPCが自由に動けるし、個人の脳の環境によって変わるから、、、」


話をしている男性には目を向けず、シキはひたすらテーブルの上の紙に何やら書き込んでいた。


「そう言いながら、手は動いていますよね。

何ですか?

この記号?」


「これは、全体構成を表すもので、ここから大なりの記号はない。

イコールは神か主人公、いや、神を敵とする世界なら、ここに神を入れてもいけない。」


「なるほど、魔法量とマナとの関係は?」


「マナ?

マナが存在する前提とすると、一般的にはマナというのは魂の根源だから、人に付く種別になる。

ただし、ヒトというのは、構築世界の中では、1つのモノ扱いだ。

モノにつく種別であるマナは、主人公に1つしかないが、マナの種別に付く属性は複数持たせる必要がある。」


「だから、ヒト、イコール、マナ、マナを頂点にして、下にカテゴリ、風や光などで、そのカテゴリの下に更に複数の属性、これは魔法のタイプを書いているんですね。

なるほど。」


「そして、ヒト、イコール、マナには最大値をつける。

自然の魔法量やその他の魔法エネルギーに変換するが、この最大値の中に取り込む値は圧縮可能とするとして、各値の制限をどうするか。

組み合わせが発生したときに単純にプラスにするのか、するとMAX値を越えてしまう場合があるから、組み合わせた時を100として強弱などの割合をつけるのか、その時の100は個人設定の魔法の強さの上限となるから、結局は強くならない、ということは、倍率を設定する必要がある。」


「なるほど、なるほど。

そうすると、プログラム的には、この全体構成を総量と例えることで。」


「いや、全体構成の値を量として設定してはいけない。

総量としてしまうと、それぞれのキャラへの分配、分割が難しくなる。

何故なら、主人公の持つ値が構築世界の最大値としたとき、ラスボスのMAX値、それぞれのキャラのMAX値のことを考えると、キャラクターが何人出てくるのか制限して、すべてのNPCのMAX値を設けるのか、登場人物を制限せずに、指定人数よりキャラが多ければ、残りのキャラの魔法量を0にするのか。

そうするとかなりの設定に縛られて、自由度が制限されブレインリンクシステムのゲームとしては面白みがなくなる。

だから、全体構成の値を量として設定してはいけない。」


シキは書いているペンを止めて、紙の上をトントンとペン先で叩いている。


「そうなると、後から主要キャラが出てきた場合に困りますね。」


「主要キャラはこちらで値を確保するよう制限するとして、プレイヤー個人の環境でつくり出されたNPCたちの容量の問題を考えないといけない。

最終目的は、主人公を最後まで残すことだ。」


「なるほど。」


「さらに、魔法の種別による様々なアクションに対して、どのタイプのどの属性にどの程度の値を使うのか。

全体構成の中にはあるが、値としては独立させて構成するモノを別に作る必要がある。

これも主人公の成長具合で制限を解除するとして、解除条件の部分も独立させて、複数の独立構成のモノから、同じ条件でアクセスできるように。

主人公の制限を解除したときに、主人公が使う各魔法の各タイプの魔法量にあたる値は全体構成から独立させている値を使うとして、キャラのMAX値をどう扱うか。

キャラによって上限を変えて、主人公よりもある種類のある属性では多い値を与えるキャラを作るのか。」


「主人公は大抵チートですから、あるとしても癒し系の魔法でしょうね。」


「一番問題なのは、プレイヤーの立場をどうするか。

最後に倒されるラスボスにするのか、主人公にするのか、サブキャラにするのか。

すべてのエラーをゲームオーバーにつなげるのか、回避行動のキャラをプログラムから出すのか。

それによって、モジュールの数もかなり違ってくる。」


「じゃあ、今、そこに書かれているものをクリアしたら、ゲームできそうですね?」


「えっ?

ああ、そうなの、か?

俺は、魔法は分からないけど、プログラム的に与えるものがわかるならできるな。」


「じゃ、ちょっと、他メンバーと相談して企画書作ってみます!」

暗い色の茶髪の男性は、テーブルを離れて駆け出そうとしている。


「えっと、まだむり、、」

シキは自分が書いている紙から目を上げて相手の男性の方を見ると、誰かがその男性の後頭部を後ろから押さえつけていた。


「わっ、頭の後ろ掴まないでください。

タクトさん、背が高いからって、」


「ほら、何走り去ろうとしてるの?

まだ、無理って言ってるだろ?

シキのペースに合わせて話を聞いてやって?

あと、、、話が噛み合ってないとこあるから、最後の方は本当に全く噛み合ってないから。」


タクトと呼ばれた男性は、何時から聞いていたのか、話の噛み合わなさに突っ込みを入れている。


「タクトさん、プログラマーでもないのになんでわかるんですか!」

茶髪の男性は放された後頭部の髪を整えながら、自分より頭一つ分背の高いタクトに食ってかかっている。


「タクトもプログラマーだ。」

シキは、茶髪の男性ではなくタクトを見て言っている。


「えっ?」


「シキにはついていけない程度、だけど。

このオフィスでの肩書は、一応プログラマーで、テスターで、他も兼任。」

タクトはよそ行きの笑顔を作り、茶髪の男性に答えた。


「そうだったんですね?

他?」


「タクトは楽曲も作れるから、テスト段階での音楽を入れてくれることがある。

時々、タクトの曲が他の曲よりも合う場合は本採用にもなる。」

シキは相変わらず、茶髪の男性を見ず、タクトに向かって話している。


「へーそうなんですね。」


「本採用なんて、本当にたまにだ。

俺より才能のある奴なんか腐るほどいるしね。」


「プログラムも組めて、テスターも兼ねられて、楽曲も提供できる。

いろいろできて、突出が無いのは器用貧乏ですかね?」


「器用貧乏って。

はは、ある意味そうか。」


「そんな微妙な顔しなくてもいいじゃないですか。

最近マシロさんといい雰囲気だから。

美男美女でいいですよね。」


「ああ、器用貧乏とは関係ないけど、いい雰囲気なのは確かだよ。」


「しまった。

のろけられた。

話を魔法世界のゲームのプログラムに戻しましょう!

企画書作りたいんですよ。

もう少し話いいですか?

シキさん、タクトさん。」


「「・・・・・・」」


シキが相手の男性の顔を一度も見ていないことを少し離れたテーブルから見ていたタクトは、彼がシキの能力を引き出す企画書を作ることは無理だと確信していた。


このオフィスでは日常よくある話だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ