表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/529

女神ステラの世界が救われた話をしよう世界-罪-

「ならステラが言うことは何もないわ」

「良かったよ」

「何が?」

「いや、用済みとばかりに無理やり元の世界へ帰らされることも考えていたから」

「それは酷くない? ステラがそんなことするわけないじゃない」

「悪い。いろいろと不安だったからさ」


 勇者殿としては自身がどれだけこの世界に残りたいと願っても異世界から来た人である事実は変わらない。万が一にでもそれが理由で帰らされることのではと不安があったのは理解できる。理解は出来るが、それでも苦楽を共にした私の事を信頼してくれていなかったことは正直悲しい。


「いくら不安でも……やはり酷いと思うわ」

「だから悪かったって。ステラには前科があるからついな」

「前科ってステラが以前にも何か悪いことしたってこと?」

「俺をこの世界に無理やり連れてきたこと」

「……その節は申し訳ありませんでした」


 私は深く深く頭を下げた。勇者殿の言ったことは私が彼にした一番最初の罪だ。忘れるべきではない罪なのに私の中でその出来事はだいぶ軽い出来事になってしまっていた。これは深く反省しなくてはいけない。


「無関係だったあなたに大変な苦労を負わせてしまうことになってしまって……ごめんなさい」


 思えばこの世界に連れてきたことに対してちゃんと謝ったのは今回が初めてだ。旅の最中はいくら大変だったとまだ言い訳が出来るが、魔王を倒した後には一年間も時間があった。確かに各地の浄化で忙しくもあったが謝る機会はいくらでも作れた。

 謝罪しようという選択肢をまったく考えていなかった自分自身に嫌悪感を覚えてしまう。


「元の世界に帰らないと決めたこととは別にステラが俺をこの世界へ誘拐してきたことは許すつもりはない」

「……」

「だけどもう怒ってもいない。おかげというのは変だけどトワネスに会えたし、いい仲間にも出会えて、楽しかったことも沢山あった。もちろんいい仲間の中にはステラも入っている」


 勇者殿が立ち上がって私の前に立つ。私は頭を下げたまま勇者殿の言葉を待つ。


「だから……ありがとう。俺をこの世界に連れてきてくれて」


 あまりにも矛盾する言葉に思わず私が頭を上げると勇者殿は私に向かって手を差し出していた。握手でも求める手だ。私にはその資格はないというのに。


「ステラは許されないことを……」

「自分でも言っていることが無茶苦茶だとは分かってる。さっきも言ったけど許すことはないよ。でも感謝もしている。両方本当で……ステラが大事な仲間だってことは事実だ」


 勇者殿の言葉に目頭が熱くなる。私は勇者殿から本来あったはずの夢と未来を奪った存在だ。命の危機へと追い込んだ存在だ。勇者殿にしてみれば私も魔王と同様に扱われてもおかしくない。

 だから差し出された手は私は握れない。握ってしまうと私はきっと私を許してしまう。勇者殿が許さなくても罪を背負い続けると理解してても許してしまう。それはいけないと思った。


「ステラの一番悪いところはな。自分が悪いと思い込むとどこまでも自己嫌悪に陥るところだ。悪いと分かったならそこで立ち直ればいいだろ、女神様。頼りになる仲間がいるんだ。一人じゃ無理なら声をかけてくれ。一番最初に俺に声をかけた時みたいに」


 一番最初、元の世界にいた勇者殿へなんて声をかけたのか私はそれすら忘れている。


「助けてほしい。そう言ったよな」


 言われると思い出す。魔王の拘束を抜け出して女神としての力のほとんどを奪われ、残された力を使って異世界へと救いの手を伸ばした。誰かを選んだわけではない。誰でもいいから助けてほしくて声を伸ばした。


「俺は誰の声か当然分からなかったけれど……ステラの声を聞いて助けたいと思った。切実に助けを呼ぶ声だって分かったからな。だからその声に俺は助けてやるって言った。今度もこれからも同じように助けになるから顔を上げろ、ステラ。ちなみに今後は俺だけじゃなくて皆もいるけどな」


 言われて気付く。頭を下げる私の周囲にいつの間にか複数の影があることを。

 視線を動かして見渡すと旅の仲間達が私と勇者殿を取り囲むように集まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ