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女神ステラの世界が救われた話をしよう世界-勇者殿-

 夕食会という名の宴会の翌朝、アフリードとトワネスが親子で墓所へと向かったという話を遅めの朝食をとりながら聞いた私は良かったと息を吐いた。

 朝食後、城内の中庭で散歩をしていると中庭の中央にある池の前の長椅子に座ってうな垂れている人影が見えた。

 黒髪の青年は二日酔いのためか疲れたように肩を落として全身脱力していた。私が近く来ても気付かないほどなので相当参っているのだろう。


「昨日はずいぶんと呑んでいたわね。勇者殿」

「あ、ああ、ステラか」

 

 今この世界で唯一私をただ『ステラ』と呼んでいる勇者殿、雪城悠真が顔を上げた。大きくまっすぐな瞳にはクマがあり、やや面長で女性っぽい顔のせいもあってやつれているようにさえ見えた。


「二日酔い治してあげましょうか?」

「治してほしい気持ちもあるけどいいや。この気持ち悪さも昨日楽しかった証拠だし」

「ならいいけど、無理しては駄目よ。もうすぐトワネス夫婦になるんだから。体調崩して結婚式が駄目になったら大変」

「……夫婦って言われるまだ照れるんだよな。これって慣れるのか?」

「それは聞かれても困るわね。結婚している人に聞かないと」

「そうだよな……でも仲間内で結婚している奴が誰もいないしな」

「そうね。女性好きを公言している奴もいるけど結婚となると先が長そうね。私としてはライザックが一番可能性があると思うけど」

「ライザックか……言われてみると確かに。国じゃ人気者だったしな。本人は固い人だけど押しには弱いし」

「結婚したら間違いなくいい父親になるわ」

「ああ、それは同意だ。俺自身ライザックのことは父親みたいに感じたことが何度もあるからな。本当に頼もしい人だよ」

「まったくそうね」

 

 勇者殿が長椅子から少し腰を浮かせると端の方へと体を移動させた。


「女神様を立たせたままじゃエメオールに矢で射貫かれるからな。座ってくれ」

「エメオールもこんな事で撃ってくることないと思うけど」

「冗談だよ」

「あら、そうだったのね。駄目ねぇ、こういう冗談を冗談で返せるようにならないと」

「最初会った頃に比べたらマシになってきたと思うぞ」

「そう?」

「そうだよ。あの頃は何でも信じきって大変でした」

「苦労をかけました」


 私は軽く頭を下げた後、長椅子に腰を下ろした。


「今更だけどいいお庭ね」

「ああ、静かで綺麗で好きな場所なんだ。トワネスの母親が作ったらしくて、トワネスもお気に入りだって言っていた」

「きっとアフリードもそうでしょうね」

「そういえば今日は王様とトワネスが一緒に墓参りに行っているみたいだな」

「トワネスと離れて寂しい?」

「一日くらい別に……むしろ最近親子仲が悪かったからこれがいい機会になってくれればと思うよ」

「本当にそう。これからも苦労はあるだろうけど幸せの方が沢山あるはずだもの。そのためには身近な人とは仲良くないと」

「ステラもいろいろと言えるようになったな」

「女神をいつまでも馬鹿にしない方がいいわよ」

「馬鹿にしたことなんてない」

「嘘。少なくとも最初は駄目だこいつはとか思っていたでしょ」

「……」


 勇者殿が口を一文字に結んで沈黙して目線を逸らした。その行為だけで私の言ったことが正しいことを証明していた。


「別にいいんだけどね。事実、最初は……ううん、しばらくは役立たずだったし」

「そんなことない。確かにステラのせいで危険な目にあったこともあったけど、助かったことはそれ以上にあったはず……」

「励ましてくれてありがとう。あなたは本当に優しい人、出会った頃から」

「……なんだよ、恥ずかしい」


 勇者殿が照れた顔を隠すように空を見上げた。私も習って見上げた空は一面の青空が広がっていて鳥達が飛び交っていた。

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