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世界の境

「相手としてはまだ生気集めはする必要があるはずだからこのまま何も起こさないはずはないけれど」

「隠れて行動されると私達二人では厳しいですね」

「ええ、範囲を広げるにしても限度があるし……しょうがないかな」


 気は進まないけれど手段はまだあった。


「私の世界に置いてきてる力をこっちに持ってくるわ。そうすれば悪党がどこにいても見つけることは簡単にできるはず。私の世界で危機が起こった時にすぐに対応できないからあまりやりたくはないけれど、封印されているなんて如何にも危険だしね。仕方ないわ」

「申し訳ありません。私が力不足なばかりにお手を煩わせてしまって」

「気にしないで。元々私が関わっていた事案だし。それにあまり時間をかけると知り合いが被害に会うかもしれないから、早く片付けたいのよ」


 恩ある勇者殿の家族が異世界からの危機にさらされることは避けたい。勇者殿の両親も、就職した妹さんもパトロールしている範囲は生活圏でもないし、仕事で来るようなことはないだろうけれど、悪党の方が襲撃場所を移動させる可能性はある。

 もちろん香織もだ。最近、夜遊びはしていないようだけど、以前襲ってきた奴らの仲間がまだいる可能性もある。その場合は日中帯でも危険だ。香織には感知魔法をかけているので何か危険が迫れば分かるようにはしているが、危険な目に合わないことが一番だ。

 

「で、探索だけどね。私の力を向こうから持ってくるのはすぐには出来ないの。大きな力を別世界から持ってこようとすると下手をしたら世界を壊してしまう可能性があるの」

「世界が壊れる……それほどですか」

「私がこの世界に来る時も苦労したから。世界と世界の間には境があるの。そこはまぁ分かりやすくいうと城壁みたいになってて、中に入るための扉もあるの。小さいモノならその扉を通って異世界間を行き来出来るんだけど、女神くらいの大きなモノになると通常ある扉では通れないの。それでも無理に通ろうとすれば城壁が壊れて世界の形も壊れるわ。そうなると何が起こるか分からない。最悪、その世界の理が壊れて世界が滅んでしまうかもしれない」

「ステラさんはどうやってこの世界に?」

「私が通れるくらいの大きな扉を作ったの。常に設置していると他に悪い奴が来るかもしれないからすぐに閉じたけどね。だから今回も大きな扉を作る必要があるわ。何度かやってコツみたいなものは掴んでるから三日くらいあれば出来るはずよ」

「分かりました。ではその間も僕は出来る限り周辺の探索を続けます」

「お願いね」


 私は清隆君と別れて部屋に戻ると私の世界に手紙を送って状況を知らせた。実を言うとこちら側の私がやることはほとんどない。扉を作るのは向こう側、私の世界に置いてきている力の方の仕事だ。指示は送ったので今すぐにでも作業を開始しているはずだ。私がやることは力が扉を抜けてきた後にすぐに扉を閉じることだけだ。

 なのでこれから三日は別件に集中できる。

 香織の両親との対面は明日なのだ。気にしないといけないことは多いが一つ一つ解決していくしかない。


「全部片付いたら山にキャンプでも行きたいわね……」


 無事解決した後のことを考えていたら昔、勇者殿に言われた言葉を思い出した。


「フラグだったかしら。言うと嫌なことが起こるとか……言わない方が良かったかも」

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