どこでも美味しいコーヒーが飲める昨今は素晴らしい
朝、目を覚ます。
外は晴れているようでカーテンの隙間からは陽がさしていた。時刻は八時を回ったくらいで朝食を求めて私のお腹の虫が鳴った。スマホの着信を見てみるが香織を始め、誰からも今のところ連絡はない。そして今日は予め清隆君にはパトロールに参加しないと告げている。
つまり今日の私は久しぶりに本当の休暇日を満喫できる。
悩ましい出来事は多々あるけど、それはこの世界の人達がまず動いているので私は必要以上に積極的に動くつもりはない。頼まれれば出来る限り応えるつもりではいるけれど、この世界の人達だけで解決出来るならそれが望ましい。
ソファ兼ベッドから起き上がり、顔を洗って最低限の身だしなみを整えると朝食を求めて外へ出る。部屋には買い置きのレンジで温めるご飯などはあるけれど、今の気分は外食だ。
朝食を外食でと考えるとファミレスかカフェのモーニング、または牛丼チェーンの朝定食などが候補に挙がる。
朝食を何にするか悩みながら普段歩かない道を通勤する会社員や学生達とすれ違って歩き出す。ファミレスと牛丼屋、どちらに行くにしても中途半端な道ではあるけれど、決まった場合どちらにも行きやすい。
小鳥の声が聞こえる朝の道は柔らかい風が吹いているおかげもあって気持ちがいい。
ふと風に乗って焼けたパンの匂いが漂ってきた。匂いの元を探ると道沿いのパン屋からだった。
外食という気分だったけれど、ここで焼き立てパンを買って家で食べるという新しい選択肢が出てきた。悩ましい。
家でパンを食べるとなると対となる飲み物が必要だ。基本はコーヒーだけどちょうどインスタントを切らしている。ここ最近忙しく買い物にいけなかったせいだ。となると牛乳となるが当然これも賞味期限などの問題で常備はしていない。
どうするかと悩みながらパン屋を覗き込んでいると店の一角にカフェスペースがあるのを見つけた。見ると何人か座ってパンと飲み物でモーニングをしていた。パン屋の中で飲み食いできるなら問題ないと朝食はこのお店で食べることを決めた。
店内に入ると焼き立てのパンの匂いが漂ってくる。棚には菓子パンからサンドイッチと食欲をそそる商品が並んでおり、可能ならすべて食べていきたいと思ってしまう。が、そこは我慢をしてパンを選んでいく。
朝食ということでメインはサンドウィッチにすると決めたが、これもなかなか種類があった。シンプルなサンドウィッチとして卵サンドにレタスハムサンド、ボリュームがあるバゲットサンドでは生ハムやトマトを挟んだモノなどがあり、手にしたトングの行き先を迷わせる。
ふわふわな食パンと卵に惹かれはしたが、最終的に今はボリュームが欲しいと判断してバゲットサンドを選んだ。厚切りのトマトとハム、レタスが挟んでいて美味しそうだ。
もう一品少し甘いものを食べたいと店内を探すとちょうど店員さんが運んできた出来立てのアップルパイが目に入った。これはもう今食べてくださいと言われたも同然と判断してアップルパイをトレーに乗せた。
パンを決めた私はレジに行き、飲み物としてコーヒーを頼んで料金を払うとカフェスペースの窓際カウンターに座った。すぐに注文したコーヒーが運ばれてきて私のモーニングが始まった。
まずはコーヒーを飲んで口を潤す。パンはどうしても水分を吸うためにカラカラの状態で食べると味がちゃんと味わえない気がするので私はなるべく飲み物を飲んでからパンを食べるようにしている。
最初に食べるパンはバゲットサンドだ。両手で抱えるくらいのボリュームがあるので生ハムとトマトを一緒に味わえるように大口でかぶりつく。口の中に広がるのはトマトの酸味と生ハムの塩気。それだけでも充分味覚を刺激してくれたけれど、加えてバゲットの内側に塗っていたバターの旨味がさらに美味しさを倍増させる。
そして何よりもバゲット自身の触感だ。焼き立てというのもあるのだろうけれど、外はカリカリ固めで内側はもっちりとして柔らかかった。おにぎり派だった心がわずかにパン派に揺らいでいる。
気持ちを落ち着かせるためにコーヒーを飲む。コーヒーにしてもインスタントではなく専用のコーヒーメイカーで豆を挽いて淹れているので美味しさもそれなりだ。手軽にそれなりの品質のコーヒーが飲めるお店が多くて個人的に満足している。私の世界にもコーヒーはあるけど、味の品質は店や国によって差が激しくてどこでも美味しくではなかった。コーヒーという飲み物がメジャーではないせいでもある。けど、こちらの世界に来て美味しいコーヒーを飲んだ以上は私の世界でもコーヒーをちゃんと広めなくてはと勝手に思っている。その辺りの報告書は手紙として送っているのですぐに何か成果があるとは思っていないが私がこちらで過ごしている間に進展してくれるのではと期待している。
気が付くとバゲットを食べつくしていた。朝の私は思った以上にお腹が空いていたらしい。残りはデザートとして持ってきたアップルパイだ。サクサクのパイを両手で潰さないように持ち上げて小さく食べる。パイ生地独特の歯ごたえと砂糖で煮込んだリンゴの甘さが口の中に広がる。リンゴの触感もちゃんと残っており噛み応えもあった。甘さは正義と称える檄文が糖分と共に脳へと送られている。
アップルパイもあっという間に食べ終えた私は最後にコーヒーを飲み込む。この甘さと苦みを交互に味わうと互いの味がより強調されている気がする。
朝食を終え満足して息を吐く。こんなにゆったりとして充実した朝食は久しぶりだ。久しぶりだからこそ感嘆をより感じているのかもしれないけれど、少なくともこのお店にはまた来ようと決めた。
「さて、今日は残り何をしようかな。溜まったドラマを見るにしては朝から天気が良すぎる」
このまま散歩へと繰り出すか、家に戻ってドラマを見るかを決める前にコーヒーのおかわりを頼んだ。
コーヒー好きですが飲みすぎると頭痛くなります。




