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甘い食べ物を食べると

「怒ってる? 私が? 呆れてるだけよ。前から馬鹿やってるなぁって思ってたけどここまでとは思わなかったからさ」

「馬鹿って……あんたも学校の成績じゃ同じくらいでしょ。というかこの前の中間は私の方が成績良かったし」

「あんなのたまたまヤマが当たっただけでしょ。中間前のテストは私が勝ってたし」

「はい、そこまで。ステラが変なこと聞いたせいね。この話題は終わりにしましょう」


 この往来の中で本格的に口げんかに発展しそうになったので改めて二人の間に入る。


「ステラ……」

「今はちょっと距離を置きましょう。お互いに用事もあるんだし。ここで時間を浪費してもしょうがないわ」

「……っ。それもそうね、香織なんかに時間使いたくないわ。じゃあねぇ」


 女子高生は一瞬顔を苦くすると捨て台詞を残して歩いて行った。


「こっちもあんたなんかに時間使いたくないわよ~っだ!」


 香織は離れていく女子高生の背中に向けて舌を出した。確か『あかんべぇ』と言われている行為だったと思う。


「香織、そんなに舌を出したらはしたないわよ」

「ふん、今更よ」

「……喫茶店に入りましょう。服を選んでもらったお礼に奢るわ」


 原宿の喫茶店はどこも混んでいてようやく見つけたのは人が多い通りから少し離れたレトロなお店に入ることができた。店内は静かでお客もおらず、落ち着けそうなお店だ。席についてメニューを見ると店の雰囲気同様にシンプルでコーヒー以外にはココアなど少し甘い飲み物があるだけだった。


「私はアイスコーヒーにするけど、香織はどうする?」

「……甘いのがいいからココア。それとチーズケーキ頼んでいい?」

「いいわよ。私も注文しようかな。自家製ってことはおすすめみたいだし」


 注文をして少しすると注文した物が運ばれてきた。香織は湯気が立つココアを冷ますために何度か息を吹きかけた後、一口飲みこんだ。香織はまだ熱いであろうココアが喉の奥に飲み込むと脱力したように大きな息を吐いた。


「落ち着いた?」

「うん」

「……さっきの子の事、聞いてもいい?」

「やっぱステラは気になるよね」

「まあね」

「いいわ。今更ステラに聞かれて困るようなことなんてないし。話してあいつがどれだけひどい奴が教えてあげる」

「じゃあ、まずはあの子の名前は?」

木島 咲瑛(きじま さえ)。同じクラスよ。学校で最初に出来た友……知り合いよ」

「友達ね」

「今は違うから」


 香織が半目で睨んでくる。


「分かった」

「……咲瑛(さえ)とは気が合う方だったからそれなりに仲良かったの。咲瑛(さえ)は片親で父親と暮らしてるんだって聞いて、私と同じように苦労している子がいるって勝手にシンパシー感じてた。私は一応両親いるのにね」

「何が苦労かは人それぞれ。片親でも幸せな子はいるし、両親がいても不幸な子はいるのよ」

咲瑛(さえ)の家はお金無くて苦労してたみたいだけどね。結構家の苦労話してくるのよ、あいつ。不幸自慢かっての。私だって家の愚痴言いたかったけど……言えなかった。両親居るだけいいでしょとか反論されそうでさ。それ言われてたら私、めっちゃ喧嘩してたと思う。いいわけないでしょって」


 話の合間に香織がチーズケーキを一口大に切って食べたので私も食べてみる。優しい甘みだ。


「……そんなんで一方的に咲瑛の家の事情知ってたから家出した時も咲瑛には相談しなかったのよ。私が押し掛けて苦労かけさせられないでしょ。それなのに咲瑛の奴、私の思いやりを踏みにじるようにいつの間にか私の悪口ばかり……。いや、事実もあるよ、パパ活とか。でもやってないこともワタシ、知ってるぅ~って風に噂してるからさ。もうむかついちゃって……友達だと思ってたのに」

「友達に悪い噂を流されたら気分悪いわね」

「そう。そうなのよ。少しは庇うくらいしてくれてもいいのにさ」

「香織は怒ってるわよね」

「当然よ」

「彼女、咲瑛も怒ってたわよ」

「なんであいつが怒るのよ。悪い噂流された被害者は私よ」

「それは分からないし、香織が被害者なのは確かよ。でも、彼女にも彼女なりの考えがあるんだと思う。最初から香織を友達だと思ってないなら怒りもしないわ」

「……どういうこと?」

「よく分からないってこと。分かるためには本人と直接話さないとね」

「ぜぇぇったい、無理」


 咲瑛と話し合うことを拒否して香織は残ったチーズケーキを食べ始めた。私もコーヒーを一口飲んだ後にチーズケーキを食べ始める。

 これは女神のカンだけど一度落ち着いて話し合えば香織と咲瑛の事については解決する気がする。

 きっとお互いまだ友達だと思っているはずだ。

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