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第36話 地下15階の激闘、開幕!

累計1000pt超えました!

初めてです!

これからも頑張ります!


更級(さらしな) 理沙(りさ)』救出作戦のために集結した自衛隊員は総勢20名。

 そのいずれもが志願者であり、優秀な戦技成績を有する戦闘のエリート集団。

 自衛隊の、ひいては国の名誉のためにも絶対に失敗が許されないこの作戦に、日本中の部隊から選出された猛者たちである。


 彼らは5人ごとに4つのチームを構成して探索を開始した。連日の訓練と、ダンジョンの通路の幅や一階層あたりの面積、そして戦闘効率を考慮した末の編成であった。

『ミサイル事件』を含むこれまでの経験から、モンスター相手には重火器があまり有効でないことが判明しているため、彼らの武器はそのほとんどが近接戦闘用。

 持参された武器は多岐にわたる。アーミーナイフなどはまだ普通な方で、現代日本では実用性の観点からあまりお目にかかることのないような武器、例えば日本刀などを手にしている者もいる。

 ただ……救出作戦が開始してから数日が経過した後の彼らの共通認識では、地上から持ち込んだ武装の中で一番役に立つのは盾――暴徒鎮圧用のライオットシールドであった。

 この盾は透明のポリカーボネート製で視認性が高く、防御性能のわりに軽量で取り回しがよい。片手に盾を構え、空いた手に武器を握ることも可能。

 盾で殴る――シールドバッシュも有効だった。綺麗に設えられた武器よりも乱暴に扱えるのもポイントが高い。現代技術はファンタジーに膝を屈したわけではなかったのだ。


「透明な盾ってタンクには最適ですよね」


 そう笑った隊員は、他のメンバーと会話が通じず、頬を紅潮させて沈黙してしまった。

 重度のオタクである内藤(ないとう)二曹は『わかるわ』と何度も頷いていた。

 どういう意味かと大迫(おおさこ)が尋ねると、RPG用語で『タンク=盾役』であるとのこと。

『タンク=戦車』ではないのか。ゲームに疎い人間には訳がわからない。普通に日本語を使ってほしい。


「メイン盾が来れば勝てる。これは歴史が証明しています」


 なぜか自信満々に言い放った内藤に、盾を持った隊員以外の全員が奇異の視線を向けることとなった。

 部下が何を言っているのかさっぱり理解できない大迫は、あっさり擁護を諦めた。


 救出作戦の前段階として、隊員たちの訓練を兼ねた浅層の探索が幾度も行われた。

 出現するモンスターはゴブリンと犬。見てくれは小柄だが、明確な殺意を持って襲いかかってくる相手に気は抜けない。

 討伐するとその場に石が現れる。持ち帰った石を調べた技術者たちによると、かなりとんでもない代物らしい。

 エネルギー革命がどうとか大騒ぎで、できるだけ多く石を持ち帰ってこいと指示が出た。


「要救助者の救出が最優先だ」


 一行のリーダーである大迫は一言にして切って捨てた。

 なおも言い募ろうと食い下がった者たちも、強面の巨漢に間近で睨まれて口を閉ざした。

 大迫は太い和筆で力強く描かれたようなイメージのある武骨な大男で、これまた太い眉毛が印象的な顔立ちをしている。分厚い唇から放たれる低音帯の声はパワフルで重い。なお、今年で35歳になる。オッサンだ。

 地元出身とは言え別に要救助者たちと顔見知りというわけではなかったが、姪っ子と同年代の少女たちが暗くて深い闇の底から助けを求めていると聞かされては、何としても救出を成功させたいという使命感のひとつも湧き上がる。

 実のところ『更級 理沙』救出作戦に参加する者は様々な思惑を胸に秘めており、決して一枚岩というわけではなかった。それでも、多かれ少なかれ『要救助者助けるべし』という意思は共通している。何だかんだで彼らは自衛隊員だ。

 不謹慎極まりない指示に対する大迫のにべもない返答は、彼らにとっても胸がすく思いであり、このリーダーになら命を預けられるという一体感と信頼感が生まれた。


 探索済みの階層は地下8階までだった。そこから後は未知の領域。進行は鈍る。

 理沙からの情報により『1階層=1時間』がほぼ定説と化している。

 仮に地下20階まで潜り、そこから引き返そうとするならば……部隊はダンジョンの中での休息を余儀なくされる。

 これは想定済みであり、そのための20人4チーム編成であった。

 それぞれ交代で休息・仮眠を取ることによって安全を確保する。


 襲いかかってくるモンスターや様々な部署からの圧力やらに辟易しつつも、探索は概ね順調だった。

 状況に変化が訪れたのは地下13階。

 ここに来て現れた新種のモンスターが、一同に苦戦を運んできた。


 見てくれは小さな子どものよう。ゴブリンよりもさらに小さい。

 ただし、この新種は空を飛んでいた。地下通路に浮いていると表現する方が正しい。

 問題はそこではなかった。

 この小さな魔物が聞き取れない言葉を吐き出して両手を掲げると――そこに小さな火の玉が生まれたのだ。


「魔法?」


 誰かが呟いた次の瞬間、火の玉が自衛隊に向かって打ち出された。

 速い。そして眩しい。闇が深いダンジョンに慣れた目を灼くには十分な光量を備えている。

 見切れないわけではないものの、これまでの地下探索行ではついぞお目にかかったことのないスピードだった。

 最前で盾を構えていたタンク役の隊員が――これをガード。


「熱っ!」


 小さな叫びとともに透明な盾を取り落とした。石畳にガランと音が響く。

 対する新種は、念のため持ち込まれたハンドガンで脳天を撃ち抜かれて床に落下し、消失した。

 銃を構えていたのは内藤二曹だった。黒目黒髪黒い肌の女性自衛官が握る銃口からは、白い煙が立ち昇っている。


「ふう」


 モンスターに銃火器は効果が薄いと判断されていたが、どうやら相手によるようだ。少なくともあの空飛ぶ魔法使いには効いた。

 ここから、救出部隊の風向きが変わってくる。

 人間に限らずあらゆる生き物は炎を恐れるもの。それが自然発生したものであれ、人間の手によるものであれ。

 その炎が『魔法』というファンタジーな手段によって生み出され、悪意を持って自分たちに撃ち出されるという現実。

『魔法』を放ってくるモンスターがどこから出現するか予想がつかないというシチュエーションが、部隊の心理的な消耗を早めた。自衛隊は救援速度を重視するあまり、作戦開始時段階の未踏破領域について丁寧に探索してはいなかった。

 なぜ地下から登ってくる少女たちが執拗なまでにマップを埋めているのか、ここにきて理解させられた。死角潰しだ。四方八方から火の玉を放たれてはかなわない。説明がなかったのは、言うまでもないと判断されていたからか。


「クソッ……撤退だ!」


 大迫の判断は早かった。

 地下14階にて一時撤退を決意。

 インプが出現していない地下12階まで退いて体勢を立て直すこととした。


 交代で休息するさなかに『Eちゃんねる』の理沙スレを見た内藤二曹は、早速新種のモンスターについて情報を共有しようとして――理沙たちも先ほどのモンスター(呼称:インプ)に遭遇していたことを知った。

 もっとも、あちらは特に火の玉を恐れることもなく粉砕していた。休息時間に交代しながら動画をチェックした一行は、


『実は自分たちより要救助者の方が強いのではないか?』


 という深刻な疑問に行き当たった。リーダーである大迫は流石に口にすることはなかった。

 内藤は持ち前のマイペースっぷりでこの問題をスルー。

 難しい顔を突き合わせる同僚を横目に、理沙とタイムスケジュールを調整。

 自衛隊は一度地上に帰還。インプ対策をはじめとする戦術を再構築。

 次回、4日後の突入で合流を目指す。相当な強行軍になることが想定される。

 ランデブーポイントは……おそらく地下15階になるだろう。まだ誰も足を踏み入れていないフィールドだ。

 あちらは地下の戦闘に慣れているとはいえ15歳の少女ふたりに下僕のゴブリン1匹。

 こちらは全国から集められた自衛隊の精鋭20名。


「負けるわけにはいかんぞ」


 誰かが放った言葉に、誰もが頷いた。



 ★



 人類が初めて足を踏み入れた鷹森ダンジョン地下15階は、明らかにおかしかった。

 これまでの階層とは空気が違う。

 ピリピリとしたひりつくような緊張感、声を出すことも憚られる圧迫感。

 そして『誰かに見られている』という確信に由来する不快感が一同を蝕む。

 

「なんだ、ここは?」


「……さぁ?」


 不審に思った大迫が問うも、内藤も答えを持ってはいないようだった。そもそもなぜ内藤に問いかけたのか、よくわからなかった。

 地下20階から登ってくる理沙たちと、地上から降りてくる自分たちの情報をすり合わせた結果、この地下15階に出現するモンスターについても予想がついている。

 ゴブリン、犬、インプ、そしてホブゴブリン。

 自衛隊が遭遇していないのは最後のホブゴブリンのみ。

 要救助者の情報を信じるならば(別に疑うつもりはない)、相当な怪力を持ったモンスターであるとのことだが……

 地下で戦い続ける少女たちから提供されたステータス情報を精査した結果、大迫ならば単独でホブゴブリンを屠ることができるはずだと判断されている。

 大迫以外の隊員たちにしても隊列を組んで数的優位を確保していれば問題ないと、事前のブリーフィングでは結論が出ている。

 前回の探索で一行の前に現れたインプについては、今回は多めに銃を持ち込むことで遠距離戦を仕掛けることに決定している。

 事前に提起された問題はクリアだ。だから恐れることはない……と思うのだが……一行の顔から不穏な影が消えない。

 いずれも日本各地から掻き集められたエリート中のエリートである。そんな彼らの『勘』が警告を発し続けているのだ。


 視線がリーダーに集中する。大迫は首を縦に振った。撤退はしない。一行は地下15階を慎重に進む。

『京都の街みたいだ』と評したのは滋賀県の今津駐屯地から参加した隊員。

 京都の街が碁盤の目のように形作られているのは、義務教育を終えている者にとっては常識。

 幾つもの分かれ道があり、それぞれがマス目のようにつながっている。複数の分岐でチームごとに分散と合流を繰り返し、『たしかにその通りだな』と全員が頷いた。

 不気味なまでの静謐、強烈な違和感に苛まれつつの探索が続く。総員が集結した救出部隊が進む通路は――奥の広間に繋がっていた。

 そこに待ち構えていたのは――


「モンスターハウス?」


 そう呟いたのは誰だっただろう?

 大迫の知らない言葉だった。傍で内藤が『それな』と突っ込んでいたから、ゲーム用語なのかもしれない。

 高校の体育館ほどの面積と思しき広間にはモンスターが……大勢のモンスターが待ち構えていた。ひしめき合っていた。

 特に目立つのは中央に鎮座している3匹。

 背丈は2メートル以上。筋肉と脂肪の鎧を何重にも着込んだ体躯。豚のような凶悪な面に黒い皮膚。

 いずれもその手には肉厚の刃物が握りしめられている。理沙の情報に、その外見に酷似する個体があった。オークだ。

 3匹の中でもひと際大きい個体はジャラジャラと飾り付けられた装備を身につけており、おそらくあれがモンスター側のリーダーであることが窺える。

 ほかにも理沙の情報にあったデカいゴブリン――ホブゴブリンが多数。

 サラッと見ただけでも宙に浮かんだインプが10匹以上。ゴブリンや犬に至っては数えることすら侭ならない。

 誰もがその威容に恐れ慄き、飲み込まれようとしたその時――


「総員、構え!」


 救出部隊のリーダーである大迫は、腹の奥から力強い声を迸らせた。

 戦闘開始の号令に一同は正気を取り戻す。ギリギリのところで恐慌に陥ることなく踏みとどまった。

 こうして人類VSオーク軍団、地下迷宮に集う二大戦力は激突。開戦の火蓋が切って落とされた。



 ★



 戦端が開かれてから、状況は悪化の一途をたどっている。

 救出部隊にとって幸いであったのは、モンスター側にあって明らかに異質な存在であるオークが動かなかったこと。

 群れのリーダーである豚面は自ら率先して敵手に襲いかかるのではなく、部下を戦わせることを選んだ。

 オークはホブゴブリンに指示を飛ばし、ホブゴブリンはゴブリンやインプに命令する。

 その結果、目下のところ自衛隊員が戦っているのは、これまでと同じゴブリンや犬がメイン。インプはホブゴブリンの命令には従わない模様。

 ……モンスター側の命令系統は一枚岩ではないようだ。

 ゴブリンたちを相手にするだけならば自衛隊員なら十分に可能……と言いたいところではあったが、何しろ数が多すぎる。

 圧倒的少数である人間たちは部屋の入り口付近で隊列を組み、蟻の子一匹通さない構えで正面のモンスターに当たる。

 乱戦に巻き込まれれば数が物を言う。救出部隊としてはその展開だけは避けたかった。

 雑魚の後ろに控えている巨体からのプレッシャーが半端なく、誰もが無心で眼前のモンスターと戦い続けていた。


 不意に、オークがホブゴブリンの一匹を蹴りつけた。大迫からは豚頭がしびれを切らしたように見えた。

 それが合図であったのだろう。これまで後方に控えていたホブゴブリンが一匹、ゴブリンたちを押し退けて前衛に現れた。

 なお、インプたちは相変わらずフワフワ宙に浮いているだけで何もしていない。

 

 ホブゴブリンが握りしめていた大きな棍棒が唸りを上げ、人間側の最前列で盾を構えるタンク役の自衛隊員にアタック。

 その凄まじい衝撃に、盾隊員は後方に吹き飛ばされて昏倒。

 あまりの光景に人間側の戦意に大きな動揺が走ったのを、大迫は見逃さなかった。


――こいつはマズいな。


 数に劣るこの状況、士気を挫かれてはならない。大迫は哄笑を浮かべたホブゴブリンの前に自ら立ちはだかった。

 人間側のリーダーである大迫は、ホブゴブリンに負けず劣らずの巨体と厳つい顔立ちをしている。夜中にふいに遭遇するとモンスターと見間違われかねないと言ったのは誰だったか。

 迷彩色の戦闘服がはち切れんばかりの筋肉を載せた腕。しかし手には何も持ってない。大迫は素手であった。

 同じくらいの体格で睨み合う人間とホブゴブリン。敵手たる人間が武器を所持していないと見て取ったホブゴブリンはニヤリと笑い――次の瞬間、上下反転。禿げ上がった頭から地面に叩きつけられた。


「ふぅ」


 大迫は自衛隊に入隊する前は柔道で腕を鳴らした格闘者だった。入隊後も腕を磨き続けたその戦闘能力は相当なものとなっており、初めてステータスを表示させたときには既に『スキル:技能・体術』が表示されていたほど。

 科学文明を嘲笑うかのごとき仕様のダンジョンに挑む救出部隊最強の男の武器が、人類史上もっとも原始的な暴力であることに、人間側のメンバーたちは皮肉めいたナニカを感じずにはいられない。


 硬い石畳に投げ落とされたホブゴブリンは――死亡してはいなかった。

 痛む頭を押さえつつ、顔に怒りを漲らせて大迫二尉に襲いかかる。

 手荒に過ぎる開幕となった一騎打ちだが……大迫は豪快な見た目とは裏腹に、冷静にホブゴブリンの猛攻を捌いている。

 誰もが固唾を飲んで見守る中、大迫とホブゴブリンの間で一進一退の攻防が続いた。

 均衡は、唐突に崩れた。


「二尉、危ない!」


「チッ」


 メンバーの叫び声とほぼ同時に大迫はバックステップ。

 先ほどまで巨体があった空間を炎の球が通り過ぎ、そして爆発。

 今まで戦闘に参加していなかったインプが、耳障りな哄笑とともに魔法の火の玉を放ったのだ。

 放たれた火の玉はひとつだけだったけれど、空に浮かんでいた10匹以上のインプがすでに炎を構えている。

 前に出てきたホブゴブリンたちが部隊を取り囲むように間合いを詰めている。ゴブリンと犬は巨体の隙間を埋めている。

 さらに――


「うわっ!?」


 最後尾に構えていた隊員が悲鳴を上げた。

 すわ何事かと振り向いたほかの隊員が絶句。

 通路の奥から新たに複数のホブゴブリンが現れたのだ。

 大迫の奮戦に魅入られていた一行は、いつの間にか前後から挟み撃ちにあっている。


――なッ!?


 これは完全に想定外だった。

 地下15階に降りてから広場に到達するまでの領域は、すでにチェック済みのはずだった。

 背後からモンスターが襲いかかってくるなんて……


「……そういうことか」


 ホブゴブリン相手に優勢に戦ってきた大迫は、ここにきて自身のミスを悟らされた。

 巨漢の視線の先に鎮座するオーク、着飾った豚面の歪んだ笑みがすべてを物語っている。

 なぜ今の今までモンスターが自分たちの戦いに割って入ろうとしなかったのか、その理由が明らかになったのだ。

 時代がかった、仰々しい――あるいはわざとらしいまでの『決闘』は、その実ただの囮にすぎなかった。

 モンスターは、人間たちの注意を正面の派手な戦いに引き付けておき、その裏で碁盤状の地形を利用して部下を背後に回らせた。

 よくよく見てみれば前面のホブゴブリンの数が減っている。何匹か抜いた証拠だ。ゴブリンたちが穴を埋めているせいで気が付くのが遅れた。

 人間がモンスター相手に作戦を練ることはあっても、モンスターが人間に策略を持って当たるとは想像できていなかった。

『敵はこれまでの常識が通じる相手ではない』と何度も繰り返してきた大迫も例外ではない。救出部隊にとって痛恨のミスであった。


「これはひょっとしなくてもマズい?」


「オレたち、こんなところで死ぬのか?」


「誰か、誰かいないのか!?」


「た、助けてくれ!」


 動揺した隊員たちは、前後から広間に追い込まれながら絶望に呻く。

 致命的なまでに状況が悪化してしまったことを認めざるを得ない。

 いるはずのない助けを期待するほどに錯乱してしまうのも無理はない。

 そのすべてが無意味だと嘲笑うオークの禍々しい顔を睨み付け、砕けんばかりに奥歯を噛みしめた大迫は、


「……お前たち、ここは自分が」


 食い止める。だから、直ちに撤退を……

 死を覚悟したその言葉は、最後まで発せられることはなかった。


「いるわッ! ここに、アタシがッ!」


 可憐な声は広間の奥から響いた。空を切り、石畳をピシャリと撃つ音が続く。

 続いて、闇が支配する地下迷宮に相応しくない……淫靡な雰囲気が漂う桃色のスポットライトが照射される。

 地下迷宮に突如出現した妖艶な舞台。石の壁を背にひとりの少女が立っていた。

 ほの白く浮かび上がる艶めいた肌。闇にたなびく黄金のツインテール。怪しい光をたたえる蒼い瞳。

 和洋折衷――あるいは両者の良いとこ取りをしたような美少女。

 掲げられた細い左腕、その人差し指が天を衝く。


「あの小柄なシルエットは……」


 誰何(すいか)する声に、調子っぱずれの口笛が応えた。


主役は遅れてやってくる!


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