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第37話 決戦、オーク軍団! その1


 異様な光景だった。

 年端もいかない少女が肌を露わにして、いかがわしいスポットライトを浴びている。しかも手には黒革の鞭。背徳感がヤバい。

 これが例えば違法なストリップ劇場だったら、眉を顰めつつも『まあそう言うこともあるか』と警察に通報する状況だが、生憎ここはダンジョンの地下15階。

 観客の大半は人間ではなく凶悪なモンスターである。多分全員オス。


 人間たち――地上から訪れた自衛隊選りすぐりの救助部隊――が状況を把握できずに呆然としている反面、モンスターたちの反応は劇的なものだった。


「ぶるっ、ぶるるるるっ……ブルルルルゥアおおオオオオ――――――――ッ!!」


 華美なオークが全身を激しく震わせて、咆えた。辛抱たまらないと言った風情でヘヴィな身体を揺らして我先にと動いた。

 ボスの傍で悠然と構えていたオークたちも、空に浮かんでいたインプたちも、自衛隊を取り囲んでいたホブゴブリンたちも、そしてそこらに蠢くゴブリンや犬たちも。

 全員が全員、桃色のライトの中心で艶めかしく肌をくねらせる少女――要救助者である『更級(さらしな) 理沙(りさ)』めがけて突撃を開始。


「あでぃおす」


 ウィンクひとつ、投げキッス。

 理沙は後退し、通路に姿を消した。

 モンスターたちが慌てて後を追う。これまでにない振動が地下15階を震わせる。


「いったい何がどうなってんだ?」


 ポカンと開いたままの口から零れた言葉に答える者はいない。

 救助部隊の面々は、目まぐるしく激変する展開についていけていない。


「あ、あれを……」


 ホブゴブリンに殴られて意識を失っていた盾隊員が、復帰するなり広場の奥を指さした。

 金髪の少女が消えた通路に殺到するモンスター、その流れに逆らってすいすいとこちらに近寄ってくる人影がひとつ。

 ……動画をチェックしていたお陰で接近してくる人物に見覚えがあった。

 もうひとりの要救助者である『鷹森(たかもり) 瑞希(みずき)』だ。『更級 理沙』と同じく鷹森市在住の15歳。鷹森神社の娘。

 黒いポニーテールを靡かせた少女は涼やかな声で問う。


「この中に自衛隊の内藤(ないとう)二曹はいらっしゃいますか?」


「えっと内藤は私だけど、これどういう状況?」


 慌てて前に出た内藤は、誰もが尋ねたかったことを口にした。


「すみません、私も実はよくわかってなくって」


「え」


「理沙が『マラソンするから内藤二曹にスレを見てもらって指示を仰いで』って」


「まらそん?」


――42.195km走るアレか?


 大迫(おおさこ)は自問自答で否を出した。

 陽光届かぬ地下深く、モンスターが蠢く闇の世界にはあまりに似つかわしくない。

 要救助者がその単語に込めた意味を自分は理解できないという状況をもどかしく思う。

 しかし、そんなことは些細な問題だ。自分にできないことは、できる者に任せればよい。

 大迫はバシンと大きな手のひらでエキゾチック美人自衛官の肩を叩いた。ふてぶてしさが影を潜め、珍しく混乱状態に陥っている部下に活を入れる。

 頭を上げた内藤の黒い瞳――底の見えない闇――に自分の顔が映っていることを確認しつつ、


「内藤」


「大迫二尉……えっと、その……」


 常日頃マイペースを信条とする内藤が自分と同じように動揺している姿を見せられて、なぜかホッとする。

『ああ、コイツも人間らしいところがあるじゃないか』と。

 もちろん、そんなことを口に出したりはしない。言うべきことは他にある。


「いいからそのスレとやらを見てみろ」


「あ、はい」


 救助部隊のリーダーである大迫の太い声に、内藤は反射的に頷いた。

 脳内のしっちゃかめっちゃかは脇に置いて、今は隊長の指示に従うべし。

 なんとか正気に戻った内藤二曹は、震える指先でスレを辿った。


――――


【ロリ】更級理沙スレその168【ツインテール】


1、プチデビル応援団

 ここは地球アップグレード当日にダンジョンに放り込まれたプチデビル『更級 理沙』タンとその仲間たちを応援するスレです。

 現在鷹森ダンジョン地下20階からの脱出中。現在自衛隊による救出作戦進行中。

 800を踏んだ人がスレ立てしてください。



2、プチデビル応援団

 主な登場人物まとめ

 『更級 理沙』

  露出度アゲアゲの金髪ツインテールロリ美少女。

  スレに降臨したプチデビル(動画等により本人確認済み)

  鷹森市在住で父親は日本人、母親はロシア人のハーフ。現在15歳。

  この春に地元の鷹森高校に入学……予定だったところをダンジョンに放り込まれた。

 『ギフト:コスプレ』持ち。コスチューム変更で前衛から後衛まで立ち回り可能なオールラウンダー?


 『鷹森 瑞希』

  ナイスバディの黒髪美少女。

  地元の鷹森神社の娘。現在15歳。

 『更級 理沙』と同じく鷹森高校に入学(以下略

 『ギフト:生存本能』持ち。ギフトの性能は不明。Sレアの魔剣ストームバイトを操る剣士。


 『ギュンター』

 『更級 理沙』が『魅了スキル』で誘惑したゴブリン。

  ご主人さまとは意思の疎通が可能で、今はプチデビルの下僕として戦っている。

  武器は大きな棍棒。アタッカー?


 『内藤二曹』

  陸上自衛隊鷹森駐屯所のダンジョン攻略部隊に所属。

  黒目黒髪、日に焼けた肌が魅力的なエキゾチックオバ……お姉さん。年齢2〇歳。

 『更級 理沙』タンの救援書き込みに最初に反応した自衛官。

  最近書き込みがなくて心配。殉職はしていないと思われるが……

  ギフトやレベル、能力は不明。


  ・

  ・

  ・


442、プチデビル応援団

  自衛隊の書き込み内のヤバない?



443、プチデビル応援団

  返事がないのはよい便りってな



444、プチデビル応援団

  それフラグじゃね?



445、リサ

  ごめん、緊急事態



446、リサ

  しばらくチャット状態で占領する



447、リサ

  謝っとく、ごめん



448、プチデビル応援団

  プチデビルキターって緊急事態?

  ヤバい?



449、プチデビル応援団

  いいお!



450、プチデビル応援団

  使え使え!

  スレ住人はしばらく書き込みを控えること



451、プチデビル応援団

  異議なし!



452、リサ

  ありがと



453、リサ

  マラソンする



454、リサ

  瑞希・オーク小

  ぎゅんたー・犬

  自衛隊・ほぶ・ごぶりんで



455、リサ

  インプからMP取るから攻撃しないで

  アタシのルートとインプの斜線に入らないよう



456、リサ

  デカいオークはラスト



――――


「は?」


 スレッドを目にした自衛隊員のほとんどは意味が理解できず首をひねった。

 念のためにスレッドに目を通した大迫も同様であった。

 瑞希も詳細を聞かされていないとのことで、理沙に指名された内藤の言葉を待っている。

 そして、当の内藤はと言うと……何やら考え込むような風情で自分のウインドウを凝視している。

 右手と人差し指を顎に当てたまましばらくブツブツと呟き、そして顔を上げて瑞希に質問を投げかける。


「えっと、確認させてほしいんだけど……」


「はい」


「さっきのエロいスポットライトはヘイト管理のスキル?」


「ヘイト?」


 黒髪の少女のリアクションは『何を言われているかよくわからない』という反応だった。

 理沙と行動を共にしていたし、彼女にも内藤がよく使うようなワードに関する知識があるものだと思っていたが……どうやらそうではなかったようだ。

 説明を丸投げされたと気付いたらしい内藤は、大きく深呼吸しつつ質問の内容を修正した。


「ごめん。さっきのスキルは理沙さんに敵の意識を集中させる効果がある?」


「はい。あの光を浴びた理沙を見ると、モンスターはみんな理沙を追いかけます」


「そう……」


 理沙の書き込みと瑞希からもたらされた情報を照らし合わせる内藤。その瞳に理解の光が差し込んでくる。

 彼女を見つめる瑞希の視線に『自分を差し置いて……』的な若干無視しがたい澱みを感じたが、こればっかりは同好の士である内藤に一日の長があるのだろう。

 ほぼ部外者である大迫は、あまりややこしい部分には触れないようにすることにした。年頃の少女というのは色々と厄介だ。

 独身アラフォー男とはもっとも縁の遠い人種なのだ。妙な居心地の悪さを覚えつつも『触らぬ神に祟りなし』と自身を納得させた。


「内藤、状況は理解できたか」


「はい、わかります。理沙さんの作戦を説明します!」


「よし、みんな聞け。一言一句聞き漏らすな!」


 大迫をはじめとする19人の猛者と瑞希の視線を一身に浴びる内藤。

 グイっと仰け反らされながらも、若き女性自衛官は作戦の概要を説明する。


「まず理沙さんは敵モンスターに自分を追いかけさせています。これはさっきの光の効果だそうです」


「おいおい、何考えてるんだあの子は?」


「話を聞け。……それで?」


 騒然としかけた場を大迫が収める。

 ……実は内心ではまったくの同感だった。


「おそらく……しばらくすると理沙さんはまたここに戻ってきます」


 多分あっちから。

 内藤は自分たちがやってきた通路を指さした。


「そっか、碁盤の目になってるから」


 盾持ちの隊員は状況を理解できたらしい。


「私たちはここで待機して、理沙さんを追いかけてくる敵を引き抜いて始末していきます」


「引き抜くって……他の敵は?」


 何を言っているのか理解できない。

 一同を代表して尋ねる大迫の顔には困惑が浮かんでいる。

『ですよね』と内藤は苦笑した。


「他の敵は、さっきのスキルの効果で理沙さんを追いかけ続けます。その間にこちらは数的優位を作って少しずつ敵の数を減らしていきます」


 内藤曰く、理沙が提案した『マラソン戦術』はRPG特にMMORPGの大規模な集団戦闘レイドバトルでしばしば用いられる作戦のひとつであるとのこと。

 マラソン役と呼ばれる人物がヘイト管理やデバフを駆使しつつ敵を引きずり回し、ターゲットされていないメンバーが敵を分断・各個撃破してゆく……というのが概要。

 ゲームの中では有効な戦術ではあるそうだが……本来ならば現実に適用できるものではないと、内藤は付け加えた。

 モンスターの立場で状況を俯瞰すれば『ただ逃げ続けるだけの囮』と『自分たちを攻撃してくる敵』のどちらを優先して狙うかなんて考えるまでもない。

 だが、世界は変わった。『ギフト』や『スキル』が大きな力を持つ今なら……アップグレードされた新しい現実ならば――この非常識な作戦が通用する可能性は低くはない。

 理沙と内藤の見立てでは、十分な勝機があるとのこと。


「そんな作戦……可能なのか?」


 実際に頭の中で想像して……疑問を覚えずにはいられない。

 モンスターの大軍がひたすらに獲物の少女を追いかけ続け、自分たちがその行列からモンスターを引っ張り抜いて処分していく。

 あの化け物たちは仲間が殺されていくことに気付かず、延々と黄金のツインテールを追いかけ続ける。

 ……先ほど自分たちに策略を仕掛けて追い詰めてきた連中が、そんな間抜けな作戦に引っかかるのだろうか?

 疑問はもっともだが、現にモンスターたちは桃色の光を浴びた理沙を追って広間を去ってしまった。自分たち救出部隊を置いて。

 ここまでの流れを考慮するならば……絶対にありえないとまでは言い切れない。ゆえに迷い、問いかける。


「それで受け持ちですけど、理沙さんの指示だと瑞希さんがオーク、ギュンターって下僕のゴブリンよね……確か朱いヘルメットかぶってる子が犬担当。これは追いかけてくる犬の足が速いから先に潰そうってことかな」


「赤いメットのゴブリンなんていないんだが」


「理沙さんについて行ってると思われます。ゴブリンと意思疎通できる彼女に任せましょう。それで私たちがホブゴブリンを先に倒してからゴブリンと戦う」


「……インプはどうするんだ?」


 食らえばひとたまりもない悪意の塊を放つモンスターについて言及されていないことが気にかかる。


「えっと、理沙さんの防具にMPを吸収する効果があったはず。鞭を使ってインプからMPを吸って、さっきのスキルを使ってタゲを引き取り続けるから手を出すなってことかと」


「大迫隊長並みのホブゴブリンを俺たちが?」


 大迫はインプの存在を危惧し、他の隊員は自分がホブゴブリンと戦わされる目算であると聞かされて戦々恐々としている。

 もともと大迫は1対1で、他の隊員たちも戦列を組めば対応可能とブリーフィングでは分析されていたのだが。

 いざ本物と相対してみると……机上と実戦は違うと言わざるを得ない。すっかり戦意が挫かれてしまっている。

 囮を引き受けつつ作戦を提案した理沙も、説明する内藤も、彼らの心が弱っている点には頓着していなかった。


「あと、理沙さんの逃走ルートを塞がないように。インプの魔法が飛んでくるところもダメ」


 大体こんなところです。

 内藤は理沙の書き込みをほぼ正確に解釈した。


「えらく都合のいい作戦に思えるが……」


 自衛隊員は互いに顔を見合わせている。

 作戦の良し悪しを俄かに判断できないのだ。

 発案者は15歳の少女、翻訳したのはメンバー内でも最年少の女性。

 しかも肝心の作戦は、ゲームを元にした非現実的な内容ときた。

 歴戦の隊員にしてみれば不安で仕方がない。


「問題点がふたつある」


 今さら作戦の変更はできないのだから、あとは完遂を目指すほかない。

 だが、それでも……救出部隊のリーダーとして見過ごせない要素が残されている。


「大迫二尉?」


「ひとつ。このお嬢さんをオークとやらにぶつけるのは危ない」


「そんなことありません。私、戦えます」


 大迫は瑞希の訴えを無視した。

 歴戦の自衛官として培ってきた常識と矜持が、要救助者の片割れをあの化け物と相対させることに忌避感を催させる。


「ふたつ。あのホブゴブリンとやらをウチの隊員で引き受けるのは厳しい」


 腰が引けてしまった部下を見て……後頭部をガリガリと掻きむしりながら付け加えた。

 内藤もまた彼らに視線を向けて、頷いた。


「……確かに。情けないけど作戦変更を提案します」


――――


455、内藤二曹

  瑞希さんをオークにぶつけるのは不安

  大迫二尉以外の自衛隊がホブゴブリンと戦うのは厳しい



456、リサ

  瑞希は行けると思うけど

  瑞希・ホブ

  自衛隊・ごぶで



――――


「瑞希さんがホブゴブリン、自衛隊がゴブリン担当です」


「……ホブゴブリンとは俺も戦う」


 大迫が即答した。

 譲れない一線だった。


「隊長!?」


「あちらの作戦で足を引っ張ってるのは俺たちだ。せめて少しでも早くホブゴブリンを始末したい。あと……」


 オークの戦力が如何ほどかは不明だが、自分が前線に立って部隊の支援を得ることができれば戦えるのではないか。

 雑魚を始末して数的不利を解消し、勝利体験を積み重ねることによって部下の士気を回復することができれば……

 大迫はそう続けようとしたのだが――


「隊長。要救助者がやってきます!」


 大迫と内藤の問答は、通路を見張っていた隊員の声に掻き消された。

 作戦タイムはここまでだ。不安はあるが戦うしかない。状況はすでに始まっているのだから。


「よし、全員作戦は頭に入ってるな! 内藤、お前は全体の指揮を執れ。書き込みも見逃すな!」


「え、私が指揮?」


 内藤は思わず聞き返してきた。

 隊の中でも最年少の自分にそんな役割が回ってくるとは思ってもみなかったようだ。

 

「仕方ないだろう。あっちのお嬢さんとリアルタイムで遣り取りして、適宜作戦を修正できそうなのがお前だけなんだから」


「あ、はい……私が指揮かぁ……えへへ」


 大迫の大きな手が、ヘルメット越しに内藤の頭をバンバンと叩く。

 この独特の雰囲気を纏っている部下には、あまり神妙な表情は似合わない。

 本人の前では絶対に口にはしない。パワハラやらセクハラやら面倒が付いて回るご時世だから。


「いつものお前に戻ってきたな。総員、ここで迎え撃つぞ」


「「「了解」」」


 大迫の指示に敬礼で応える隊員たち。

 その声に復調の兆しを感じ取ったリーダーは、要救助者のひとりである黒髪の少女に頭を下げた。


「本来ならば君たちを助けるのが自分たちの役目だが……すまない、力を貸してほしい」


「大丈夫です。私がちゃんと戦えるところをお見せします!」


「……よろしく頼む」


 深く、太く、そして重々しいその声には、助力に対する感謝と……幾ばくかの苦渋が入り混じっていた。


 

 ★


 

 闇深い通路の奥から理沙が広場に入ってくる。走ってきたせいだろうか、白い肌に薄く朱が入って見える。

 その足元には血まみれの大棍棒を担いだ赤ヘルメットのゴブリン――ギュンターの姿があった。

 後を追う様に広間に踏み込んできたモンスターたちの先頭はホブゴブリン。後ろにゴブリンが続き、行列の最後尾がオーク。

 犬の姿がない。すでにギュンターに始末されたようだ。


「いいか、先頭のホブゴブリンにコイツをぶつけて引き付ける。あとはふたりで……」


 床に落ちていた石ころを投げようとした大迫より先に、瑞希はどこからともなく取り出した小刀をホブゴブリンに投擲。

 肌を傷つけられたホブゴブリンの瞳に正気の輝きが戻り、大柄なモンスターは自分を狙ってきた瑞希に向かっていく。


「おい!」


――(はや)ったか。どれだけ強がりを口にしても、やはりまだ15歳の少女だ……


 大迫は慌てて石投げを止めて、瑞希を庇うために前に立ちはだかろうとする。

 しかし――その脇を縫うようにホブゴブリンに接近した瑞希は、抜き身の魔剣を一閃。

 ただの一撃で首を刎ねられた巨体の化け物は血しぶきをまき散らし、消失。


「な!?」


 目を丸くした大迫の前で、瑞希が石を拾ってホブゴブリンに投擲。

 石をぶつけられた新手が瑞希に向かい――すれ違いざまに首筋から血を噴き出して消失。

 自分とほぼ互角と見て取ったモンスターが二匹、あっという間にその命を散らせる様を見せられて、大迫は動揺を隠せなかった。

 息をつく間もない完璧な速攻だった。あまりに鋭すぎる剣閃に背筋が震え、思わず首筋を撫でさする。


「私、戦えてますよね?」


「あ、ああ」


 まるで気負いのない少女の問いに、救出部隊のリーダーである歴戦の大男は無言で頷いた。

 地下20階を拠点に2か月以上もの間、ひたすらに戦い抜いてきた剣士の実力に戦慄する。

 どれだけ動画を見せられても、文章で説明されても、どこか納得のいかないところがあった。

 しかし……これはもう現実を受け入れるしかない。それでも愚痴は零れる。


「どうなってんだ、これは……まあいい。お前ら、要救助者に負けるな……とは言わんが、自衛隊(オトナ)面子(メンツ)って奴がある。ぬかるな!」


「りょ、了解!」


 隊員に発破をかけた大迫は自身も石を投擲。命中。

 向かってくるホブゴブリンの手首をつかみ、背負い投げの要領で石畳に叩きつけた。

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