25話 引きこもり令嬢 その二
「うわぁ……」
「な、なによ!」
「いや、自業自得過ぎて……」
靴に画びょうや食べ物に変なものを入れるなんてのは当たり前。わざと服を汚したり、時には奥方に隠れて罵声も浴びせていたらしい。それも、泣いて中年男性が逃げ出すようなレベルのことを平気で言っていたようだ。
最初はしつこく絡んでくるのがウザいとか、新しい家族を受け入れることができないだとか、そういう理由で始めたらしいが、次第に向こうからも仕返しが来るようになったらしい。
「反省はしてんのか?」
「……してる」
「仲直りしたい?」
「……うん」
ニーナは観念したようにうつむきながらそう答えた。
本人もさすがにやりすぎたと自覚していたのだろう。というか、カレンもよくこんな悪質な嫌がらせに耐えていたものだ。
むしろ、この程度の仕返しで収まっているのだから、カレンの心は相当広いように思える。
きっとニーナは後悔しているのだ。優しいカレンを怒らせてしまったことを。自分のしてきた行いを。
しかし、一言謝れば済むことかもしれないが、それをプライドが許さない。
認めてしまえば自分の本当の母親が消えてしまうような気がして、心のどこかで奥方やカレンのことが認められないのだ。
だからこそ、カレンと顔を合わせるのがつらくなり、気をやみ、こうして部屋に引きこもっているのだ。
全く持って不器用な人間である。
「なら手伝ってやる」
「手伝うって……何か策はあるの?」
「こういうのは下手にあれこれするよりもシンプルなのが一番いいんだよ」
「例えば?」
「一番いいのは本人に直接謝ることだな」
「無理ね」
「でしょうねぇ」
即答か。
「ほかに何かないの?」
「うーん、心のこもったプレゼント、とか?」
「まあ、それくらいなら……でも、こういうときって何を贈ったらいいのかしら? 宝石とか?」
「宝石……いや、あんま金がかかりすぎてるのは向こうも警戒すると思う。こういうのって、自分がもらってうれしいものを贈ればいいんじゃないかな。まあ、あんま偏ったのはさすがにダメだけど」
「もらってうれしいもの……すぐには思いつかないわね。あなたは何かないの?」
「僕だったら、うーん、そうだな……」
まず初めにカネの二文字が浮かび上がってしまう。次点で新しい武器。いや、全くもって参考にならないのはわかってるよ?
「お菓子とか」
すこし考えて出てきたまともな物はこれくらいなものだった。
「お菓子ぃ? そんなの毎日食べられるじゃない」
「このブルジョアが! 平民はそうでもないんだよ!」
甘味は普段から食べられるほど安くないんだよ!
「うーん、でも、そうねぇ……確かにあの子は甘いものが好きだって言ってた気がする」
鼻頭を触りながらニーナはカレンの言葉を思い出して考えを改めた。
「よし、じゃあ、ベストール、厨房に行って適当に作り置きしてるお菓子を……」
「はい、ストップ!」
この箱入り娘はナチュラルにバカなことを言い出す。
「な、なによ」
「そこに心はこもってません。せめて自分で選ぶくらいはしましょう」
「わ、わかったわよ」
少し反抗的にそう答えるとニーナは重い腰をベットから降ろす。そしてそのまま扉の前まで行くと、なぜか立ち止まってしまった。
「どうしたんだ?」
「……ついてきて」
「はい?」
「一人で外出るの、怖い」
「えぇ……」
ほんの数週間で立派な引きこもりとなってしまったお嬢様がそこにいた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ブックマークや、評価していただけると作者のモチベーションにつながります!
よろしくおねがいいたします!




