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106話 手紙




 その日は本来であれば休日であり、僕は何も考えずに日が高くなるまでベッドにうずくまっているはずだった。


 しかし、そうのんきなことを考えてもいられない知らせが早朝、僕のもとに届いていた。


 一通の手紙。差出人はグラハム・エインベルズ。旦那様である。


 自分の主からの直筆の手紙を無碍にもできない。それに、学園に来てからというものグラハム様が僕に手紙を送ったことなど一度もなかったため、どうもきな臭い気がした。


 僕は静かに椅子に座りこみ、手紙の封を開ける。


「えー、なになに……」


 手紙の内容は社交辞令的な近況報告が最初にしたためられ、そののちに本題が記されていた。


 内容は銃の販売権についてだった。国内の貴族や近隣諸国から新兵器の購入相談が後を絶たないらしく、特に、帝国側からの圧がひどいのだという。おまけに帝国では銃の購入独占権を獲得した、なんてありもしない噂までたち始めているらしい。


 銃に関して、現在エインベルズは徹底的に外部への流出を避けている状況にある。


 理由は単純に、エインベルズの武力を帝国、ひいては周辺諸国への抑止力とするためである。


 最初、僕は銃を使って個人的に財産を作ろうと考えていた。実際、あの夜会をきっかけにそれなりにおいしい話もいくつか持ちかけられた。


 しかし、そのたびにニーナにくぎを刺され、結局のところ販売は行わないという方向に落ち着いた。加えて、銃にはエインベルズの家紋と製造番号を持ち手部分に入れこみ、生産に携わった職人たちも抱え込み、徹底的に管理することで外部への流出も抑えている。


「前々からよそからの圧力はあっただろうけど……いまさらこんな手紙をよこしてきたってことは相当だな……」


 帝国がこのタイミングで圧をかけてくるということはどういうことを意味するのか。手紙には直接は書かれていなかった。しかし、そんなものはごくわずかな選択肢に限られる。


 考えられる可能性としてもっとも大きいのは、戦争を吹っ掛ける大義名分が欲しいといったところだろうか。


 いくら休戦協定を結んでいるとはいえ、常にこちら側が脅威を隠し持っていては帝国も安心はできまい。場合によっては帝国への敵対と解釈できる。いや、実際にそうなのだけれども。


 これを理由に自国防衛のためーとか適当な理由で攻めてこないとは言えないのだ。


 それに、確かに前回の戦争でこちら側が勝利したのは事実であるが、広大な土地と莫大な数の人を有する帝国にとって、前回の戦争がそれほど致命的な痛手であったかと問われればそれは甚だ疑問である。


 連中はその気になれば、いつでもこちらに戦争を仕掛けられるだけの国力を有しているのだ。


 それをしてこない理由は一重に、不確定要素であるエインベルズの存在が邪魔だからである。


 正体不明の新兵器にたった一度の戦いで撤退を余儀なくされたのだ。警戒するのは当然である。


 しかし、逆を言えばその点以外で王国が帝国に勝る部分はないに等しい。そして、銃による反撃も真実は綱渡りの捨て身の作戦であり、二度とあんなことはできないだろう。あの戦いでエインベルズは傷つきすぎた。


 いい加減、帝国もそれに気づいたのだろう。もしくは、不確定要素を封殺できるほどの軍隊の準備が整ったと考えるべきか。


 次点で考えられるのは王国以外の周辺諸国への警告だろうか。銃の購入独占権なんてものが帝国に渡ったとあればもはや大陸に帝国と太刀打ちできる国はどこにもないだろう。


というか、もともとこの大陸でまともに帝国とたたかえそうな国なんてありはしないのだ。この王国がギリギリ耐えしのぐことができる程度であり、そのほかの国家は言い方は悪いが弱小国家である。


 王国が壁のように帝国を抑えているが、その王国が帝国と手を結んだとあれば、たたかわずして帝国に下るという選択肢しか残されていない。


 しかも、この場合、たちが悪いことに、王国と帝国の交渉ではなく、エインベルズと帝国の交渉であるというところが厄介である。


 よそからすれば王国がどれだけ釈明しようともエインベルズが単体で裏切らないとは限らない。逆に、エインベルズが王国に釈明しようとも銃の独占をしており周辺貴族から少なからず反感を買っているエインベルズの言い分を素直に信じるとも思えない。


 そう考えると、帝国の狙いはこの両方なのかもしれない。


「……はぁ」


 手紙を机に置き、僕は一人、大きなため息をついた。つかずにはいられなかった。


(なんで僕がこんなことのために悩まにゃならんのだ……)


 改めて考えてみると、自分は元平民であり、本来このようなことを考える立場ではないのだ。もっと気楽に商売人にでもなって、それなりに不自由のない暮らしができればそれでいいのだ。


 だいたい、この世界ってお気楽な乙女ゲームの世界なんじゃないのかよ。僕の近辺だけハードモード通り越してベリーハードモードになってんじゃないのか。


 望んでもないのに、その場の流れに流されて巻き込まれて気づけば、こんな望んでもいない立場に身を置いている。


 正直、僕の脳みその容量では限界である。明らかにキャパシティオーバーだ。ドロドロした国家間のやり取りなど、勝手にそこらの貴族がそこそこにやっていればいいではないか。


 明らかに自分では役者不足であると、僕はしみじみ思った。


 大体、こんな内容を僕に送ってきて旦那様は僕に何をしろというのか。正直、八方ふさがりではないか。僕に何かをどうこうできる問題ではない。


 せいぜい、戦争になったときに率先して命を捨てに行く、くらいなもので、自分に何かを期待されているのであれば、それはまったくのお門違いというものである。


 しかし、戦争が終わったあたりから困ったことに旦那様は僕が宇宙人か何かに見えているらしく、妙な期待を寄せている節がある。


 きっとこれは生半可に前世の知識を利用して目立ってしまった罰のようなものなのだろう。


 まったくもって忌々しい。しかし、知ってしまった以上は放置というわけにはいかないだろう。さて、どうしたものか……。


 その時扉からノックの音が聞こえてきた。


「こんな朝から誰だよ……」


 そんなことを口にしながら少し窓の外を覗くとそれなりに陽は高く昇っていた。この季節にあの位置となると、ほぼ昼時である。思ったよりも長い間考え事をしていたのだ。


 僕は面倒くさいと思いながらも手紙を引き出しにしまい込み、玄関を開ける。


「はいはい、どちらさ……」


 間の抜けた声で、半開きの眼で、至極面倒くさそうに、ふてぶてしくそんな風に口を開いて戸を開けたその先には……


「ずいぶんな態度だな。ベストール・ウォレン」


 ヘンリー・フランクリンが、帝国の皇子が、立っていた。


 お久しぶりです。ウイルスなどの影響でリアルが忙しくてなかなか、なろうに投稿する暇がありませんでした。

 正直に言うと生活リズムが狂ってしまって話の続きが思いつかなくて更新止めてました。申し訳ございません。

 一応ではありますが、完結までの内容はすでに考えております(まだ文章にはしていない……)

 もともと当初考えてた内容だとあまりにも拙くてお見せするのが恥ずかしくてこんなに時間がかかってしまいました。でもそのせいでエリザベートが若干空気化したような気もするので物語をうまく完結させられるかはまだ不安です……(初期ではエリザベートをもっと前面に押し出す予定だったんですけど、なんでこうなった……)

 一応、20話分くらいのストックは書きだめてるのでなんとか完結まで突っ走れるといいなぁ、なんて思ってます。(正直早く完結させたい)

 今期のアニメは異世界ものが多くていけませんね。ゴテゴテのファンタジーが書きたくなってしまって、正直、もうこの作品は完結させられるのか、モチベが怪しいです。

 しばらくしたら他の作品も並行して投稿しようと思ってますのでそちらも読んでいただけると幸いです。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


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よろしくおねがいいたします!

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