第3話『皇妃教育がハードすぎる!?「夜の務め」も勉強に入るって本気ですか陛下!?』
「リリー、おはよう」
「おはよう、カイゼル――って、え?」
目が覚めた瞬間、視界いっぱいにカイゼルの顔があった。
ベッドサイド、というか、私のベッドの中で。
「ちょ!?なんで寝てるの!?私の部屋なのに!!?」
「昨夜、寂しそうな寝言を言っていた」
「記憶にありません!!」
「お前が寂しいと言うなら、俺はいつでも一緒に寝る」
「むしろ陛下のほうが寂しがりなのでは!?」
◆ ◆ ◆
婚約皇妃となった私は、現在――
**「皇妃教育」**と呼ばれる、とんでもないハードカリキュラムに取り組んでいる。
帝国の歴史、魔法理論、外交儀礼、舞踏、演奏、剣術、魔獣学……
なぜ剣術?という疑問はさておき、全部マスターせよとのこと。
講師陣は優秀だけど、カイゼルが全部監修してるせいで難易度が高すぎる!
「もう、頭が爆発しそう……」
「リリーは優秀だ。問題ない」
「根性で押し切らないで! 私はまだ14歳!」
「14歳だからこそ、吸収が早い。最良の年齢だ」
「皇妃に必要なもの、全部ぶちこんでるじゃないですか!」
◆ ◆ ◆
そして今日、問題だったのは――
「さて、次は“夜の務め”について学ぶ時間だ」
「……夜の、なにを?」
「お前が俺の妻となる以上、必要な知識だ」
「まってそれ義務教育に入ってるのおかしいぃぃぃ!!」
「身体のこと。心のこと。……愛し方、愛され方。すべてを知ってほしい」
「先生やめて!?視線と声がえろすぎて教育どころじゃないから!!!」
「実地訓練に移るか?」
「おまわりさぁああん!!!」
「俺が法だ」
「無敵じゃん!!!」
◆ ◆ ◆
結局、“実地訓練”は延期になった。
(必死に逃げて、側近たちが床に倒れた)
でも、わかっている。
彼は私を、ただの皇妃として見ていない。
一人の女性として、愛し、尊重し、
それでいて独占したいと願っている。
そして私は――
彼のその感情を、もう嫌だなんて思えなくなっていた。
むしろ、少しずつ、胸の奥が熱くなる。
「……負けないからね、カイゼル。私だって、ちゃんとあなたを愛するって決めたんだから」
だから、次の授業が「キスの復習」だったとしても――
私は、覚悟して、挑むしかない。




