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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
2章 校内ギルド
40/40

40戦目 生徒会長

予定より一日遅れました。申し訳ありません……!

 声が聞こえたと同時に誰かが現れた。俺はそちらを振り向く。


 そこに立っていたのは、一人の女性だった。水色の長い髪を風に流し、軽装の鎧を身に纏っている。凛とした表情は気が強そうに見える。それを見たレグルス先輩が呟いた。



「生徒会長……」



 驚きでもう一度じっくり見る。そう言われれば威厳があるように見えなくもない。そう思っていると、彼女がブライアに向けて話し出した。



「全く……やってくれたね」

「あなたは……」

「私は生徒会長だよ」

「これはこれは……あたしに何かご用ですか?」



 少しだけ調子を取り戻したブライアが、会長に問いかける。会長は厳しい表情を崩そうとしなかった。



「わかってるんだろう? こんな騒ぎを起こして……大問題になるよ、これは」



 言われてみれば確かにそうだ。前にリンクスからも聞いたが、サーバー内で起こっている出来事はほとんどが監視されているはず。こんな揉め事を起こしたとなればただでは済まない。



「事情聴取の為に一緒に来てもらおうか」

「お断りします」



 間髪入れずにブライアは断りを入れた。その返答に俺達全員は少なからず驚く。



「これだけのことを起こしておいて、素直に帰れると?」

「何のことかわかりませんね。あたしはただ、ボスと戦ってただけですよ? それをこの人達が襲ってきただけです」

「そんな……! 観客を襲撃するって、言ってたじゃない!」



 リンクスが思わず叫ぶが、ブライアは涼しい顔だ。



「証拠は?」

「えっ?」

「あたしが観客を襲撃しようとした証拠はあるの?」

「それは……」



 確かに物的証拠は何もない。監視されていると言っても会話まで録音されている訳じゃないし、記録映像だけ見れば、俺達とブライアが戦ったようにしか見えないだろう。会長もそれがわかってるのか渋い顔だ。



「あたしとしてもいきなり攻撃されて、応戦しただけです。困ってたんですよ」



 いけしゃあしゃあとそんな事を言ってのける。流石、元作戦参謀。口がうまいったら無いな。



「さて、あたしも戦って少々疲れました。残念ですが今日のところは帰らせて頂きましょうか」

「逃げる気か……」

「あら、人聞きの悪いこと言わないでゴースト。あたしはただ家に帰るだけよ」



 さっきまで戦闘続行する気満々だったのに、分が悪くなったと見るや、あっさり撤退しようとしている。この切り替えの早さは見習うべきだな。



「という訳でよろしいでしょうか、会長さん?」

「………………わかった。帰ってもらって構わない」



 少し言い淀んだ後、会長さんは絞り出すような声でそう告げた。これ以上、引き留める材料が無いことを理解したのだろう。俺達も黙って見送るしかなかった。ここで無理やり攻撃を続けてもいいのだが、それだと逆に俺の立場が悪くなる恐れがある。



「じゃあ皆さん、さようなら。あと、ゴースト」

「なんだ?」

「久しぶりに楽しかったわ。また遊びましょうね」

「はっ、次は仕留めるから覚悟しとけ」



 ブライアは何も答えずに、一礼すると悠々と歩いて行った。非戦闘区域まで戻ってから、現実世界に戻るつもりなんだろう。俺達は全員無言のまま、去っていく後ろ姿を見送っていた。



「……さて」



 ブライアの姿が見えなくなったところで、会長さんがこちらに向き直った。



「一年生もいるみたいだから、一応名乗っておくね。私は【グレイシャー】。三年生で生徒会長だ」



 向き直った会長は地面に刺さっていた剣を引き抜くと、腰の鞘に納めた。



「今日はエキシビションマッチということで、我々生徒会メンバーは巡回して回ってたんだけど……こんなことになっていてびっくりしたよ」

「すまんな」



 レグルス先輩が前に出る。同じ三年生だけあって知り合いなのだろう。



「レグルス……パラディン……君たちがいてこんな騒ぎを起こすなんて……」

「返す言葉もない」

「ごめんごめんってー」



 そして倒れていた他の人達もこちらに集まってきた。



「グレイシャーさん……」

「カメリア……君も何をやってるのかな」

「すみません……」

「とにかく! この件に関しては後ほど事情聴取を行うから」



 俺達はエキシビションマッチの会場へと戻ることになった。ぞろぞろと戻った時には既に、閉会式が行われているところだった。







「いやー、緊張するね」

「ああ……」

「こ、怖いね……」

「……落ち着いて」



 エキシビションマッチの次の日、俺達平和の園は放課後生徒会長に呼び出されていた。四人並んで廊下を歩き、生徒会室へと向かう。



「えーっと、ここだね」



 投網がノックすると、中から返事が返ってくる。一言断りを入れてから入室していく。



「失礼しまーす……お?」



 中は大きな会議室のようなつくりだった。長机とパイプ椅子がいくつも並んでいる。そこには大勢揃っていた。まず外濠先輩(レグルス)祇園先輩(パラディン)天ノ川先輩(カメリア)の三年生組。続けて畑江(グリズリー)赤司(エレガンス)、それに中川(メイド)。そして俺達平和の園と、今回の騒動に関わったメンバー勢揃いだった。



「さて、座ってくれ」



 そして俺達と向かい合うように、一番奥の机には四人が座っていた。四人とも初めて見る人だが、今喋った真ん中の人物がおそらく生徒会長だろう。アバターと同じく、長く伸ばした髪を無造作に流している。



「とりあえずこれで全員揃ったね。改めて名乗ろう。私は三年の生徒会長で、博田(はかた)だ」



 俺達が座ると同時に話し始めた。やはりこの人が会長だったか。



「さっそくだが、本題に入ろう。昨日のエキシビションマッチの話だ。いったい何があってあんなことになったのか、話してもらいたい」



 それから事情説明が始まる。主に畑江と赤司が中心となって説明していく。ブライアを引き入れた理由、具体的なサポートの内容、そこから起こった戦いの顛末等々。一部俺や先輩達が口を挟みながら、説明していく。会長と横にいる人達は頷きながらも、黙ってそれを聞いていた。



「……なるほどね。そういうことだったのか」



 一区切り着いたところで、会長が口を開く。すると、会長の隣に座っていた、眼鏡をかけた男子生徒が話し出した。



「会長!」

「何かな?」

「これは由々しき問題です! 学園の秩序を乱したことは、厳罰に値すると思われます! ここにいる全員に処分を……」

「まあ、待ちたまえ副会長」



 段々ヒートアップしていた副会長なる人物に対し、会長は手のひらを向けて押し止める。



「話を聞いてみれば、彼らは騙されたようなものだ。言ってみれば被害者だよ」

「ですが……!」

「君の気持ちもわかる。簡単に許しては示しがつかないと言いたいんだろう?」

「その通りです! やはり厳罰を……」

「だから、待ちなって。私の個人的な見解では、軽い処分が妥当だと思う」



 厳罰と聞いて俺達の中に緊迫した空気が漂っていたが、会長の一言でそれが少し緩んだ。



「という訳で、ローズガーデン及び百獣団には一週間奉仕活動に参加してもらうことにする。もちろん連帯責任だよ?」

「わかった」

「わかりました」



 畑江と赤司はガックリと項垂れていた。なんだかんだ二人とも自分のところのギルドマスターを慕っていたし、迷惑をかけた事を申し訳なく思っているのだろう。そして会長の決定を聞いた副会長は不満そうな顔で、俺達を睨み付けていた。



「さて、処分については置いといて……霜屋君」

「はい?」



 ひとまず安心……と思っていたら、俺に話が振られた。予想外だったので、変な声が出てしまった。



「君はあの災害衆の一員だったそうだね?」

「ええ、まあ……元、災害衆ですけど」

「その君に聞きたい。もし六花祭に災害衆のメンバーが出てきたとして……うちの学校は勝てると思うかね?」



 会長は恐ろしく真剣な表情で俺を見ていた。周りの視線も俺に集中する。俺は少し考えた後、口を開いた。



「わからない……てっのが本音ですね」

「ほう、その意味は?」

「相手に災害衆がいたとして、一人なら俺が抑えるのは可能です」



 実際のところ俺達六人の戦績はほぼ互角。一対一なら勝ったり負けたりを繰り返していたからな。



「だから抑えたとして、残りのメンバーがどれくらいの強さかにも寄りますね」

「ふむ……なるほど。ありがとう、参考になったよ」



 どういう意図の質問だったのかはわからないが、満足してもらえたようだった。その後話は終わりということで、全員揃って退室することになった。



「おい」



 全員が部屋を出たところで、俺の真後ろから声がした。反射的に振り向くと、畑江と赤司が渋い顔で立っていた。何か恨み言でも言うつもりかと身構える。が、次に出てきた言葉は予想外だった。



「すまなかった」

「申し訳ありませんでしたわ」



 二人は揃って頭を下げてきた。あまりの事態に俺は目を丸くする。



「今回の件は俺達の責任だ。迷惑かけて悪かった」

「ああ、わかったが……急にどうした?」

「昨日、マスターとじっくり話したんだ。それで自分が間違ってたって気づいた」

「わたくしもですわ。嫉妬で目が眩むなんて……どうかしてましたわ」



 後ろを見ると、外濠先輩と天ノ川先輩が頷いている。この二人をここまで説得するなんて……リーダーとして優れた人達なんだな、と感心してしまう。すると、先輩達も一歩前に出てきた。



「俺達からも謝る。許してやってくれないか」

「すみません」



 先輩達にここまでしてもらって、俺がごねる訳にもいかないな。



「いいんですよ、そんな謝らなくて」

「霜屋……」

「元々俺は怒ってた訳じゃないし、悪いのはあの女ですから」



 こんだけ騒ぎを起こしてくれやがったんだ。あの女は次会ったら叩き潰す。



「後は……みんな、どう思う?」



 振り返って問いかけると、仲間達は笑顔で返してくれた。



「うん、真偽君がいいなら、私からは何も言うことないよ」

「……問題ない」

「こ、怖かったけど……大丈夫かな」

「だ、そうです。だから謝罪を受け入れます」



 俺は両手を差し出した。頭を下げたままだった畑江と赤司はそれを見て、しっかりと握手を返してくる。



「次は自分の力で、正々堂々勝ってみせるぜ」

「わたくしも負けませんから」

「ああ、楽しみにしてるよ」







「ふー、疲れたね」

「……落ち着く」



 俺達は部室へと戻ってきていた。それぞれ定位置に座り、リラックスする。



「今回は大変だったな。まったく、草笛の奴……」

「あ、ところで真偽君!」

「ど、どうした?」



 急に投網が大声を上げた。ついビクッとしてしまう。



「あのさ、そのー……」

「ん?」



 いつも快活な投網にしては歯切れが悪かった。どうしたんだろう?



「もしかしてなんだけどー……」

「おう」

「その、草笛さん、って……真偽君の彼女だったりするの?」

「はぁ!?」



 投網は上目遣いで、恐る恐ると言った感じに質問してきた。俺とあいつが恋人同士? ……考えもしない可能性だ。



「ないない。絶対ないから!」

「でも、めっちゃ仲良さそうだったからさ……」

「あくまで元仲間ってだけだ。そんな可能性は全くない。少なくとも俺は異性として好きじゃない」



 草笛はかなりのサディストだからな。俺とは性格が合わない。



「そっか、良かったー……」

「良かった?」

「あ、いや、なんでもないよ!?」

「おう……ならいいけど」



 この慌てよう……まさか? ……いや、決めつけるのは良くないな。



「……あ」

「どしたの、一縷ちゃん?」

「……サインもらうの忘れてた」



 ガックリと肩を落とす一縷。そんなに欲しかったのか……。



「まぁ、今度俺がボコボコにしてから、その上でサインもらおう。な?」

「……わかりました」



 俺のフォローとも言えないフォローに、コクリと頷く。



「よし、じゃあ切り替えて……今日も張り切って練習いきますか!」



 投網の号令を受けて、俺達は仮想世界へと飛び込んでいった。

これにて二章は完結です。ここまでお読み頂きありがとうございました。


さて、今後の予定ですが、この作品は完結として休止させて頂きます。理由としましては、作品の反響がいまいちだったから、そして三章以降の展開を練る時間が欲しいからです。


次に何を書こうか色々考えていますが、具体的な形にはなっていません。再開については未定です。


どうなるかはわかりませんが、またお会いできたら幸いです。もう一度、本当にありがとうございました。

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