最終話 異世界=勇者だっ!!
梅雨が明け、夏の日差しが容赦なく
道行く人々に攻撃を仕掛ける頃。
オレは、取り合ず北海道に向け
出発することにした。
この際、冒険気分で電車に乗って
行こうと思ってた。
まぁ、気になる場所があれば途中下車を
すればいいし。
漠然と北海道に行くってだけで、
特に目的もあるわけじゃない。
帰る場所になるかどうかわからないが、
アパートは解約せずに、半年分の家賃の
前払いだけしとくようにした。
「あっつそうだなぁ・・・蒸し暑いわ。
向うの世界では、こんなに暑く
なかったけどな。
つーか、あんまり四季もなかったが・・」
オレは出る前に全てを確認して
一息ついた。
「まぁ、半年分の家賃も払ったし、光熱費は
引き落としだし、ヤバくなったら、
いつでも帰ってこれるな」
そして、荷物を持った。
意外と少なかったな。ま、なにか無くなれば
行った先で買えばいいしな。
なるべく身軽にして行こうとしていた。
冬になったら、沖縄でも行けばいいと
考えていた。
さぁ、取りあえず北を目指すかぁー!
と、オレは新しい明日に向けてドアを開けた。
ドンッ!
ん?なんかにぶつかった。
あれ?なんか置いてたっけ・・・
顔を上げると、そこに、ブロンドの髪の
サングラスを掛けた、白いTシャツを着た、ス
タイルのいいオネーチャンが立っていた。
オレはすぐにリリアだとわかった。
オレは頭が真っ白になった。
「な・・・・なんで・・・・」
彼女はサングラスを外し、
あのブルーの瞳でオレを見つめた・・
瞳が涙であふれてきていた
「ヨースケ!!」
とオレの胸にドンとぶつかってきた
あぁ・・・懐かしい匂いだ・・
リリアの香りだ・・
これは夢か?夢なのか?
夢なら悪い冗談はよしてくれ・・・
リリアはいきなり怒鳴った。
「ずっとずっとずーーっと探していたのに!!
テレビにも出たのに、なんでっ!!
なんで会いに来てくれなかったのっ!!?」
いや、オレも!!!!
・・・逢いたかった・・ずっと逢いたかった。
でも・・・
「す・・すまん・・も・・もう、別の世界の
人かなって・・・・」
言葉が浮かばない。
「ミ・・見た目も、ほら、オッサンだし・・・
わかんねーかなって・・・」
なんだ?この言い訳は??
「そんなこといい!見た目なんてどうでもっ!!
私のこと・・
私の事、もう忘れちゃったんじゃないかと・・
ずっとずっと不安だったのにっ!!!」
リリアはオレにしがみついたまま、声を荒げた。
「し・・しかし、なんでオレが元の世界に
帰ってきてると・・?」
「神様が・・神様が..
魔王を倒したご褒美って。。
チャンスをやるって・・」
そして、オレの目をまっすぐ見て言った。
「私も・・私もこの世界から行ってたの!」
そしてリリアは指輪を見せた
「これも・・そのまま持たせてくれた・・・」
ゆ・・・指輪・・・オレが渡した・・
ステータスリング・・
指輪を見た瞬間、あの日々が鮮明に蘇ってきた
戦った日々、笑った日々。走った日々。
涙が出てきた。。とめどなくとめどなく。
さ・・探して・・・・くれてたんだ・・・
オレは・・オレは、バカにされるのが怖くて。
ビビって、避けようと・・
なんてことを・・・
オレは自分の不甲斐なさにケリをいれたかった。
「り・・リリアっ!!す・・すまないっ!!」
「オレは・・リリアを見くびってた!
そんな奴じゃないって知ってたはずなのに!」
オレはリリアを抱きしめた。
その日、オレは出発を取りやめ、
そしてリリアはオレの部屋にそのまま
泊まった。
一緒に朝を迎えた
リリアは話してくれた。
3年前に帰ったこと。23歳になったこと。
全ての記憶が戻ったこと。
語学研修で日本にきたこと。
仕事で日本に来日し
そのたびに、人づてに探してたこと。
多大なる費用をかけてオレの存在を調べたこと。
K県K市と、コタニ・ヨースケいう
手がかりだけでだけで・・
そして、今回、納得いくまで自分の足で
探すことにし、やっと居場所を探し当てたことを。
話をするたび、お互い笑って、泣いた。
そしてリリアは時折怒って、
オレにボディブローを食らわせた。
もう、リリアは別の種族じゃない。
オレと同じ人間だ。
お互いに遠ざける理由は無くなった。
リリアをもう手放したくないと、思った。
今までの事を、お互い吐き出すだけ
吐き出した。
もう、気分は落ち着いていた。
「で、どうするんだ?
今頃リリアがいなくなって、
みんな大さわぎになっているんじゃないか?」
オレは気になっていることを聞いた。
リリアはオレを見て、ニコッと笑って言う。
「・・・私は、もう大人。
だから私の人生は私が決めるの」
リリアがオレに向き直った。
笑顔は消え、真剣な眼差しになった。
「だから、騒ぎになっても
私・・全部やめるつもり
私はヨースケといる。
もう離れるのはイヤ、あんな悲しいのはイヤ。
あんな苦しいのは、もうイヤなの。
私があそこでいた5年間は、今までで何よりも
濃密な時間だった。掛け替えの無い時間だった。
それを分かち合えるのはヨースケしかいないの。
わたしがテレビに出たのも、
ヨースケに気づいてもらうためだけだったし・・
もう、目的は完遂したわ」
「ホントに・・それでいいのか?」
「また逃げる気なの?」
リリアが、ジロッと睨んだ。
「い・・いや・・すまん。
逃げる気など・・サラサラない!」
「じゃぁ、今度はヨースケが、私を連れ去って。
私は大人だから誘拐にはならないわよ?」
そう言って、リリアがニヤっと笑った。
あっらーーいつの間にか、
シタタカになったんだなぁ・・
やっぱ、ツンデレ系??
「わ・・わかった。
せ・・せめて連絡だけでも入れてやってくれ」
突然蒸発して、事件に巻き込まれた!!なんて
ニュースで流れでもしたら、ヤッベーし・・
「いいわ。でも、一旦帰ってとか、
そんなことしないわよ?」
急に、なに?強気のお言葉。
「え・・じゃ・・じゃぁ、このまま?」
「そうっ!ヨースケは女好きだから、
目を離せませんっ!」
来たねーー!言い切ったねー!
「そ・・そんな!そんなことするかよぉっ!」
そうだ!そんなことするわけない!
リリアは、オレを一瞥して言った。
「聞いたわよ?ヨースケ。
娼館でなんか騒ぎを起こしたらしいわね~?」
リリアが、ジロっとオレを見た。
なな・・なんじゃーっ!!
今頃そんな古いネタッ!!
クソッ!これも、リベラが吹き込みやがったな?
「それと~色んな街で、ナンパもしてたとか?」
こ・・この情報は・・アカの野郎だ!!
チクショォーーッ!!
主を裏切りやがって!!
ヤッベ!!完全にマウントされてるぅっ!!
「でで・・でも!そ・・それはその
向うで何年も・・昔の・・話・・で」
「あらーー?そんなこと言うんだー?」
「い・・いえっ!・・ス・・スンマセン・・」
あ・・ダメだ。リリアは完全に強くなってる。
姫キャラはどこいった・・。
「まぁ、いいわ。この異世界では、やめてください」
リリアはフッと一息ついて、眼差しを下に落とした。
「え?リリアも、この世界に違和感を
感じているのか?」
オレは意外だった。テレビにも出て、有名人じゃん。
違和感を感じながら、この世界に合わせてたのか・・。
「え?・・ええ・・なんか馴染めなくて・・」
「オレもだ。ま、オレは80年いたから
余計かもな」
「私、正直いうと、時々帰りたくなる。
あの世界に」
リリアがポツリと言った。
「あぁ・・オレもだ。
もう、オレたちにとって、ここは、この世界は
異世界なのかもな・・」
「うん・・実は私、こんなこと言っちゃ
いけないかもしれないけど・・
ママにも・・ママにもあんまり
愛情を感じないの。
前からそうだったかも・・だけど」
リリアが俯いて、言った。
そうか・・リリアも疎外感を感じてたんだ・・
オレと同じように。
誰にも言えず、誰にも相談できない。
言ったところで、信じて貰えない。
同じだ・・。
でも!今はオレと一緒だ!一人じゃない!
「リリア!」
「うん?」
「もう、一人じゃないな?オレたち!!」
「うん!」
リリアが、パァーッと笑顔になった。
オレの大好きな、リリアの笑顔だ。
「ヨシッ!じゃぁ、一緒にこの異世界の
旅に出るか!!2人パーティで!」
「うんっ!!行こうっ!」
この世界という理不尽な異世界に
オレとリリアは旅立つ。
今度は、オレはリリアを守る勇者だ!
魔王も悪くないが・・
やっぱり!異世界には勇者がよく似合う!
この物語のタイトルを変えよう!
異世界=勇者だっ!!
-----------E N D--------------
後日談の物語として先行投稿をアルファポリスさんでしております。
『魔界=魔王だっ! Next World』という題名です。
まだ始めたところですが、興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら
見てください。
ある程度まとまりましたら、こちらにも投稿させていただきます。
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
3月25日
後日談の物語として『魔界=魔王だっ! Next World』を掲載しました。
よろしければ、引き続きお楽しみください。




