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異世界=勇者!じゃなくて魔王だっ!!   作者: リーマンズ・ハイ
15/23

 15話 魔王、帝国に入る


 

 ザーロの街が見えてきた。

 

 ザーロは昔から各国との交易の中心となる

大きな街で商人が多い。


 しかし、保守的な部分があり、人間だけしか

街に入れないように決められている。

 

 そのため、街壁は高く頑丈に作られており、

街門は2か所だけしか作られていない。

 

 門での出入りには、必ずステータスカードの

提示が義務付けられており、入街の審査は厳しい。


 東の大陸(ゲンベルク大陸)の通商の要で

あるため、ガルドもこの街に関しては、

手を出していない。

 

 シュベルらは、ザーロの手前で馬車を止めた。


「ヨースケ・・どうするのだ?

 外観は隠せても

 ステータスカードを見られたら、

 我がダークエルフとバレるぞ?」

 

 パメラが心配そうに聞いた。

 

「まぁ、任せとけって」


 シュベルはニヤリと笑った。


「取りあえず~・・見た目をなんとか

 しなくちゃな・・

 リリア、帽子持ってねーか?」


 シュベルはリリアに聞いた。

 

「あのー・・こんなので良かったら

 ありますけど・・」


 リリアは白いニット帽のような

モノを出した。

 

「あぁ、丁度いいんじゃね?

 パメラ、耳が隠れるよう に被ってみ?」 


「あぁ・・いいが・・こんなことしても・・」


 パメラは困惑したような表情で、

耳が隠れるようにリリアの帽子をかぶった。

 

「こ・・・こんな感じで・・い・・いいのか?」


 と上目遣いでシュベルを見た。 

 

「わぁぁ!可愛い!!!」


 リリアが、笑顔で言った。

 

(ウッワ!マジか!マジ、可愛ぇーーッ!!

 つーかっ!なんだその上目使いわぁーッ!!)


 シュベルはドキッとした。

時として帽子は、女性を可愛く見せる

ようである。


「お・・おぉ・・い・・いいんじゃねーか?

 なぁ、アカ?」

 

 とアカを見ると・・・アカはガン見だった。


「え・・?は・・はいぃ、そ・・そうですね」


(なにキョドってんだぁ?この野郎・・)


「よぉし!あとはオレに任せろ!

 ってか、その前に

 パメラのステータスカード見せてくれ」

 

「あ?あぁ、いいが・・」


 とパメラは右手をかざし、シュベルに

提示した。

シュベルはジーッとそれを脳裏に

刻むよう、注視した。


「いいぞ。よし、あとは大丈夫だ。

 あ、それでな、門番の前でオレと

 手を繋ぐんだ。いいな?」

 

「手を・・なのか?」


「あぁ、パメラに魔力を通して、

 門番に魔法をかける。

 催眠術みたいなもんだ」

 

「あ・・あぁ、わかった・・」


 シュベルらは、ザーロの門に向かった。


 門前には商人たちの審査待ちの

列が出来ていた。

ほとんどが荷馬車で、同乗者は全員おり、

荷物の確認と同乗者の身分審査などで、

時間がかかっていた。


 荷物の審査も隠れているモノがいないかと

調べるため、遅々として進まなかったのだった。

 

「おっせーなぁーー日が暮れるぞ」


「まぁ、そのうち順番が来ます。待ちましょう」

 

 リリアがシュベルをなだめるように言った。

 

 陽が沈みかけてきたところで、

ようやくシュベルらの番がきた。

 

「全員、馬車から降りて」


 門兵が声を掛けてきた。

 

 シュベルらは、促され受付台のような

所に行かされた。


「おい、パメラ手を繋ぐぞ」


「え・・?今か?ほ・・本当に繋ぐのか?」


「はぁ?」

 

 シュベルが振り向くと、パメラが顔を

赤くしていた。

 

(あーーっ!!!お前はなんだ!え?え?

 中坊のフォークダンスか?中坊なのかっ!?

 テレてるんじゃねーーっ!!こんな時に!!

 つか、その巨乳モジモジ止めろ!!) 

 

「おいっ!んなこと言ってる場合か早くしろ!!」


 シュベルは小声でパメラを戒め、

強引に手を握った。

 

「アッ♡」


(アッっ♡てなんだ!アッ♡って!!

 しかもその『♡』はなんだーーっ!!

    もも・・・萌えるじゃねーか!!)

  

 審査兵の前に二人が出た。兵は二人が手を

握っているのを見て、ニタァっと笑ったが、

それ以上の事はなかった。

パメラは相変わらずモジっている。

 

 シュベルは魔力を流した。

 

「じゃぁ、ステータスカードを出して」


 シュベルとパメラが出した。

シュベルが握っている手に汗がにじんだ。


「えーー・・・・はい。お通りください」


 すんなり門兵は2人を通した。

 

アカとリリアが後ろから馬車に乗りやってきた。


「ハァァァァ・・・・」


パメラが大きなため息をついた。


「な?ウマくいったろ?」


「いや、緊張した。ヨースケ、スゴイな。

 こんなことも出来るのか!」

 

 パメラが晴れやかな顔で言った。 


「あぁ、楽勝だ、こんなのわ」

(あたりめぇだよ・・ダテに魔王やってねーし)


「ウマくいきましたねぇー!!」


 とリリアがやってきた。

 

「あぁ!さ、取りあえず宿を探すか!

 日も暮れたし、まずはメシだ!」

 

 

 

 

 宿を取り、食事を済ませ部屋に戻ったころ

レイグリッドから念話が入った。


「お疲れ様です。シュベル様」

  

「あぁ!レイグリッド、なんか久しぶりだな」


「旅はいかがですかな?」


「あぁ・・色々大変だけど、なんとかやってるよ

 もうすぐ帝国に入る。そっちはどうだ?」

 

「はい。各族長の件はリベラがうまく

 まとめましてございます。

 魔王国の入り口閉鎖工事も順調です。

 実は、ドワーフ達が手伝いに

 来てくれまして」 

 

「え?ドワーフが?」


「はい。送り出す戦士数が少ないかわりに

 支援をと。

 大陸の国境前にも砦を作ってくれて

 おります。

 彼等は手際がいい。

 予定より早く終わりそうです」

 

「へぇー・・オレ、会ったことねーけど・・

 親切なんだなー・・なんで?」

 

「リベラ殿の人望でしょうな。フフフフ」


「すげーな!リベラ!適当そうに見えて、

 ちゃんとやることやってんだな?」

 

「まぁ、確かに適当な所もありますが、

 シュベル様の命には、真摯ですぞ?」

 

「そっかぁ・・帰ったら褒めてやらなきゃ」


「そうしてやってください」


「で、なんかあったか?」


「あぁ、はい。ミリアが回復いたしました」


「そうかぁ!!良かった!!

 心配してたんだ!!

 あ、そうだ。ミリアで思い出した」

 

「ん?どうされました?」


「レイグリッド、驚くなよ。

 オレと一緒に旅してるアーチャーな、

 ニコレの姉ーちゃん、だったわ!」

 

「ええっ??確か・・」


「パメラだ!」


「そうでございましたか!!

 いや、それは良かった」


「ん?どうしたんだ?」


「実は先日、私がダークエルフの村へ

 行ったとき

 マルセル殿が、ニコレが居なくなった時に、

 パメラ殿が慌てて探しに出て

 それっきりと聞いておりました故・・」


「そうかぁ、マルセルに無事だと

 伝えてやってくれ。

 オレと旅の途中というのも言ってくれていい。

 もうしばらく、借りるとな」

 

「畏まりました」 


「今日はウレシイ話が沢山聞けて良かった。

 あともう少しでガルドを仕留める。

 待っててくれ」

 

「ハッ!ご武運を」

 

 レイグリッドとの念話を切った。

 

「アカ!ミリアが回復したってよ!」


「そうでございますか!!良かった」


「あぁっ!お前たちが助けに行ってくれた

 お陰だ。感謝する!」

 

「何を!!当たり前の事です」


「明日には帝国内だな」


「はい、いよいよですね」


「帝都までは、どれぐらいだ?」


「そうですねぇ・・1日半ってとこですか・・」


「そっかぁ、もう補充はできないな

 明日は、武具を全部揃えよう。

 出発が遅くなってもいい」

 

「承知いたしました」



-----宿@女子部屋-----


 リリアは、右手の指輪はずっと眺めていた

 

「リリア、お前その指輪貰ってから、

 毎晩ずーっと 眺めてるね?」


「えぇ?そうですかぁ?そうかな・・」


「あぁ。ヨースケに惚れたか?」


「え?え?えええ??そそ・・そんな・・

 わ・・私わ・・」

 

「ハッハハハ!いいっていいって!

 見てればわかる」


「えーーっ!!」


「まぁ、見た目は大した事はない奴だけどな。

 ハハハ!」


「そんなっ!!!ヨースケさんは・・その・・

 カッコいいです・・」

 

 リリアの顔が見る見るウチに真っ赤になった。

その様子を見て、パメラは笑った。


「ハッハハハ!いいんじゃないか?

 あいつは、あぁ見えて、

 結構、男気があるからな」

 

 そして、一息つくと

 

「リリアはいいなぁ・・

 我はどうしても男には

 素直になれん・・」             

  

「なんかあったんですか?」


 リリアがパメラの様子をみて、言った。

 

「うん。我は族長の娘だからな。

 近寄ってくる男達をどうしても

 警戒してしまうのだ。

 相手の言葉を素直に受け入れられない

 のだな。

 まぁ、これは我の性質かも知れんが・・」

 

 パメラがポツリと語った。


「まぁ、その点、ヨースケは

 欲望丸出しだぁっ!

 はっはは、我の乳を平気で

 ガン見するしな!

 あいつならきっと、お前はスケベか?

 と聞いたら、堂々とオレはスケベだっ!

 と言いそうだな!ハッハハハ!」

 

 パメラが愉快そうに笑った。

 

「そんなぁ、そんなこと無いです!」


 リリアが反論した

 

「あははっは!まぁいい。ま、アイツの言う事なら

 信用してもいいんじゃないか?リリア?」

 

  パメラは。言い終わったあと、意味ありげに

 ニヤッと笑い、リリアを見た。




 明けて、翌日、シュベルらは、出発前に

必要なモノや武具を揃えるため、街に出た。


「取りあえず、武具屋に行こう。

 パメラも弓矢は買えるだけ買うんだ

 金の事は心配しなくていい。

 オレに任せろ」

 

「いいのか?」

 パメラが聞いた。

 

「あぁ、もちろんだ。ここから先は帝国だ

 おそらく、どの街も魔人兵だらけだろう。

 ここでしかもう、補充はできない」

 

 シュベルらは街で一番大きい、武具屋

に入った。

 

 様々な武器・防具が揃っていた。

シュベルは全員の防具を、その店にある

一番強固なものに新調した。


 ここまでの戦いで、今までの防具は

痛んできていた。

これからの戦いは更に激しくなると

思った上でのことだった。


 次に武器だった。

リリアの剣を、ハルシオン製のモノに変え

パメラの弓も、さらに強力なモノに変えた。

アカは。既に最強の槍を携えているため、

武器は変えなかった。

シュベルも、ハルシオン製のショートソードを

装備した。

あとは弓矢を含め、消耗品などを大量に

買い込んだ。

 

 そしてシュベルは購入した全ての武具に、

魔王国特製の希少級の魔石を埋め込んだ。

これで、本来の性能が十数倍アップする

ことになる。


「こ・・こんな魔石は見たことが無いぞ?」


 パメラが驚いた。

 

「あぁ、それはとっておきだからな」


「いいのか?こんな」


「あぁ、魔石は使ってこそ意義があるんだ

 持っているだけじゃ意味がない」

 

「い・・いや、そう意味じゃ・・」


「いいんだ!」


 シュベルはリリアとパメラの顔見て、改めて言った。

 

「この程度で、命が守れるのなら、いいんだよ」


 2人は、珍しく厳しい表情をするシュベルを見て

これからの戦いが生半可じゃないのを知った。


「わかりました。ヨースケさんについていきます」


 リリアが、しっかりとシュベルを見た。

 

(オレは、ガルドを倒す。

だが、それと同時に二人を死なすわけには

 いかない。

どんな事があっても、二人は守る)


 最初は好奇心とリリアに惹かれ、パーティに

入ったものの、今ではかけがえの無い、

大事な仲間だとシュベルは思っていた。


 同時に、リリアに対する想いも、

より深くなっていたのだ。

 

 

 全ての装備を整え、荷造りを終えた頃

には昼を過ぎていた。

 

「さぁ、準備もできたし、なんか食ってから

 出発するか!」


「そうですね、行ける所まで一気にいきませんと

 すぐに陽が沈みますからね」

 

 アカがシュベルに同意した。

 

「なぁ、何が食いたい??」


「え?あー・・わ・・私は、その

 もしあれば、ケイクを・・・」

 

リリアがオズオズと言い出した。


「え?ケイクかぁ・・あるかな。

 探してみるか」


 シュベルらは、ブラッセリを何件か

探したあと、ケイクがある店を見つけた。


「良かったな、リリア。お目当てが

 あったようだ」


 と他人事のようにパメラは言った。

 

 4人はまた、ホールでケイクを頼み、

アカは肉を頼み、しっかりと味わった。

 

「ところで、ヨースケ様、この間みたいな

 大群の対応 はどうしますか?」


 アカが聞いてきた。


「それなんだがな、一つだけ考えがあるんだ」


「どうするのだ?」

 パメラが聞く。


「うん、これは見通しのいい草原みたいな

 所でしか使えないが、目に入る所なら、

 オレの瞬間移動が使える」

 

「はい」

 アカが言う

 

「オレたちがバラバラに戦うのではなく、

 一塊として戦えば、瞬間移動でその場から

 全員離れられる」

 

「つまり?」

 パメラが聞いた。

 

「ヤバくなったら、逃げるのさ。

 そして敵の後方に回る。

 で、敵を削る・・逃げる・・繰り返しさ」


 ニヤっとシュベルが笑った。

 

「そんなので、ウマくいくのか?」

 パメラが心配そうに言う

 

「やってみなきゃわかんねーよ。

 でも試してみる価値はあるだろ?」

 

 ハハハっとシュベルは笑った。

 

「名付けて、ヒット&ウェイ作戦だ!」

 

  シュベルは一人で盛り上がった。

  

「ま・・まぁ、大群に出会わないように

 した方がよさそうですねぇ・・・」

 

 アカが期待外れのように呟いた。

 

 

 シュベルらは、街を出た。

しばらくすると、帝国に入る。


 いよいよ戦いの本番が始まる。


 4人の表情には

 強い意志が宿っていた。         

       

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