オ、オニギリは、お、美味しいんだな
「じゃあ、後は馬車を見に行く?」
「ああ、頼むよカネーちゃん」
「しゃ~っす!」
ロック達は、衣類などと一緒に武器・防具や旅の用具を支払カウンターに預けて、
店舗の裏手にある、馬車の売り場へと向かった。
「ここよ」
「おお~っ!色んなタイプの馬車を売ってるんだな」
「建物もデカいっす!」
「ホントですね!」
カネーの案内で訪れた馬車売り場は、天井も高く広いスペースの倉庫の様な場所に、
様々なタイプの馬車が30台ほど並べられていた。
「冒険者向けの馬車となると、この辺のタイプになるかしら」
カネーが案内したのは、幌付きで5~6人が乗り込めそうな大きさの馬車が、
何台か並ぶ場所だった。
「うん、カレン達に夜は寝泊りして貰う様になるから、
このぐらいの大きさは必要だよな」
「そうっすね」
「座席付きと、荷台のみのタイプと、
ちょっと割高になるけど座席が畳めるタイプがあるけど、
どれが良いかしら?」
「う~ん、どれが良いのかな?
カレンは、何か希望があるか?」
「自分は、ゴーレムに変形するのが良いっす!」
「いえ、特別ありませんが、
冒険者の場合はクエストで素材が積み込める様に、
荷台のタイプを使ってる人達が多いみたいですね」
「なる程、まあ俺達の場合は、
俺のアイテムボックスに全部入るから、その辺は考えなくても良いな」
「そうっすね」
「荷物を考えなくても良いなら、
移動のときは座席に腰掛けた方が楽だから、
夜寝る時に折り畳めるタイプが良いんじゃないかしら?」
「そうだな、それが一番ウチのパーティーに合ってそうな気がするな、
どうだ?ウィル、カレン」
「良いと思うっす!」
「はい、私も良いと思います。」
「そうか、じゃあカネーちゃん、
この馬車を貰えるかな」
「分かったわ、じゃあ係の者を呼んで来るわね」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待つんだな、
そ、そ、その馬車は、
ぼ、僕が、さ、先に目を付けてたんだな」
カネーが、馬車の販売担当者を呼びに行こうとしたところ、
キンキラキンの悪趣味な服で身を固めた
見るからに、貴族のバカ息子を思わせる小太りの少年が歩いて来て、
ロック達に、そう告げた。
「あら、もう、この人が買う事に決まったの?」
カネーが、少年の後ろから歩いて来た青年に問いかける、
その物言いからして、その青年が馬車の販売担当者の様だ
「いえ、お嬢様、こちらのお客様は、
この馬車を半額で売れと仰られただけで、
お買い上げになられた訳では御座いません」
「そんな値段で売れる訳無いじゃない」
「ええ、私も、そう申し上げたのですが・・・」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕は、タ、タ、タイショウ子爵が一子の、
ハ、ハ、ハダーカ男爵なんだな、
ぼ、ぼ、僕の様に、しょ、将来が有望な人材に投資するのも、
しょ、しょ、庶民の務めなんだな」
『カレン、タイショウ子爵家って知ってるか?』
ロックは、カレンに小さな声で問い掛けた。
『はい、先先代の方は優秀で王様の覚えも良かったそうなんですが、
段々と代を重ねる毎に衰えて行って、
現当主の方は借金が多くて、首が回らないと聞いた事があります。』
カレンが、同じく小さな声で答えた。
『なる程、つまりアイツは、
金が無いから、有りもしない将来性に投資しろって言ってる訳か』
『放浪画家にでも成った方が良いんじゃないっすかね』
『はい、そういう事だと思います。』
「お客様、申し訳御座いませんが、
当店では、その様な値引きは行っておりませんので、
正規の値段での、お買い上げを頂けますか?」
どうやらカネーも、タイショウ子爵家の内情を知ってる様で、
買えるだけの金が無いのを分かった上で、
こう言って諦めさせる作戦に出た様だ
「お、お、お前は、だ、誰なんだな?」
「はい、私は当店『ガッポリ商会』の長女で、
カネー・ガッポリと申す者です。」
「こ、こ、この店の、む、娘なら丁度良いんだな、
ぼ、ぼ、僕のお嫁さんにしてあげるから、
こ、こ、この店の商品を、ぜ、ぜ、全部タダで寄越すんだな」
「はい?」
カネーは、ハダーカ男爵が何を言ってるのか良く分からないといった感じの、
唖然とした表情をしている
『あのコビトカバ、何言ってるんだ?』
『世迷言っすね』
『自分の家の現状が理解出来ていないのでは無いのでしょうか?』
「ぼ、ぼ、僕のお嫁さんの実家なら、
ぼ、僕の家も同然なんだな、
だ、だ、だから金を払わないのも、と、当然なんだな」
「貴方様と結婚する気は御座いませんが、
仮に結婚したとしても、私には兄が居ますから、
この店は、貴方の物にはなりませんよ」
「そ、そ、そんなヤツより、
ぼ、僕の方が優秀だから、
と、と、とっとと追い出した方が良いんだな」
『うう~、ぶん殴りてぇ・・・』
『同感っす!』
『ロック様、あんなんでも一応は貴族ですからダメですよ』
「私の兄は、どこかの誰かと違って、
とても優秀だと王都でも評判ですので、どうぞ御心配無く、
それで、この馬車を買われるんですか?買われ無いんですか?」
兄の事を悪く言われてカネーも腹を立てたのか、
少し強い物言いになった様だ
「き、き、貴族の僕に向かって、
そ、その物言いは、か、か、勘弁出来ないんだな、
ぼ、ぼ、僕を怒らせたら怖いって事を、わ、分からせてやるんだな」
流石に自分が馬鹿にされてると気が付いたのか、
ハダーカ男爵が、そう言いながらカネーへと手を伸ばす
「ちょっと待った!」
ロックは、声高に、そう告げると、
ハダーカ男爵の腕をガッチリと掴んだ




