ロック・ローン
「でも良く奴隷商から逃げ出せたね、
ああいう所って、警備とかが厳しそうなイメージがあるんだけど」
「足抜けは許さねぇっす!」
「ええ、キツネ獣人の隠密スキルのお蔭もあるのですが、
母が亡くなるまでの間、母の様な冒険者に成りたかったので、
訓練の仕方を教わっていたんですよ、
母が亡くなって、お父さんに引き取られてからも、
早く独立したかったので、妹と一緒に訓練を続けていたんです。」
「なる程ね、持ち前のスキルと、
訓練で培った身体能力のお蔭で逃げられたって訳か」
「継続は力なりっす!」
「でもカレンさん、
いつまでも奴隷商から、逃げ続ける訳には行かないんじゃないの?」
「妹と一緒に冒険者になって、
パーティーメンバーを集めてから『シャッキーン・バード』を討伐して、
自分達を買い戻すつもりなんです。」
「え~と、それは、ちょっと無理だと思うかな~」
「そうっすね」
「何でですか?
私と妹は、こう見えてもソコソコ戦えるだけの腕前はあるんですよ」
「タヌキノ商会の厳重な警備を潜り抜けて来たとこから見ても、
カレンさん達が優秀なのは分かるけど、物理的に不可能なのよ、
だって、その『シャッキーン・バード』はロック君達が討伐しちゃったんだもの」
「えっ!?それはホントですか!?」
「ああ、王都の近くで討伐した『シャッキーン・バード』が、
1億5千万ギルぐらい腹に貯め込んでたんだ」
「ボロ儲けっす!」
「そんな・・・」
カレンは、最後の望みが絶たれた様にガックリと肩を落とした。
「カレンさん達の借金って、幾らぐらいなの?」
「私と妹を合わせて、千五百万ギルです。」
「う~ん、ちょっと私じゃ手も足も出ない金額ね、
ねぇロック君、カレンさん達に貸してあげられないかな?」
「おう、良いぜ!」
「そう言わずに・・・えっ!?良いの?」
「ああ、どうせ使う当ても無い金だし、
利息無しで貸してあげるよ」
「金利手数料はウィルネット負担っす!」
「そんな大金をお借りするなんて・・・」
「期限なんて別に設けないから、
冒険者になってからコツコツと返してくれれば良いよ」
「一流の冒険者になればアッという間っす!」
「カレンさん、ロック君達は、まだ新人冒険者だけれど、
一流冒険者並みの活躍をしてるみたいだから、
借りても大丈夫だと思うわよ」
「・・・分かりました!
ロックさん、ありがたく、お金をお借りする事にします。」
「ああ、良いぜ、
早速、明日にでも奴隷商に借金を返しに行こうぜ」
「スッキリ返済っす!」
「書類のチェックとかも必要だろうから、私も付いて行くわね」
「皆さん、何から何まで済みません」
「そうと決まれば、その奴隷商の服は目立つから、
私の家に行きましょうよ、カレンさんには私の服を、
妹さんには私が昔着てた服をあげるから着替えましょう。」
「ありがとう御座います。カネーさん」
「じゃ、俺達は当初の予定通りに、
カネーちゃん家までの護衛を務めるかな」
「了解っす!」




