あの流派の者
「それでは、さっそく鑑定をさせて頂きますので、
鑑定品を出して頂けますかな」
冒険者ギルドの裏手にある収蔵庫で、
ギルド専属の鑑定士であるモーカリマッカが、
ロックに、そう告げた。
「分かりました。」
ロックは、そう返事を返すと、
アイテムボックスの中から、ベヒモスの骨、革、肉を取り出して、
収蔵庫の床に敷かれたシートの上に置いて行った。
「こうして、並べて見ると壮観ね・・・
まあ、大きさから見ても本物で間違い無いでしょうけど、
王都で開かれるオークションに出展するのにも、
鑑定士が書いた鑑定書の添付が必要ですからね」
ギルド職員であるモモエが、ロック達にそう教えてくれる
「へ~、そうなんですか、
オークションに出展するのって、割と手続きが必要なんですね」
「お役所っぽいっす!」
「ええ、王都のオークションには貴族の方々も大勢参加なされるから、
ニセモノを売り付けるなんて事になったら、大問題ですもの」
「ああ、それはギルドの信用問題にもなりますよね」
「信用第一っす!」
「では、仕事に掛からせて貰うよ、
『隠しても君のアソコは丸見えだよ・・・鑑定!』」
「今の『鑑定』の、前の呪文って必要なの!?」
「初めて聞いたっす!」
「ああ、確かに『鑑定』でも魔法は発動するんだが、
前に付いているセリフは、我が流派の師匠が作った決まり事なんだよ」
「モーカリマッカさん、教えを乞う人を間違えたんじゃないの?」
「鑑定士なのに選択を誤ったっすね」
「いや、私の師匠は、この世界では第一人者なんだよ」
「鑑定士界で、ですか?」
「いや、イカした呪文を考える業界だよ」
「それこそ、何の業界だよ!」
「秘密結社っすね!」
「それで、鑑定の結果はどうなのよ?」
「ええ、全部間違い無く本物ですね、
しかも、皆、最高品質の太鼓判を捺して鑑定書が作れますよ、
本当に彼らはルーキーなんですか?
まるで、ベテラン冒険者が捌いた様な解体技術だし、
保存の状態も完璧ですよ」
相変わらず、ロックの特製アイテムボックスは良い仕事をしている様だ
「そうなのよね、ロック君達が持ち込んで来る素材って、
いつも、素材担当の職員が感心する様な高品質なのよね」
「ほう、それは凄いね」
「そ、それは、俺が解体を教わった
ジョセフさんが優秀だったからじゃ無いですか?」
「ジョセフさんて、そんなに解体が上手かったかしらね・・・?」
「私の記憶では、どちらかと言えば苦手としていた様な・・・」
「と、ともかく!
これで、本物の素材をギルドに納めたって事で良いですかね?」
「モノホンっす!」
「ええ、問題無いわね、
今から、ギルドの受取証を発行するから、
オークションが終わるまで、ちゃんと保管しててね、
それにしても、先日のバフンキノコと良い、
今回のベヒモスの素材と良い、ルーキーとは思えない稼ぎじゃないのよ」
「へぇ、ロック君達はルーキーなのに、
もう、そんなに稼いでいるのか」
「ええ、幸運に恵まれまして」
「ラッキーっす!」
「冒険者は、運も実力の内よ、
何十年やってても梲が上がらない人も居れば、
デビューしてから数年で、金銀財宝を手にする人も居るわ、
ロック君達なんかは、後者の極端な例になるのじゃないかしら?」
「そう成れれば良いですね」
「ウハウハの人生っす!」
「今回の成果で、またギルドランクが上がる事になるわね、
でもロック君の場合は、採取系と討伐系は問題無いんだけど、
護衛のクエストを、まだ受けていないから、
これから、一流の冒険者を目指して行く気なら、
その辺が、ネックになって来ると思うわね」
「それは、是非、受けておいた方が良いね」
「そうなんですか、
でも、護衛のクエストってパーティーを組んでいないと、
受けられないんですよね?」
「ロック先輩は、ロンリーウルフっす!」
「あら、そんな事は無いわよ、
商隊の護衛クエストなんかだと、人数で募集を掛けたりするから、
早い者勝ちでパーティーが何組か入ったら、
後は、フリーの個人が何人か入ったりするもの」
「ああ、良く聞く話だね」
「それは、良い事をお聞きしました
近々、そういったクエストがありましたら、声を掛けて頂けませんか?
一度、多人数でのクエストを経験してみたいと考えていましたので」
(そのクエストで、良いところを見せれば、
どこかのパーティーからスカウトが来て、
ボッチから卒業出来るかも知れないしな・・・)
「ええ、良いわよ、
ロック君は、我がギルドの超有望株だから、
私が見繕って声を掛けるわね」
「はい、お願いします。」
「しゃ~っす!」
ロックとウィルは、ギルドに戻ってモモエから受取証を貰うと、
常宿の『ジゴクノカマ亭』へと帰って行った。




