ヴァン・テューター
「さ~て、ギルドへの報告や、
クエストの完了手続きも終わった事だし、
宿に帰るとするか」
「了解っす!」
ロックとウィルは、冒険者ギルドを後にして、
常宿となっている『ジゴクノカマ亭』へと、
帰る事とした。
「ただいま~」
「ちゃ~っす!」
「おや、ロック君とウィル君、
今日は、お早いお帰りだね~」
宿の入り口にあるカウンターに居た
女将のノンレムが2人を出迎えてくれる
「ええ、今日はウィルが手伝ってくれたんで、
早めに帰れました。」
「あざ~っす!」
「そうかい、それは良かったんだね~
夕食までは、まだ時間があるから、
温泉に入ってくると良いんだね~」
「ええ、そうさせて頂きます。
あと、お願いがあるんですが、
今日のクエスト中に、これを手に入れましたので、
アルファさんに、今夜の食事で使って頂けないでしょうか?」
ロックは、アイテムボックスからバフンキノコを取り出すと、
カウンターの上に置いた。
「こりゃ驚いたね~
バフンキノコを見たのは、久し振りだね~」
「ノンレムさんは、バフンキノコを、
ご存じなんですね」
「前に、辺境都市の視察で訪れた上級貴族様が、
材料持ち込みで、ウチのダンナに料理させたんだね~」
「へ~、そんな事があったんですか、
じゃあ、お願いしても大丈夫ですかね?」
「多分、大丈夫だね~、
でも、ロック君とウィル君が食べても、
こんなに大きいんじゃ、かなり余るんだね~」
「ああ、帰って来る途中で、
あちこちに寄って宣伝して来たんで、
誰か食べに来たら、ご馳走してあげて下さい。」
「分かったんだね~」
ロックは、女将のノンレムにバフンキノコを預けると、
ウィルと一緒に地下洞窟温泉で、一日の汗と汚れを落として、
魔力と疲れを癒す事とした。
「うん?ウィルのヤツ、どこに行ったんだろ?」
ロックは、男湯の入り口辺りまでは一緒に居た
ウィルが見当たらないのに気付くと、首を捻った。
「まあ、俺が、ここに居るのは分かってるんだから、
その内に戻って来るよな、先に入って待ってよ」
ロックは、先に入ってウィルを待つ事にすると、
洗い場で、魔導具の『洗い布』を使って体をキレイにしてから、
温泉へと浸かった。
「ふぃ~っ、この温泉に浸かると、
いつも、体がリセットされる気がするな」
「ただいま~っす!ロック先輩、ただいま~っす!」
「おう、ウィルお帰り、
今まで、どこ行ってたんだ?
温泉の入り口ぐらいまでは、確か一緒に居たよな?」
「はい!ロック先輩と、男湯に入ろうとしたところ、
『ハ~フYOU?』の方に、知り合いの気配を感じたんで、
挨拶しに行ってたっす!」
「へ~、ウィルに、そんな知り合いが居たとは知らなかったな」
「前に『ハ~フYOU?』を、見学に行った時に知り合ったんっす!
ロック先輩と同じ、土魔法の使い手で、
ヴァン・テューターさんって方なんっすけど、
ご紹介するっすか?」
「いや、折角のウィルの申し出だけど、
俺は、この宿に来た時から、『ハ~フYOU?』とは、
一切係わらないって、決めてるから、
遠慮しとくよ」
「そうなんっすか、良い人なんで、ちょ~残念っす」
「俺の一族の掟で、
『ハ~フYOU?』と係わるべからず。ってなってるから、
仕方の無い事なんだよ」
「一族の掟じゃ、仕方が無いっすね」
「そうそう」
ロックとウィルは、温泉に浸かって疲れと魔力を回復したので、
いよいよ、食堂に行ってバフンキノコを味わう事とした。
「いらっしゃい、ロック君、ウィル君、
今日は、珍しい食材を提供してくれて、ありがとう
腕にヨリを掛けて調理するから、楽しんでくれよな」
ロック達が食堂の入り口を入ると、
ノンレムの亭主で、食堂のコックを務めるアルファが出迎えた。
「ありがとう御座います。アルファさん
こちらこそ、突然の、お願いをして申し訳ありませんでした。」
「しゃ~っす!アルファさん、しゃ~っす!」
「いやいや、バフンキノコなんて珍しい食材は、
王都の一流レストランのシェフでもなければ、
人生の内で一度扱えるかどうかってぐらいの物なんだから、
そんな、お願いなら大歓迎さ」
「そう言って頂けると助かります。」
「じゃあ、さっそく調理を始めるけど、
料理の種類の方は、俺に任せてくれるか?」
「はい、俺達じゃ、何で食べれば良いのか分からないので、
アルファさんに、お任せします。」
「しゃ~っす!」
「ああ、任されよう!」
アルファは、そう言うと厨房の方へと入って行った。
「ロック先輩、どんな料理が出て来るのか、ちょ~楽しみっすね!」
「そうだな」




