余禄(よろく)が主力
「『トルネード』っす!」
ボタンボアは、ウィルにサクッと倒して貰って、
ロックは、ボタンボアが掘り返していた場所を、
覗き込んで見た。
「やっぱり・・・」
そこには、見覚えのある黒い物体が見えている
「『軟化』『掘削』『抽出』っと、
おお、さっきのバフンキノコと同じぐらい大きいな、
しかし、ウィル、このキノコは幻じゃ無かったのか?」
「その筈なんっすけどね、
一つ見つかるだけでも美食家たちが大騒ぎするっすから、
こんな、立て続けに見付かるなんて、ありえないっす。」
「そうなのか、
まあ、俺達は得したんだから、
その辺の検証は後回しにして、
クエストに必要な分と、アンラックさんに届ける分の、
ボタンボアを集めちゃうかな」
「了解っす!」
「「・・・・・。」」
あれから10分後、ロックとウィルの視線の先には、
何やら、地面を熱心に掘り返している、
ボタンボアが見えていた。
「ウィル、やっちゃって来てくれるか」
「了解っす。」
ウィルは、気配を殺しながら獲物に近づくと、
三度目の魔法を使ってボタンボアを仕留めた。
「一体全体、こりゃ、どういう事なんだろ・・・?」
そして、三度ロックの手には、
魔法で地面の中から掘り出した
バフンキノコが抱え込まれていた。
「こりゃ、もう偶然とかじゃ無いっすね」
「ああ、この森の中でバフンキノコが、
大量に繁殖してるって考える方がシックリ来るよな」
「どうするんっすか?ロック先輩」
「取り敢えず
今日は、このままクエストを続けてみるとしよう
後は、その結果によって相談するとしようぜ」
「了解っす!」
結局、その日、ロックとウィルは、
10頭のボタンボアを狩る間に、
8個のバスケットボール大のバフンキノコを入手した。
「こりゃ、ギルドでモモエさんに報告した方が良いな、
このまま、ボタンボア達に食べさせるのも、
勿体ない話だからな」
「そうっすね、自分らは、
もう十分に収穫したっすからね」
「おう、水妖精王様にも、
丸々1個プレゼントしようぜ」
「あざ~す!ロック先輩、あざ~す!
水妖精王様も、ちょ~喜ばれると思うっす。」
冒険者ギルドで受けたクエストと、
アンラク食堂に納入するのに、
必要なノルマを達成したので、
ロックとウィルは、ヒデブの街に引き上げる事とした。
「ただ今、帰りました。」
「こんちゃ~っす!」
ロックとウィルは、いつもの様に、
街の入り口で警備に当たっている、
ペペロンに声を掛けた。
「おう、ロックとウィルか、
暗くなる前に帰れて良かったな」
「はい、獲物に恵まれたお蔭で、
この時間で帰って来られました。」
「大猟っす!」
「そりゃ良かったな、
これも、日頃の、お前らの行いが良いからだろうな」
「ハハハ、ありがとう御座います。」
「あざ~っす!」
「いや、ホントだぜ、
お前らは、いつも礼儀正しく挨拶してくるし、
規則正しい生活を送っているしな、
俺達の中でも評判が良いんだぜ」
「そうなんですか、
じゃあ、今後も変わらずに過ごした方が良さそうですね、
ペペロンさんには、良いアドバイスを頂いたので、
一つ耳寄りな情報を、ご提供しましょう。
実は、今夜、『ジゴクノカマ亭』の食堂で、
滅多に食べる機会が無い、珍しい食材を使った料理が食べられますので、
行って見た方が良いですよ」
「ほう、そんなに珍しい食材なのか?」
「はい、聞いた話では、
王都でも、上級貴族の方々ぐらいしか口に出来ないそうです。」
「それじゃ、とてもじゃないが、
俺達の給料じゃ食べられない値段だろ」
「いえ、食材は俺が手に入れた物を提供しますから、
食堂で、『ロックに聞いた。』って言って頂ければ、
格安で出して頂く様に、
コックのアルファさんに頼んで置きますよ」
「おお、マジか!分かった。
ボンゴレ達にも声を掛けて行ってみるよ」
「ええ、皆さんで是非いらして下さい」
ロックとウィルは、ペペロンに別れを告げると、
次に、冒険者ギルドへと向かい、
クエストの完了報告をする事とした。
「こんちは~」
「ちゃ~っす!」
冒険者ギルドの、入り口のドアを潜った2人は、
受付カウンターに腰掛けている、モモエに声を掛けた。
「あら、ロック君にウィル君じゃない、
今日は、グレートラビッツとボタンボアのクエストを、
受けたのだったわね、上手く行ったの?」
「ええ、問題無く完了しました。」
「バッチリっす!」
「それは良かったわ、お疲れ様でした。」
「それで、クエストは上手く行ったんですけど、
その過程で、あるモノを発見してしまいまして、
モモエさんに、ソレを確認して頂きたいんですけど、
どこか、人目に付かない場所を、用意して頂けますか?」
「ここでは、見せられないモノなの?」
「ええ、聞いた話では、
大変、貴重なモノらしいですね」
「あら、それは楽しみね、分かったわ、
今、ギルドの会議室を押さえてくるから、
ちょっと待っててくれる?」
「はい、お待ちしてます。」
「了解っす!」




