ウサギ狩り
宿を出たロックとウィルは、
ハバラ村のアンラク食堂に納める肉を入手する為に、
食肉用の魔獣を狩りに出掛ける予定なのだが、
その前に、やっておきたい事があったので、
ロックは、ウィルに告げた。
「まずは、ついでに受けられるクエストがあるかを、
確認するから、冒険者ギルドに顔をだすぞ」
「了解っす!」
ロックはウィルを伴って、冒険者ギルドを訪れると、
クエストが貼り出してある掲示板の前へと向かった。
モモエは、今日は遅番の様で、
受付カウンターには姿が見えなかった。
「え~と、グレートラビッツとボタンボアは、
クエストが出ているみたいだな、
じゃあ今日は、その2種類を中心に狩るとするか」
「そうっすね!」
ロックは、掲示板からクエスト用紙を剥がすと、
受付カウンターに持って行って手続きをしてもらう。
「お早う御座います。ロックさん、ウィル君、
今日は、モモエさんが遅番ですから、
私バウワが担当させて頂きますね」
そう言って、クエスト用紙を受け取った受付嬢は、
犬系獣人の女性であった。
「はい、宜しくお願いします。」
「しゃ~っす!」
「え~と、グレートラビッツとボタンボアの肉を、
各2頭づつのクエストとなりますが、
この魔獣達は、草原と森の別々の生息域で住み分けている為、
移動時間が掛かると思われますが大丈夫でしょうか?」
バウワ嬢は、それぞれの魔獣の生息域が、
ヒデブの街から、西と東に分かれてしまっているのを、
心配して聞いて来た様だ。
「ええ、狩りは得意なんで、
1頭当たりに、それ程時間が掛からないから大丈夫です。」
「自分も頑張るから、だいじょぶっす!」
「そうですか、それではクエストの手続きを進めますので、
少々お待ち下さいね・・・
はい、それぞれのクエストを登録致しましたので、
こちらの控えを、ご確認下さい。」
「はい・・・大丈夫みたいです。」
「では、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
「ありがとう御座います。
行って来ます。」
「きゃ~っす!」
ロックとウィルは、冒険者ギルドを出ると、
街の南門へと向かった。
「お早う御座います。カルボさん」
「しゃ~っす!」
ロックとウィルは、南門で警備に当たっている、
カルボに声を掛けた。
「おう、ロック、ウィル、お早う
今日も、朝から元気だな」
「ええ、冒険者は体が資本ですからね」
「ファイト一発っす!」
「ハハハ、違ぇねぇな、
朝から元気が無いなんて言えば、
命に係わるからな」
「そうですね」
「今日は、クエストで出掛けるのか?」
「ええ、草原と森で魔獣狩りですね」
「おいおい、草原と森じゃ、
正反対の方向じゃねぇか、
移動時間を取られ過ぎて、無茶とかするんじゃねぇぞ」
「はい、田舎育ちですから、
長距離を歩いたり、狩りは得意なんで大丈夫です。」
「そうか、まあ、お前は新人にしては、
いつも慎重だから、その辺は大丈夫かな、
ウィル、お前もロックが無理をしそうだったら、
ちゃんと注意するんだぞ」
「了解っす!」
ロックとウィルは、街の南門を出ると、
まずは、東の草原にいるグレートラビッツを狩る事とした。
グレートラビッツは、その名の通りウサギに似た魔獣で、
子牛程のサイズの、鋭い前歯を持ったウサギが、
持ち前の跳躍力を生かして、
もの凄いスピードで飛び掛ってくるのだが、
その動きは直線的なので、ある程度の動視態力と反射神経があれば、
攻撃を躱すのは容易であった。
「ロック先輩、あっちの方に複数の気配があるっす。」
草原に入ると、直ぐにウィルが告げて来た。
「ああ、俺の気配察知にも反応があるな」
ロックもウィルも、
魔獣の気配を感じ取るという点では同じものの、
それぞれが、得意とする魔法によって、
その感じ方に違いがある、
土魔法を得意とするロックは、地面からの振動を感じ取り、
水魔法が得意なウィルは、生物の水分を感じているので、
この先、ゴースト系の魔獣に遭遇すると、
苦戦するかも知れなかった。
2人が気配を殺して近づいて行くと、
10匹程のグレートラビッツの群れが、
牛の様な魔獣の死体を囲んで、
ガツガツと食べているのが見えた。
「あいつら、あんなナリをしてるけど、
ガッツリ肉食なんだよな」
「そうっすね」
「まあ、あの大きさの体と、
運動性能を維持する為には、
草食じゃ持たないもんな」
「ロック先輩、魔法で狩るっすか?」
「ああ、もう少し近づいたら、
まずは魔法で先制して、それから剣で何匹か倒すよ」
「了解っす!」
「ウィルは、群れの右側を狙ってくれるか、
俺は、左側に魔法を飛ばしたら、
剣に切り替えて突っ込むから、
その時、ウィルは後方で待機しててくれ」
「了解っす!」
ロックとウィルは、気配を殺しながら、
もう少しジリジリと近づいていって、
魔法で狙い易い距離となったところで、
あらかじめ決めてあった手信号で、
タイミングを合わせる様にロックが指示を送った。
3・・・2・・・1・・・ゼロ!
『バレッツ!』×3
『ウォーターカッター!』×2
2人の視線の先で、
3匹のグレートラビッツの脳が弾け飛び、
2匹の頭がボトリと落ちた。
「よし!」
突然に、命を散らした仲間に驚いた
他のグレートラビッツ達が動きを止めたのを見たロックは、
剣を鞘から抜き放つと、
獲物に向かって猛スピードで走り始めた。




