冒険者登録
ロックが、モモエに付いて受付カウンターへと向かうと、
他の受付嬢らが、
やけに、モモエの動向を気にしているのに気付いた。
「あの~、モモエさんて、
このギルドではベテランなんですか?」
「ロック様、
それは、遠まわしに私がオバさんだと、
ディスっているのでしょうか?」
「い、いえ、
そういう事では無くて、
やけに、モモエさんが注目されてると思ったんですよ、
ねえ?」
ロックは、モモエの隣に座っていた
受付嬢に同意を求めた。
「は、は、は、は、はい!
モモエさんに目を付けられると、
次の日から、その子の席にはヌイグルミが座ってると、
言われています!」
「ぬわんですって!?」
「ひぃぃぃぃぃっ!」
「ま、まあまあ、
モモエさん、それだけ冒険者ギルドに対する、
影響力があると思われているって事ですよ」
「ああ、それでしたら、
あるかも知れませんわね、
我がホルスタイン家は、古くより冒険者ギルドの運営に携わり、
ギルド・マスターを務めた者も居たと聞いて居りますわ」
「へ~、そりゃ凄いですね」
「一族には、
英雄様が、冒険者登録をした時に、
担当した者も居たんですのよ」
「英雄って、勇者とは違うんですか?」
「あら、ロック様はご存じにならないのですか?
勇者とは、魔王を討伐した者のみに、
与えられる称号なのですが、
そうそう、魔王が現われる訳も御座いませんし、
現れられても困ります。
なので、魔王討伐に匹敵する様な働きをして、
世界に貢献した者に与えられる称号が、
英雄なのですわ」
「おお!
では、英雄は、勇者に匹敵する存在って訳ですね、
じゃあ、同じ一族のモモエさんに受け付けて貰ったら、
もしかすると、俺も英雄に成れるかも知れませんね」
「そうですね、
ロック様も、英雄を目指して頑張って下さいね、
では、こちらの登録用紙に記入をお願い致しますわ」
「はい、分かりました。」
ロックは、登録用紙を受け取ると、
名前、出身地、職業適性、スキル、魔法などを記入してから、
モモエに提出した。
「はい、では記入に不備が無いかを、
確認させて頂きますわね、
え~と、ホワタ村のご出身で、
職業適性が農夫で・・・あら?
ロック様は、戦闘向きのスキルを持たれていないのですか?
魔法も土魔法の様ですし・・・」
「ええ、無いんですよ」
(やっぱり、そこがネックになるのか・・・)
「職業適性が農夫の方で、
冒険者と成られる方は、結構いらっしゃるのですが、
そういう方達の場合は、
剣や槍などのスキルを持っていたり、
火魔法や風魔法を持たれているんですよね、
ロック様の様に、
スキルも魔法も戦闘に向いていらっしゃらないとなると、
非常に危険だと思われるのですが・・・」
「え~と、一応、ホワタ村に住んでる、
元A級冒険者パーティー『アイアン・エッジ』に居た
ジョセフさんからは大丈夫だと言われてるのですが・・・」
ロックは、ボンゴレの忠告を聞いて、
アイテムボックスのダミー用にしているカバンから、
ジョセフより預かった手袋を取り出して、
カウンターの上に置いた。」
「まあ、ジョセフさんが?
少々(しょうしょう)、その手袋を拝見させて頂きますわね」
モモエは、カウンターの上の手袋を手に取ると、
魔力を流してみる、
すると、手袋に刺繍された
『アイアン・エッジ』のエンブレムの下に、
ジョセフの名前が浮かび上がった。
(あの手袋には、
あんな、仕掛けが施してあったのか・・・)
「確かに、ジョセフさんの手袋ですわね、
あの方の、お墨付きがあるのであれば、
ロック様の実力に問題は、ありませんわね、
分かりました。
冒険者登録を受け付けさせて頂きますわ」
「ありがとう御座います。」
「いえいえ、あの方の認められたロック様なら、
将来、冒険者ギルドに貢献して頂けるものと、
確信いたしますから、
こちらこそ、『ご登録ありがとう御座います。』と申し上げますわ」
こうして、懸案であったロックの、
冒険者登録も、ジョセフのお蔭で無事に終了した。




