国民食
「この料理は、もしかしてカレーですか!?」
「おっ、ロック知ってるのか?」
「良く、ご存じですねロックさん、
ザドス王国では、王都ぐらいでしか、
食べられない料理なんですが・・・」
「え、ええ、行商の小父さんに、
聞いた事があったんですよ」
(やばい、やばい、こっちの料理じゃ無かったよな)
「ナン・カレーの様ですが、
ライス・カレーは無いんですか?」
『アンラク食堂」のカレーには、ナンが添えてあった。
「ホントに良く、ご存じですねロックさん、
このカレーという料理は、
隣のコウガ王国の国王で、美食家として名高いサスケ陛下が、
国内の農家に、数々のスパイスを栽培させて作った料理なのですが、
コウガ王国では、主にライス・カレーとして食べられているそうです。」
(おおっ!グッジョブだぜ、サスケ陛下)
「この国では、ライス・カレーは食べられないんですか?」
「ええ、ライスにする、
コメと呼ばれている穀物は、
コウガ王国と、マッスル王国でしか栽培されていないので、
殆どが国内で消費されてしまうのですよ」
「殆どがって事は、
この国でも食べられる可能性があるのでしょうか?」
「ええ、私が料理の修行をしていた王都では、
ライス・カレーを食べさせる店があると聞いた事があります。」
「それは、何としても王都に行かねば!」
「そんなに、ライス・カレーとやらが食べたいのか?ロック
俺的には、このナン・カレーで十分美味しいと思うがな」
「ええ、確かにナンも美味しいですが・・・じゃなくて、
美味しいと、小父さんが言ってましたが、
ライスは、それ以上と言ってたんですよ」
「へ~、そうと聞いちゃ、
確かに、俺も食べてみたくはなるが、
この、ナン・カレーを超える味とは、
想像も付かないな」
「王都では、ナン・カレーの方が好きと言う人の方が、
多かったですね」
「ああ、この国の主食はパンですから、
そう言う人の方が多いかも知れませんね」
「何言ってんだ?
ロックだって、この国の人間だろ」
「え、ええ、確かに、そうなんですが、
小父さんから、美味しいと聞いた所為か、
俺は、猛烈にライスで食べたいんですよ」
「それ程までに、ロックさんが食べたいと仰るなら、
私と一緒に、小麦粉を使ってチネリませんか?」
「いえ、それだけは勘弁して下さい。」
ライス・カレーでは無かったものの、
前世以来のカレーは十分に美味しくて、
ロックは、ドボルと共に舌鼓を打った。
翌朝の朝食メニューも、
食堂の店長アンラックが腕を振るって、
トーストや、目玉焼きとカリカリに焼いたベーコン、
シーザーサラダに、コーンポタージュ・スープなどの、
こちらの世界では余り見ない洒落た料理の他、
ドボルお薦めの、
ヨグルトを使った健康食を楽しんだ。
ただし、ロックの予想に反して、
ヨグルト健康食は、プレーン・ヨーグルトでは無くて、
甘みが強い、ブルーベリー・ヨーグルトの様な味わいであった。




