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世界探求者はわりとチート!?  作者: 和
第一章 カーラント王国編
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魔の扉




「俺は…どうなって…っ!!ここは…そうだ、思い出した…夢で見たあの部屋だ」


気がつくと燈は白い部屋にいて、そこにある椅子に座っていた。


「やあ、目覚めたみたいだね。まったく…もうここには来ないように言ったはずなのに…しかも、運の悪いことに『彼』が目覚めてしまったこの時に」


いつの間にか対面に座っている金髪碧眼の優男が言う。


「お前は…?」


「ひどいなぁ、君を助けてあげているのは僕なんだよ?それに、今だって君が死なないように『彼』の力を抑えてるっていうのに」


そういって男は俺の背後に目を向ける。つられて俺も後ろを見るとそこには黒く禍々しい雰囲気を放つ扉がある。


「これは、一体…?」


「それは魔の扉だよ。誰もが持っている悪意をコントロールする扉だ。けれど、君の場合は…その奥に魔王が存在している」


いや、そもそも『彼』を魔王と呼ぶべきなのかは怪しいところなんだけどね? と、言いながら男はテーブルに肘をつき、紅茶を飲む。


「いつの間に紅茶なんて…」


「まあまあ、それよりも大切なことがあるだろう?いいかい、ここの主は君だ。けれどこのままだとその魔王の扉が開いて主導権が君から魔王に移ってしまうかもしれない。さあ、どうする?」


「どうするって…そんなの、止めるに決まってるだろ!?というか、なんでお前がそんなことを知ってるんだ?」


燈は椅子から立ち上がり男に詰め寄る。


「ちょ、待って待って!…まったく、君と言い表のお嬢さんたちと言い、乱暴だな…。僕の名前はアレクセイ、初代勇者だ。…といっても別に僕自身がすごいわけじゃなかったんだけどね」


「お前が…初代勇者?何を言ってるんだ?」


燈がアレクセイの胸元を掴みギリギリと力を込める。


「まあそうなるよねぇ…でも、説明に時間をかけている場合じゃないんだよ。君の身体は今とても危険な状態だ。今は僕が抑えていられるけど、それがいつまで続くか、これからどうなるかはわからない。覚えているかい、君が何をしたのか」


燈に胸元を掴まれているにも関わらず飄々とした様子を崩さないアレクセイに苛立つが、燈は意識を失う寸前の出来事を思い出す。


ーードラゴンゾンビをなんかよくわからないけど頭に浮かんできた魔法で倒して…それで…そうだ、ルイスと戦っていた…はずなのに、俺はそれを客観的に見ていたんだ。


燈は自分がどんな状態だったのかを思い出す。思わず手から力が抜け、その間にアレクセイは服装を整える。


「そう、君の身体の主導権が一時的とはいえ『彼』に移ってしまった。君があの魔法を使ってしまったから」


アレクセイの瞳が燈に強く突き刺さる。彼の瞳には燈の驚愕の表情が映されていた。


「あれは、何だったんだ?急に頭の中に浮かんできたあの魔法は」


「あれはね、禁呪とも呼ばれる魔法だ。自分の精神を削り、とてつもない力を手に入れる外法。精神を削ってしまった結果、君の器に空きが生まれたんだ。そしてそこに…」


「お前が言う『彼』とやらが入り込んだってことか」


燈の言葉を聞いてアレクセイは頷く。


「ああ、そういうことだよ。『彼』が禁呪を使うように誘導するなんて考えていなかったんだ」


アレクセイは今までの飄々とした様子はなりを潜め悔しそうに俯く。

おそらく彼は今までの自分の知らないところで働いていたのだと思うと、申し訳なく感じる。


「それで、俺はどうしたらいいんだ」


「まずは今の状態を理解しなければいけない。それから…魔王の扉を開く。『彼』に会うんだ。会って、どうにかする。それしか今は手がない」


「どうにかって…なんてアバウトな…」


もっと具体的なことは言えないのか、と燈は言うが、アレクセイは首を横に振った。


「悪いけどそれしかできるアドバイスがないんだよ」


ため息をついて椅子に座るアレクセイ。

燈も落ち着きを取り戻し、元の椅子に座り直す。


「…わかった。やってやるよ。どのみちやるしか方法はないんだ。だったらその魔王とやらの所に行く」


しばらく黙り込み、考えた上で答えをだす燈。自分に情報が足りていない以上、アレクセイに従うしかないと判断したのだ。


「そうかい。それじゃあ、扉の前に立ち、開くといい」


燈は立ち上がり、扉の前に立った。


黒く禍々しいその扉。前に立つとその異様な雰囲気が伝わってくる。恐怖で足が震える。だが、進まなければならない。待ってくれている人がいるのだから。


燈は深呼吸をし、ドアノブへと手を伸ばす。

両開きの扉をゆっくりと開く。


ーーヒュオオオォォ


黒い渦のようなものがそこにはあった。いつでも入ればいいとばかりにそこにある。けれど俺を吸い込もうとしているような気配がある。


「…行ってやるよ。俺のもんは何一つ渡してやるもんかよ」


燈は自分を奮い立たせるように呟き、その黒い渦へと足を踏み入れていった。


「…ふう、これでどうなるかはまったくわからないな」


アレクセイは椅子に座り、紅茶を飲む。

燈が無事に戻ってくることを願いつつ。



遅くなってすみません。

他の小説を書いていたものですから…。

暇でしたら小説検索で、「色をりをり」と検索してみてください。

苦手な恋愛ものに息抜きとして挑戦させていただいてますので。

読んでいただいてありがとうございました。


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