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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第六章 開戦
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遅すぎる救世主?

視点はソウナさんです。



 リクの胸が貫かれてはいなかった。だけど白夜の手はしっかりと中へと沈んでいる。

 その手が引き抜かれた時。白夜は何かの光を抜き取り、そしてリクが目を閉じて眠ったように地面へと倒れてしまった。

 とりだした白夜は、何を思ってか、光……ではなく自分の手を見ていた。


「白夜さん、貴女一体何をしたのよ!?」

「だからぁ、余所見すんなっての!!」


 リリカの言葉が急に鋭くなったかと思ったら私は剣ごと弾き飛ばされてビルの瓦礫へとぶつかっていた。


「――ッ!」


 肺が押しつぶされたような感覚を覚えながら、私は何とかフラフラする足取りでその場に立つ。


『ソウナ、大丈夫か!? ここは退かないとソウナまでやられてしまうぞ!?』

「平気……よ。みんな、私の事は殺せないみたいだから……」


 私の言葉通り、いつの間にか出血多量で気絶をしているアキに応急処置をして血を止めた白夜を見ていた。ハナもすでに気絶をしているようだ。

 つまり今この場で意識があるのは私だけ……。

 剣を杖代わりに立っていると、リリカはその手に持つ斧を消して手を頭の後ろで組んだ。


「ねぇ死神さん? それ、もしかしなくても……」

「……そう。……これが元は素人であったリクの力の根源、〝聖地〟」


 力の……根源、〝聖地〟? あの光が?


 私の頭の中はグチャグチャになっていた。そして、一つ一つ丁寧に整理していく。


 白夜が〝聖地〟であると言う光。あれがそうなのだとしたら……待って、確か 普通の人間は神とは二体まで(、、、、)しか契約ができないのではなかったか!?

 今のリクは〝聖地〟があったから神と契約できていた。

 つまり気絶した理由は〝聖地〟を抜いた反動と神三体との契約による負担!?

 まず〝聖地〟と言う物が抜く事ができるだなんて分からないが、少なくとも白夜はそう言う事に詳しい。あながち嘘でもなさそうだ。


 そうするとマズイ。あの光を早くリクに戻してあげなければ……。


「そう。じゃあ、もうこいつは要らない?」

「……少し私のが変わりに喰われた。……でも要らない」


 要らない? そうか。ヘレスティアは〝聖地〟が欲しいのであって、その器であるリクは……。

 それはダメだ!!


「〈風土雷火〉!!」


 自分の残されたほとんどの魔力とディスの半分以上の魔力を合成させ発動。四色の光が体から出て来ては散り始める。

 増幅された魔力が体内に留まり、徐々に膨れ上がって行く。

 ディスの魔力を半分以上使っているためにほんの少しの時間だけで自分の身体能力とディスの破壊力が増して行くのが分かる。


「貴女、まだ動けたの? あたしもう飽きたんだけど?」

「リク君を……殺させはしないわッ」


 地面を蹴った。

 ヒビが入り、壊したその場から剣を構えてリリカへと振るった。

 まるでつまらないと言った風に斧も出さずに紙一重で避けていくリリカ。

 私の振るう速度はわざと一定のままにしておき、私は剣を片手に魔法を放った。


「〈武盾〉!」


 防御魔法で壁を作った。その壁にリリカが当たり、後ろに下がれない事に気がついたときには、私が今できる一番速い速度でディスをリリカの足へと突き刺した……のだが。


 ガキィッと鈍い音が鳴り、剣がリリカの体に突き刺さる前に何かに防がれたのだ。


「ッ!?」

「なんだかいきなり速くなるし、もっと楽しめそうじゃない!」


 リリカの瞳がまるで獲物を見つけた虎の如く縦細く動いたかと思うと、腹へとリリカの拳が私の体を突き破るようにしてはいっていた。


「が――ッ」


 飛ばないように全ての衝撃を与えると言う奇妙な拳を繰り出したリリカは武器を喚ぶための言葉を言い放った。








「我が名は雑賀(、、)。荒れ狂う風よ……舞え。〝ウィングゲヴェアー〟」








 リリカはその手に斧……では無く、両手にニ丁の自動(オートマチック)の短銃を取り出していた。怪力女には似つかわしく無い武器だ。

 だけど、そんなことよりも、今この女は自分の名前である場所の所をなんと名乗った?

 そんな疑問を抱いたままフラフラと後ろへと後退する私に、リリカは静かに言った。


「面白いでしょう? あたし、武器マニアでもあるのよぉ。妖力で他人の武器が奪える(、、、)魔法があってね? この銃、今さっき手に入れたのよぉ。正門に出てきた男が持ってたんだけどぉ、きゃはっ。奪っちゃったぁ」


 奪った……?

 他人の武器を……?

 一生を共にする武器を……?

 自分の半身である、武器を……奪った……?


 そんな現実、あり得ないでしょう……?


「きゃははっ。どうしたの? もしかしてこの銃の持ち主と知り合いだったぁ? ごめんねぇ? そいつ八つ裂きにしちゃったぁ。きゃはははははっ」



 嘘だ……雑賀が……天童雑賀が……死んだ……?

 そういえば、白夜が真陽を殺したと言う事もさっき……。






 ――ガガンッ!






 轟く銃声。





「あ……ぁ……」


 体に力が入らない。いつの間にか〈風土雷火〉が切れている。おそらくお腹に一発貰ったからその衝撃で魔力を意識し続けるのを忘れて無意識的に解いてしまったのだろう。

 そしてもちろん。魔法でほぼ全部の魔力を使った私に避けえるだけの力も、治すだけの魔力も残っては居なかった。

 撃たれた場所は右胸下と左腹。

 体に力が入らなくなって、剣を杖にして何とか倒れ無いように支えたが座りこんでしまった。

 再び立ち上がろうとするも足が震えて立てない。上半身に力も入らない。


 このままでは私まで……ッ。


「あらぁ? もう魔力無いじゃなぁい。もうちょっと耐えて欲しかったんだけどぉ」

「……リリカ、後はやっとく。……リリカはハナとアキを連れてって」


 白夜が言うと、リリカが本気で嫌そうな顔をした。


「何あんた。あたしの楽しみ奪おうって言うの?」

「……違う。……外門にはまだ戦ってる奴等が居る。……そっちに行った方が楽しい」


 するとリリカは「あ、そっか」と言うように両手をポンッと合わせてハナとアキをそれぞれ片手で持った。


「じゃあ任せるわぁ。あたしはこいつらおいてから存分に楽しむとするからぁ」


 不敵に笑ったリリカは、白夜にそう言い残してこの場を立ち去った。


 助かった?

 いや、まだ最大の敵が目の前に居るッ。


「く…………〈セイント……ウルフ〉!」


 何とか聖獣である狼を一体召喚し、白夜に襲わせるも、白夜は無言の元、一突きで聖獣を串刺しにしてしまった。


「……まだ魔力残ってる?」

「もう……空っぽ……よ……」


 為す術がない。


「……そう。……じゃあ私がソウナの意識を破壊してあげる」


 銃槍を闇に溶かし、静かに進んでくる白夜。

 今の私には死神のようにも感じ、自然と力が入らないはずの足や腕が震えてくる。

 でも、強気なのは変わらない。隠すんだ。自分が怖がっている事を隠すんだ。


 そして掌をかざされる。


 掌で目前が見えない私は、何とか逃げようと必死に体を動かすがピクリともしない。


「……さようなら。……ソウナ。〈ダーク――」




 私には何が起きたのかわからなかった。




「一歩、二歩と徐々に下がりなさい♪ じゃないと首が飛ぶわよ?」



 声が聞こえる。それもすぐ近くだ。

 そしてこの声は……。



「……【自由な白銀(フリーダムシルバー)】【終焉を知らせる者(ラグナロク)】……」

「カナ……さ……ん……?」


 視界が開けた。

 白夜が掌を拳へと変えて自分の手前まで持って行ったのだ。


 開けた視界ではその白夜の首元へとギリシャ数字の舞う白刃の大太刀と、巨大な刀身を持つ異界の文字が書かれている大剣だった。


「……夫婦揃って、何の用?」


 一歩二歩と下がった白夜が並んで立つ二人の最強に問いかける。

 口を開いたのは立鮮の方だった。


「いや何。カナが助けれる人が居るから助けに行こうだなんて言うから、こうして戻って来たんだよ。あぁ、君とは初対面だから戻って来たと言っても分からないか。……戦うか? 破壊神〝シヴァ〟」


 破壊神!?

 白夜は、破壊神である〝シヴァ〟の力を持っていると言う事!?


「……私が破壊神だって知ってるなら、邪魔をしない方が身のため」


 だけど、白夜が言っている事は少し違うようにも感じる。

 今の台詞ではまるで白夜自身が破壊神だと言う事……。どうして?


 そんな私の考えは余所に、目の前に立つ二人は一歩も動くことなくただそこに武器を携えて黙って待っていた。

 どく気配のない二人を見て、先に折れたのは白夜の方だった。


「……時の神(、、、)邪神使い(、、、、)。……同時に戦うのは分が悪すぎる。……退く」


 白夜は後ろを振り向き、ゆっくりとした足取りだが静かにこの場所から去って行った。


 残ったのは私、気絶しているリク、カナ、立鮮。


 だけど。


 迫りくる眩暈。

 リリカの拳や銃による出血や安心した事によって感じていなかった疲労が一気に襲ってきたからだろう。


(お礼を……言わない、と……)


 必死に意識を保とうとしても、段々と瞼が落ちて、最後には……。




 水色のゲートのようなモノを見て、私の意識も途切れてしまった。


次は終章です。

そのあとに幕間入ります。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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