決別
ニ角の角を持つ女。その角は中央らへんでそれぞれ曲がっていて悪魔の角のように見える。
「あいつ……鬼族!? 何でこんな所に鬼族が居るの!?」
「鬼族ってなんですか?」
ボクは驚いているアキに説明を求めた。
それからアキは眼鏡にまたあのとても読めないほど小さい文字列が現れ、説明してくれた。
鬼族とはずっと北にある冬国に密集して住んでいる一族。
人よりも強靭な筋力を持ち、知識はそれほど変わらない。
そして鬼族は魔力を持たない。変わりに妖力という力がある。
アキから説明されたのはその程度だ。そして、この鬼族の女の人の名前はリリカ・オーガだと言う。
「まったくぅ。王もこんな家畜なんかよりもあたしを使ってくれたらいいのにぃ」
「私の……質問……に……ッ」
「家畜は家畜らしく黙ってなさぁい」
「あぁ!!」
リリカがハナの背中に刺さっている無骨な斧を抜き取りそれからまた振り上げて……。
「ハナさん!? 〈二のた――」
「〈神速〉!」
ボクが助けようとする前にアキが地面を蹴ってリリカへと攻撃――では無く倒れて動けずに居るハナを抱えてその場を立ち去ろうとした。
「!?」
だがそのハナを抱きかかえて離脱しようとした時に足を掴まれ、その場で止まってしまう。
「右足もぉらったぁ。きゃははははははは」
「〈ウィングサルト〉!」
斧を振り下ろした。
アキはもう左足の足でその斧を撥ね退けようと蹴りを入れた、が――。
――蹴りが斧に当たったのに斧は全くびくともせずにアキの右足を切断した。
「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああッッ!!!!」
「あぁん! その声たまんなぁい!」
自分の体を抱くようにして喜びを伝えるリリカ。
「アキさん!!」
「今すぐに治すわ!!」
ボクとソウナはすぐに武器を構えてそのリリカへと走りだ――。
「逃げてぇ!!」
「「!?」」
アキの叫びに足を止めてしまった。
「あらぁ? まだ壊しがいがあるわねぇ」
そう言ってまた斧を振り上げるリリカ。
ボクはそれを見てまた体に力を入れようとすると、またもアキの止める声が聞こえた。
「逃げて! 私は大丈夫だから!! 鬼族のこいつは私達を殺せるだけの力が――」
「今度は腕にしようかしら? くふぅ、きゃはは!」
斧が振り下ろされた――ガキィィンッ!!
「?」
突然響いた金属音に疑問を持ったリリカ。
蹴りでほんの少しも、数ミリも動かなかったリリカの斧を完全に相殺したのだ。
その犯人は漆黒の長い髪を揺らす少女。その手に持つは漆黒の銃槍。
「……リリカ、守り人を殺す事は王からの命令で許可されていない。……後、ハナも一応は五刑囚。……殺してはダメ」
白夜だった。
「あらぁ死神さん。あたしの至福を奪おうって言うの?」
「……王からの命令」
白夜がその無表情の瞳をリリカへと向けると、リリカは肩を落とした。
「そ。なんでも壊せる貴女があたしの斧を壊さなかっただけでもいいとするわぁ」
リリカは斧を粒子に変換させて仕舞う。
リリカに命令している白夜を見ていると、やっぱり白夜は今まで、とどうしても思ってしまう。
「……あまり驚かない所を見ると、すでにハナから聞かされた?」
「はい。……白夜さんは……ボクをずっと見張ってたんですか?」
ボクはその質問を白夜にしてみる。だけど白夜はその無表情を変えないまま、淡々と答えた。
「……そう」
「ボクを……捕まえに来たんですか?」
「……違う」
白夜が首を振る。捕まえに来ていないのなら、どうしてこの場所に……。
それから、白夜が足に力を入れたことに気がついた。
「……リク。……あなたの聖地、奪わせてもらう」
白夜がその銃槍を一刀の刀に変えて走り出してきた。
「白夜さん……ッ。ルナ、ツキ、シラ!」
ボクは苦虫をつぶして向かってくる白夜へと走り出した。
「リク君!?」
「天使はあたしが玩具にしてあげるわぁ」
「!? 邪魔よ!!」
ソウナはボクを追おうとしてリリカに邪魔をされたようだ。
「ダメ二人とも! 逃げて! 特に白夜はキリを無力化、真陽さんを……殺してるの!!」
ボクは動けずに居るアキの言葉を聞いて、「え」と声を漏らした。
目の前から走ってくる白夜はもう漆黒の刀を振り上げている。
「……防がないと死ぬ。〈闇影〉」
「ッ! 〈二の太刀 雪麗〉!」
白夜の刀が振り抜かれた。身をよじってかわし、カウンター気味にルナで白夜へと彼方を振るう。
それを自然な動作で避けた白夜は蹴りを放ち横薙ぎで切りつけてくる。
避けきれずに刀で応戦し、甲高い音が鳴り響く。
「……やっぱり、今のリクちゃんではまだ無理」
「何の、話ですかッ!」
ガキンッと音を鳴らして一度ボクと白夜はそれぞれ離れ、そしてまた互いに刀を打ち付けた。
「それよりこちらの質問に答えてください! 真陽さんを殺したって、本当、ですかッ!?」
「……本当」
白夜はボクの質問に静かに答えた。
ボクは撃ち合っていた刀に魔力を込めて、感情を少しだけあらわにして刀を振るった。
「どうして、どうしてそんなことをしたんですか!?」
「……命令。……それ以上の理由はいらない。〈黒砲〉」
真陽を殺した。ここにマナが居なかった事はよかったかもしれない。
ボクは黒い波動を避けると、溜めていた魔力を発動した。
「〈フローズン・クリスタル〉!」
「っ!」
急激に冷えた空気。ここら一帯が全て氷に包まれていく。
「……寒い。……壊す」
白夜は刀を地面へと刺すと、そこに魔力が流れた。
「〈ブレイクキャンセル〉」
『なんじゃと!?』
ルナの声が頭の中で響いたとたん、周りに展開されていたボクが放った魔法がガラスの割れる音がして無効化されてしまった。
「なんでッ!?」
「……隙だらけ」
驚くボクに白夜がいつの間にか零距離まで接近。
そして――。
――何も持っていない左手がボクの胸の中央辺りを貫いた。
「かは……ッ」
苦しい、だけど貫かれたような感覚がしない。まるで白夜の手がボクの体の中へと侵入したような感覚。
これは、一体……?
「リク君!?」
「あん。余所見するなんて許せないわぁ」
ソウナがボクの名前を呼ぶも、ボクは胸の中で動く異物に対して吐き気を覚えていた。
『リク!? これはッ!?』
『このて、まさか!?』
『リク!! 今すぐに白夜から離れて!!』
三人の声が聞こえてくる。だけどボクはまるで縫いつけられたようにして指の一本も動く事が出来ない。
「何……を……」
白夜に何かを掴まれた。
それは丸い物のようで、冷たい白夜の手がそれを手探りで見つけてしまった。
「……さようなら、リクちゃん」
白夜が耳元で囁いた。
それを合図に、白夜はボクの胸の中へと沈んでいた白夜の手が思いっきり引き抜かれた。
ボクは声もあげられずに、その白夜が引き抜いたモノを見た。
白い、光。だけど、どこかで見た事があるような光。
冷たかったり、熱かったり、痺れたりするような光。
めまいがする。
吐き気がする。
目がくらむ。
息がしづらい。
体が動かない。
痛みは無い。だけど、ボクの力の源でありそうな〝何か〟が、白夜によって抜き取られた。
ボクの意識は、そこで途切れた。
誤字、脱字、修正点があれば指摘を。
感想や質問も待ってます。




