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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第六章 開戦
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地獄の王

視点はマナちゃんのままです



「さて、太古より(きた)る神々の炎の力を借りる巫子よ。この俺に何をして欲しい?」


 召喚された早々、水の中だという事だったので少し怒っているのか、閻魔自身から白い炎が立ち上る。

 白い炎。確かそれは火系統の中でもとても危険な魔法ではなかったか?

 聞いた事はあってもこの目で見た事は無いし誰かが使ったという話も聞いた事が無い。


「なんか、ヤバそうなのが来たね。マナお姉さんが召喚するだなんて思ってもみなかったかな。その腕輪、僕にとってはとても危険だ」

「あらゆる……炎を、消す事のできるその槍を……持っておいて弱気……? ふざけないでよね……」


 こちらはただでさえ魔力がすっからかんなのに。

 そんなウチに向かって完全無効ができる〝ネプチューン〟の槍を持っている死海が弱気を吐くだなんて信じられなかった。

 そのために少し挑発してみるも死海は肩をすくませていた。


「確かにこれは炎を無効化できるね。でも、一度に消せる炎にも限度があるんだよ。それはさっきマナお姉さんも見ただろう?」


 一度に消せる炎に限度がある?

 それは先程ウチが放った金色の炎の矢を放った時の話か?

 確かにウチが放った金色の炎を消したと同時に逃げた。今まで回避行動をしていなかった死海からは信じられないとも思ったが、まさかそんな事実があるだなんて思ってもみなかった。


「つまり、あんたは……白い炎は……消せないの?」

「そんな事は無いさ。だって、槍を、〝ネプチューン〟を。完全開放(、、、、)すればいいんだから」


 死海がそう言った直後。その手に集まる大量の魔力。


「マナお姉さん。一つ教えてあげる」


 ありえないその魔力の量に驚くウチは静かに聞こえる死海の声。


「神と契約してもね、それは神の断片が力を貸してくれているだけ。自分自身の魔力に完全開放があるように、神にも(、、、)完全開放が(、、、、、)あるんだよ(、、、、、)


 病棟の下へと溜まっていた海水が勢いよく屋上まで昇ってきた。

 そのすべては死海の手に持つ槍へと収縮されて行って……。



Dii(ディー) Consentes(コンセンテス)! 〝ネプチューン〟!!」



 そのすべてがその槍へと吸い込まれていった。

 眩い光を放ち、次に目を開けた時には死海が持っている槍が変化した。三叉となっていた矛の部分の先に釣り針の先のかえしのような部分が出来上がり、デザインが荒々しい海を連想させるような柄が入った。

 一番変わった場所と言えばその三叉の槍と掴んでいる手の間から常に放たれている海水だ。それらが全て宙に浮かんでまるで生きているかのように動いている。


「何よ……それ……」

「ふぅん。やっぱり、強制的に従わせていると鎧までは顕現されないか。神様もなかなかやるね」


 魔力が先程までの比では無い。何倍、何十倍の魔力が死海からは放たれている。


「なるほど。お前のような考えを持つ者が神を従えれる訳が無いと思っていたが、そうか。強制的に従わせているのか」


 間に割って入る閻魔。


「貴方、あの力をどうするつもり……?」

「裁こう。閻魔の名において。少年、名を聞こう」

「人間が召喚されるのがただでさえおかしいのにその上で名前を聞くとか。聞いてどうするの? 僕の名前なんてさ」


 閻魔が丸いホールを開き、そこに手を入れる。

 その魔法は見た事がある。カナやユウが使った魔法だ。二人が〈アイテムボックス〉だの、〈四次元○ケット〉だの言っていたあれだ。

 そこから手を出した時には、その手に握るは白い炎が常に放たれている古代文字により魔法が付与している剣を取り出していた。


「閻魔帳にでも書いておこう。罪の内容は『神罰』だ」

「へぇ。閻魔様か。面白そうだ。コードネームは『死海』。名前は――――カンマ・ルクセル」

「!?」


 ウチが目を見開いたと同時に閻魔がその場から消え、カンマと名乗った死海へと剣を振るった。

 ルクセル。聞き間違いではない、確かに死海はルクセルと名乗った!?

 もしかして……レナとの血縁関係が!?

 いや、驚く事ではないかもしれない。風香がヘレスティアへと寝返ったのは接触があったからだ。それがルクセル家に居ないとは思わない。

 だけどレナと兄、いや、外見的に弟でありそうな血縁者だとは思わなかった。


 衝撃の事実を感じている今、カンマは特にその場から動かないで宙に浮かんでいる海水だけで戦っている。

 だけど、それは徐々に押され始めている。


「すごい……」


 海水による攻撃は数十以上はあるというのに、そのすべてを斬り裂いているのは閻魔だ。

 次々と復活しているが復活した傍から斬り裂かれている。


「くっ」


 だがそこはやはりコードネーム持ちの五刑囚なのか、槍を振るって切り裂かれた海水の分の変わりに攻撃している。

 だけど、どうしてその場から動かないのか。

 足を動かしながら攻撃すればもっと楽に戦えると思うのに。


「うわっ」


 ついに槍を弾かれて飛ばされるカンマ。

 その後ろは海水がすでに待ちかまえていてそれに乗って――。


「〈水流(すいりゅう)焔切(ほむらぎ)り〉」



 ザパァンッ!!


 その着地した海水を真っ二つへと切ったその閻魔の剣がカンマのその背中を斬った。


「ぐっ」


 大量の血が流れたカンマに閻魔は遠慮なく回し蹴りをカンマの横腹をついた。


「ごふっ」


 唾を吐いたカンマは受け身も取れずに屋上から外へと飛ばされていった所で海水がようやくカンマを受け取る。


「手応えが無いな。炎を無効化するのではなかったか?」

「お前の炎……なんだよッ」


 いらついたカンマが足場となっている海水に拳を打ち付ける。


「俺の炎は地獄の炎。神が防げるのは結局この世界と自分と同類の魔法だけだ」

「そう言う、事ね……ッ!? ゴホッゴホッゴホッ……はぁ……はぁ……」



 血?


 カンマが急に咳き込んで血を吐いた。

 それだけじゃない。自分の心臓辺りを抑えているように思える。


 背中を斬ったからと行って深いところまでは斬られていないはずだ。

 肺が斬られたとも思えないし、どうして血を吐くのだ?


 フラフラとした足取りでその場に立つカンマ。袖で口元の血を拭き、槍を構える。

 だけど、すぐにその場に座り込んでしまう。

 様子がおかしい。先程まで憎まれ口を簡単に叩くような人物だったのに、一体どうしたというのだ。

 閻魔もその様子のおかしさに攻撃の手をやめている。


「は、はは……。時間が、無いな……」


 カンマが何か呟いたと思ったら完全開放していた神具を元の姿へと戻していた。


「今の爓巫を捕まえる事はできそうになさそうだ。マナお姉さん、レナ姉にあったらよろしく言っておいてよ」

「あんたまさか逃げる気!?」

「もちろん。英名を殺す任務は完了したからね」


 カンマがそう言うと、下から上がってきた水柱がカンマの姿を隠した。


「!? 待ちなさいよッ!」


 逃がさない、と立ち上がろうとした所にふと力が抜けて転んでしまった。


「閻魔、追い掛けて!」

「それは無理だ」

「どうしてっ」


 ウチが前を向くと、閻魔の体から炎が燃え上がる。


「何……それ……」

「時間だ。爓巫よ。まだ俺を完全に召喚できていない証拠だ。力が借りたいならば今度はもっと魔力を込める事だな」


 そう言うと、燃えていた炎が更に激しく燃え上がって焔魔が一瞬で消えてしまった。

 カンマを逃がしてしまったウチ。


(どうやって報告しよう……)


 死海が現れ、英名を殺され、閻魔を召喚し、まんまと逃げられる。


 とてつもない時間を過ごした気がする。魔力も使い切った。


 今のウチは何もできない自分に逆戻りだ。

 体がだるい。今すぐにでも寝てしまいたい。フィエロは海水に閉じ込められてから声が聞こえないからおそらく意識が無いのだろう。武器として顕現されているだけでも十分だ。矢は作れないが。


(しばらく、休んでようかな……)


 ウチは、今は休まなければいけないと思い、爆撃音が聞こえる中で目を閉じようとしたその瞬間、体がいきなり突風に吹かれる。


「え、ちょ、何これ!?」


 何とか四角に区切られている屋上のブロックの間に指を挟んで耐えようとするも――。



「え、ちょ、いやぁぁあああああああああああ!!!!」



 突風に飛ばされてウチは水色のゲートの中へと吸い込まれるのを見た。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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