森の中
『『翼魔法』とはいっても、わたしのこの『翼』はもとからあるものです。ひかくてきほかの『翼魔法』よりかはかんたんにとぶことができます。ですので『想像力』をはたらかせて『宙に浮く』そうぞうをしてださい』
「こ、こう?」
頭の中でシラに説明されながら、ボクは一生懸命宙に浮かぶ自分を想像する。すると、段々と地面から足が離れていくような感覚。
そして、飛べたと思った瞬間。ボクはひっくり返って頭を打った。
「いったぁい……」
『『油断大敵』ですりく。いつでも『集中』しておかなければそらにとぶことはできませんよ?』
「これ、結構難しい……」
まるで背中に何か生えているような感覚だ。
それでいて操作がとても難しい。シラには想像力が必要だと言われたけど、この背中にはえている感覚をコントロールすればいいのだろうか。
とりあえず、また自分が宙に浮くような想像をすると、背中に違和感を覚える。やっぱり、想像力とこの背中の感覚は繋がっているのかも……。
とすれば、シラには悪いけど……。
ボクはそう考えて背中へと意識を向けた。
すると動くような感覚。まるでこれが当たり前みたいな感覚を覚えながら翼が動く。
『そうですりく! あとすこしです!』
シラに激励されてボクはいっそう背中へと意識を向けると、他の音とかが全て消える。そして、背中に生えている何かが動くような感覚を覚えて、飛べると思った瞬間。ボクは左足で地面を蹴った。
「やった! 飛べ……って早すぎ!?」
地面を蹴った瞬間生い茂っている木を簡単に通り過ぎてその上へと出てしまっていた。その時にはシラが止めてくれていたのでもうその場所で虚空しているが。
「わぁ……これが空を飛ぶ感覚……」
風がとても気持ちよく、いつまでもここに居たいと感じるも降りて早く向かわなければと思うと、すぐに下に降りた。
フラフラとしながら地面へと降りると、二人が近寄ってくる。
「大丈夫? お兄ちゃん。でも初めてであれだけ早く飛べるなんて思えなかったな! あれ使えば二の太刀使わなくても十分早いんじゃない?」
「リクちゃんって、やっぱり他の人よりも覚えが早いね! だって空飛ぶのなんて私できないし」
二人に絶賛されながらボクは地面すれすれのところで浮かぶ。空を飛んでいるとあまり右足に負担が掛からなかったし、力も今は入れていない。背中にずっと集中している状態だ。
「あはは……。でも、やっぱりまだ慣れていないと言うか」
まるで足の代わりに翼が動いているみたいで、それでも足はちゃんとあって動くことができて……。うぅん。不思議な感覚だ。
『はじめてで『急上昇』ができれば、たいがいあいてに『不意』をうつことができますよ。りくはやっぱりものおぼえがいいです!』
『でも、若干シラが補助してたよね?』
『ツキは余計なことは言わんでいい! そこで暇でもしておれ!』
『えぇ~。あたし暇が一番の敵なんだよ?』
頭の中で大きな声が何度も響くので少々くらくらとするけど、それでも宙を浮いている状態は変わらずじまいだ。何度もこうしていれば簡単に上達できるようになるかもしれない。
「よし。それじゃあさっさと行こうか♪」
「だね! リクちゃん、動ける?」
「や、やってみます」
背中に意識を集中したまま、ボクは先を歩くユウとアキの後をついて行った――のだが。
「居たぞ! ヘレスティアに潜んでいたスパイの仲間だ!!」
「捕えろ!!」
「「「!?」」」
ボク達は揃って後ろへと振り向く。するとそこでは兵士が剣と盾を持って木々の中から大量に出てきた。
「やばい、走るよ!」
「うん!」
「えっと、シラお願い!」
ユウとアキが走り始め、ボクはまだフラフラの状態の翼をシラに頼んで速度アップを頼んだ。
その中で、後ろからたくさんの魔法や槍、銃などが飛んできたりもして、ボク達は木々に隠れながら、時には武器で防ぎながら森の中を走って行く。
「やばい。このままじゃ森を抜ける前に兵士たちを撒けないよ!」
「確か私の記憶だったら森は半日で抜けれる程度。兵士たちが来た時間と合わせると……たぶん私達もう森の外側に出ちゃうよね!?」
「だったらどうするんですか!?」
ユウが少し苦い顔をする。おそらく一生懸命考えているのだろう。
ボクも一通り考えてみても撒ける算段はつく事が出来ない。
こちらが攻撃すれば別だが……。
「よし! 火を放つよ! みんな先に行って!」
「でも、そんなことしたら森が燃え――」
ボクはそこまで言って気がついた。
ヘルが此処を通った時になんて言った?
――この、森に、ある人が、居るから――
つまり、それが守護十二剣士たる男の人の事。
守護十二剣士の男が防衛していたライン。それがこの場所だとしたら?
いや、この場所なのだろう。男の試練を受けていた時、まったく同じ小屋があったのだから。
つまり、ユウがいくら燃やしても燃えなかった木があったあの場所という事。
ボクが気がついた事にユウが気がついたのか、ニッと笑ってその背中に持つ大剣を抜いた。
「神罰の炎を与えてあげる!」
ユウが両手で持った大剣を大きく振りかぶると、大剣に大量の魔力と炎が燃え上がる。
「〈焔神技・浸ノ型 広破焔流〉!!」
ユウがその大剣を振るうと、その大剣から出されたと思えないくらいの大量の炎がまるで壁のように立ちはだかり、兵士に向かって広範囲に広がるようにして襲いかかった。
「う、うわぁ!? なんだこれは!?」
「撤退! てった――うわっちっち」
「逃げろ! 逃げろぉ!」
兵士たちが次々と襲いかかってくる炎に慌てて逃げていく。
「お兄ちゃん! 早く行こ♪」
「う、うん」
ついその力に見とれてしまって足――ボクの場合、シラの翼――を止めていたボクとアキは、慌てて森の外へと走り始めた。
しばらくすると、森の外が見えてきた。
でも、森の外にたくさんの兵士が見てとれる。
ボク達は全員息をひそめてその様子をうかがった。
「あの兵士たち。森の反対側を一直線に向かったんだ。それから森の中を探すっと……」
「確かに、そうすれば確実だよね♪ ってあんまり浮かれてられないかも……」
アキの推理にユウが同意するけど少し不安がってる。
あの中を突っ切ることは難しいだろう。そういえば、朝になればルナのテレポートが使える。光のある場所から光のある場所へと転送できる。
でも朝までなんて待てないだろう。兵士がそんな時間をくれるとは思えない。
「どうやってあいつら倒そうか?」
「全部は倒せないから、逃げるのが一番良い手なんだけど……」
逃げるとしたってここを通らなければライコウへはつかないのだろう。
森もずっと並行してあるわけではないだろうし。
「正面一点突破しかないかなぁ……」
「どうやって?」
ユウがそう言ってから、ボクが聞くと、ユウは笑いながらこれからの作戦を教えてくれた。
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