右足対策考え中
視点はリクですよ
「う……」
「あ! アキさん、大丈夫ですか?」
目が覚めたらしきアキにボクは近くまで行き、声をかけてみる。
「うぅ……リク……ちゃん?」
「はい。アキさん、大丈夫ですか?」
心配そうに覗いても、アキからはあまり反応は得られなかった。まだ頭がくらくらするようで、頭を押さえている。
「私、どうして寝てたの……?」
「アキさん、ヘルに何か見せられてたんですよ? それで、急に呻きだして……。何があったんですか?」
ボクに何をと聞かれたアキは覚えていないの一点張りで、どうやらヘルの魔法が良く効いたらしい。でも、記憶の奥底へと入れたと言うので、知っているには知っているのだろう。
「とにかく、アキさんが起きたんなら休憩は終わりだね♪ そろそろライコウに向かおっか♪」
「うん。アキさん、立てる?」
ボクはアキに手を差し伸べると、アキはその手を取って立ち上がった。
その時に支えるために力を入れたおかげでちょっと右足が痛む。ここにソウナがいないのが少々惜しい。ソウナがいてくれたらまた右足の痛みを引いかせてくれると思うのだが、いないものは仕方が無い。
「ありがと、リクちゃん」
「どういたしまして。それじゃあ。行きましょう」
まだ夜深く、森の中なのだが、ボク達はライコウへと向けて出発する事になった。
ルナとツキはそれぞれ腰につけており、シラはすでに腕輪となって嵌めてある。
ユウはエングスを顕現すると、大剣としてその背中に背負う。ユウの体格よりも大剣の方が大きいので刃のある所をベルト斜めに止めている。
ここの場所がどこだかわからないけど、ユウが言うにはヘレスティアに向かう途中に通った森だと言うことだった。それで幽霊という単語が頭の中に浮かんできたが一生懸命振りはらった。
ボク達はそれぞれ戦闘準備が整うと、ライコウがある方向へと向かって行った……のだが。
「走ることは……できないか。それじゃあ歩いて森の外まで出よ。ホントはテレポート系が使えればいいんだけど……あれ、正確な装置じゃないと距離制限があるからあんまり使えないんだよね」
「え? どうして走れないの?」
「お兄ちゃんの右足が戦闘以外で悪化しないように」
ユウがため息をつきながらそう言うと、「あぁ」とアキが納得した。
おかげで走ってライコウに向かう事が出来ない。
だが、テレポート系ならルナが使えるはずだが……。
(ルナ。テレポート使えないの?)
『生憎と、〈テレポート・陰〉はまだ思い出してなくてのぅ……。ヘルが使った時、ヘルは後ろに居たじゃろう? 見えてなかったのじゃよ……』
まさか記憶喪失がこんな所で障害になろうとは……。
ユウが使った所はみた事が無いし、アキが使えるとは思えないからまずテレポートは使えないと。魔力だけを使って移動できる手段は何も無い、と……。
いまさらながらどうして足を痛めてしまったのだろうと嘆く。
「お兄ちゃん! ユウがおんぶするよ♪」
「絶対に嫌。ボクは普通に歩いて行くから大丈夫」
「森の中だけど普通に歩いて大丈夫なの? リクちゃん」
アキに言われて「う……」っと言葉に詰まる。おそらく普通に歩いてもまた悪化するだろう。ソウナに「どんな転び方をしたら……」と言われたほどなのだ。軽かったらソウナの治癒魔法で治っているだろう。
「じゃあどうしたら……」
「お兄ちゃん♪ これに乗っていったらいいよ♪ 〈魔力製造〉」
ユウはそう言うと魔法を発動。魔法陣から現れたのは一頭の立派な馬。
しかしその馬の首から先、蹄、尻尾の先が全て炎で作られており、生き物では無い事を悟る。
「あの、ユウ……。これ、は?」
「デュラハンの乗っている馬を想像して作ってみました魔法生物だよお兄ちゃん♪ 馬が良いかなぁって思って♪」
ユウが笑いながら首から先が無い馬を説明してくれる。
『ぜったいにあつそうだから、おねがいだからのらないでください』
シラにそう言われて、ボクは断る事にする。とは言っても元々断るつもりだったが。こんな夜に出てきそうな馬に乗っていられるかと考えていたのだから。
「ユウ。締まって」
「え? でもお兄ちゃん足……」
「締まって」
「え、ちょ、足は……」
「シラが熱いから嫌だって言ってるし、何よりこんな夜道にそんな怖い物出さないでよ」
「あっ」
ユウは今気がついたと言わんばかりに驚いていた。
しぶしぶ作った馬に魔力を通すのをやめてしまうと、ユウはまた考え始めた。
「う~ん。作った魔法生物に乗れて、お兄ちゃんが怖がらなくて、熱くない魔法生物……。ユウそんなの作れないよぉ……」
まぁ、まずユウの魔法が火系統しかみた事が無いのでそんなことだろうなとは思っていた。
『リクよ。龍に乗ってみたくはないか?』
(まさか、さっきまで戦ってた龍に乗らせるとか言うんじゃないよね?)
『ぎくっ。あ、あはははっ。そんな訳ないじゃろうが! そ、そう! 小さな! 小さな龍じゃ!』
ちなみにさっきまで戦ってた龍に乗るなんて事をするとすぐにでも見つかってしまうから即却下だ。それだけでなく小さい物にまで乗るつもりはない。
『むぅ。名案じゃと思ったのじゃが……』
そういえば、ルナはソウナの使っている〈セイントウルフ〉は覚えていないのだろうか。
あれも一応魔法生物では無いのだろうか?
その事を伝えてみると……。
『あれは無理じゃ。特定の神には居る眷族と言う生物でのぅ。同じ魔法を唱えても魔法は発動されぬのじゃ』
眷族と言うのがあるんだ。
そういえば、ルナとかツキ、シラには居ないのかな?
そう考えてみても三人ともそれぞれの神にそういう話は聞いた事が無い。
ルナに至っては記憶が無いので居たとしても覚えてないから呼べないのだろう。
「ってか、こんな所でいつまでも喋っていられないね。そろそろ行こ♪ お兄ちゃんは……」
ユウがこっちを向いて「う~ん」とまた悩む。
すると、今まで黙っていたアキが口を開いた。
「ねぇ、思ったんだけど、リクちゃん空飛んだら?」
「「へ?」」
同時にボクとユウが反応する。
「リクちゃん、翼魔法は使えないの? 空飛んでたら足は使わなくていいよね?」
「…………そうだ! そうよ! お兄ちゃん翼魔法使えない!? そしたら今まで同様とは行かなくても少しは自由に動き回れるよ!」
翼魔法なんて使える……のだろうか?
『りく。わたしを『背中』へとまわしていただければ『翼』はいつでも『展開』できますよ?』
(シラを背中へまわす?)
えっと、どういうことだろう。
『わたしのみぎうでにたまっている『魔力』を『背中』へまわすだけです。『魔力操作』はまえにおぼえましたし、うごかせばそれでいいだけですからできるとおもいますよ』
右腕に溜まっている魔力?
ボクは目を瞑って右腕に集中する。
集中したらヒンヤリとする冷たい魔力が大量にある事を確認できる。これがシラの魔力だろうか。
ボクはそれを動かすように集中してみると、意外とすんなりと動いてくれる。シラが誘導してくれるようにしてその道を進んでいくと、腕から肩へ。肩から背中へと回ってそこで静止した。
すると……。
「おぉ! リクちゃんまるで妖精みたい!」
「お、お兄ちゃんそれ……可愛い! 可愛いよお兄ちゃん!!」
アキが写真を取りながら、ユウが「きゃー」と黄色い声をあげて騒いでいた。
ボクは何が何だかわからず、目を開けてみると右腕には腕輪がはまっておらず、背中を見てみると氷の氷柱のような物が一つ見えた時に確信した。
シラが人型になった時に必ずあった三つが対となった氷の翼が六つ背中に浮かんでいるのだろうと。
髪が長いのだが、背中から少し離れて浮かんでいるので特に邪魔になっているわけでもなかった。
それよりもすこし心配な事が。
「ボク、空飛ぶの初めてなんだけど……」
「「『あ……』」」
ユウ、アキ、シラ。三人が三人とも……。
『見事に重なったのぅ』
『ねぇ。それよりあたしお腹減ったぁ』
マイペースな二人を除いて、ボク達は固まった。
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