幼少の記憶
視点はアキさんです。
あの恐ろしい龍を倒してからしばらく進んでも次の魔法生物の襲来は無く、ほぼ順調に進んでいた。
でも、逆にそれが怖かったりもする。
ホントはすぐそこに潜んでいるのではないかと思うほど周りの景色は静かだった。
私は何とか恐怖から抜けだし、落ち着くと、リクから離れて周りに警戒を配っている。
「なかなか小屋が見えてこないですね……」
「ホントにあるのかな?」
リクがきはらしにと話して来て、ユウが先を覗くようにしながら歩き続けている。
二人もこの状況に少し不安なようで、そわそわしている。
リクはいつでも刀が抜けるように鞘に手を添えているが……警戒損にはならないだろうか。
それからまた数分歩いて行くと、やっとのことで小屋を発見した。本当に警戒損だったみたいだ。
草木が全体に生えていて、中から不思議な魔力を感じるから問題ないとは思う。
「よかったぁ、これで終わり……」
ユウが安堵した頃に、その小屋の扉が開かれる。
すると、中からヘルが出てきた。その手に持つのは少女には似つかわしくない湾曲した刀が握られていた。
「ヘルちゃん? その刀は……?」
「ハル、ペー。ヘル、の武器」
その事を聞いているのではない。どうして、刀を持っているかだ。
私はそれを聞きたかったのだが、ヘルは問答無用で話を続けた。
「アキ。ヘル、には力、は見せ、無くて、いい。ヘル、の試練、は一つ。狂わ、ない、事」
狂わない事? 一体何をするつもりで……。
するとヘルはハルペーを両手で持ち、横に振りかぶった。
「今、回は、壊れ、なけれ、ば。契約、しても、いい。大、サービス。〈幼少の夢〉」
魔法が発動される。ヘルが振ったハルペーから放たれた魔力の波が、私達を飲み込もうと襲い掛かってくる。
リクは急いで刀を抜いて斬り裂いていたが、少し離れていた私の所までは防げなかったようで……。
私は波に飲み込まれると思って顔を両腕で覆う。
だがいつまでも衝撃が来ない事に気がつくと、不思議に思って顔をあげる。するとそこは……。
「ここ……は……?」
――とてつもなく懐かしい。記憶の底に沈めていた場所に私は立っていた。
「お父さん! 何か面白いネタ会った?」
「ん~? そうだな~」
そこでは小学生ぐらいの小さな茶髪の女の子が男の人に後ろから抱きついていた。男の人は新聞を読んでいたようで、何やら女の子にいろいろと教えている。
私はその様子を見て自然と涙があふれてきた。
これは夢だ。分かる。だって、目の前に居る男の人はもうすでに死んでいて、小さな女の子は……。
「わ、私……」
そう、あの小さな女の子は私自身。
つまりあの男の人はお父さん。お父さんがいると言うことは……。
「何やってるの。早くテーブルのイスに座りなさい二人とも」
私は振り向く。後ろにはご飯が乗った食器を持った眼鏡をかけたお母さんが立っていた。声をかけようとしたところで、お母さんは私をすり抜けてテーブルへと向かって行った。
そうか、これは夢だからお母さんもお父さんも、そして小さい私自身でさえも気がつかないんだ。
「「は~い」」
二人が座る。朝食を食べて小さい私は小学校へと向かい、両親は仕事へと向かう。
両親ともにジャーナリストで、この国ではそれなりに有名な二人だった。二人に嘘はつけない。嘘をついたらとことん本当の事を言われ続いて行き、しまいには余程の事をやっていると組織が崩壊すると言われるほどだった。
場面が変わる。
夕日が暮れる頃、小さい私は従姉妹である当時のハナと一緒に家に帰っていた。
いつもの光景だ。
「先生来てなのね! ――くんがいじめられてるのね!」
「ホントだ! 先生、早くー!」
「げぇっ。あいつら先生呼びやがった!」「おい、早く行くぞ!」
帰りに居た、いじめられている子を二人でいじめっ子達から救出したりした。こんな所に先生がいるはずが無いとは思わなかったのか。
当時は、主に私がいろいろと考えてハナも強力して実行していた。
ハナは考える事が苦手だから、こうして私がいろいろと教えるのだ。
いじめっ子達から救い出すと、いじめられていた子はお礼を言ってからすぐに走って行ってしまった。小さい私とハナは人を救った事に満足感を覚えていた。
また場面が変わる。
「「「「ハッピバースデーアキ!!」」」」
「アキちゃんおめでとうなのね!」
今度はまた私の家だ。でもさっきと同じではない。
お父さんとお母さんの他に、ハナとその両親が来ていたのだ。
丁度その日は私の誕生日の十一月六日。
お祝いに来てくれたのだ。私の両親と、ハナの両親はとっても仲が良いから忙しい中でもこういう事をしてくれる。ハナとも過ごせるし、家の中はいろんな飾りをつけてくれるから一年で一番楽しみにしている日だ。
「ありがとお父さん、お母さん、伯父さん、おばさん、ハナちゃん!」
「さぁ消すのね! ふー」
「あぁ!? ハナちゃん私が消すのー!」
せっかく蝋燭につけてくれた火をハナが消そうとするのでとっさに息を吹きかけて消そうとする。
その様子にこんなこともあったなと笑ってしまう。
「いや~。もうアキも5年生かぁ」
「あなた。まだ三学期がありますよ?」
「そうだぞ。兄さんの娘だから、心配はしてないけどな」
「ふふふっ。そうね。でも、そろそろ恋心が芽生える時期かしら?」
「ななな、なな何!?」
ハナのお母さんが余計な事を言うおかげでお父さんが慌てて小さい私へと駆け寄る。
「あ、アキ! 好きな子とか居るのか!?」
「え? どうしたのお父さん?」
呆ける小さい私に、お父さんの言葉を聞いて隣に居たハナが答えた。
「私はアキちゃんが好きなのね!」
「わわっ。ハナ危ないよ~」
ハナが勢いよく小さい私に抱きつくのでバランスを保とうと頑張っていた。
その様子にお父さんがわなわなとふるえている。
「いくら弟の娘でも女の子同士では結婚させんぞ!?」
「俺も同じ気持ちなんだが!?」
ハナのお父さんがツッコミ気味に返すと、お母さんとハナのお母さんが見合ってくすくす笑っていた。私もおかしくて笑ってしまう。
笑っていると、場面が急に暗転した。
「え? ここ、は……ッ!?」
私は目を見開く。
ここは私の家でリビング。先程までワイワイやっていた場所。飾りもまだ残っている。
そういえば、お父さんが「五年生かぁ」と言っていた。そして誕生日があった深夜。
――間違いない。
私はすぐにその部屋を出て二階へと上がって行く。二階の部屋は私の部屋と、両親の部屋と物置き部屋がある。そして私の部屋では小さい私とハナが寝ている。
問題は無い。今向かうべき部屋は……。
私は扉を開けようとしてドアノブを握ろうとする。だが手がすり抜けて、握れない。扉をすり抜けるかなと思ってすぐに突撃する。簡単にすり抜ける事が出来て、それから部屋を見渡した。
――そこでは、赤い池がすでに出来上がっていた……。
「……ッ!? お父さん!? お母さん!? 伯父さん! おばさん!!」
私は急いで駆け寄る。床が生温かく気持ち悪い。
それでも私はお父さんとお母さんの肩を揺すって返事を待つ。でも返事は来ない。首に手をやってみると……。
「なんで……なんで二回も見せられなきゃいけないのッ!?」
もうすでに息は無い。でもまだ死んでから数分としか立っていないだろう。溢れ出て来る涙を堪える事が出来ず、私はお父さんの胸に顔をうずめて泣いてしまう。
――だから気づけなかった。
「こんな所で――――――? 〈狂い咲く腐敗花〉」
背中に走る強烈な痛み。
でも、こんな……こんな痛みよりも私は……。
「…………………………」
嘘だと……これは誰かが作った夢なのだと……教えて…………。
――私の中の何かが壊れたような感覚。
この時に私は、自分で自分を壊したんだ。
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