18、お屋敷で
「何か欲しい物はあるかね」
クロードさんと、その奥さんだというおばさんにお風呂に入れてもらって、綺麗な服を着せてもらって(子供の服がなかったから、大人のシャツを着せて貰った)、髪を乾かしてもらっていると伯爵がやってきた。
欲しいもの。
「……養育費」
「何っ?」
ぼそり、と私は呟いて、また床にぺたん、と座り込んだ。
頭を下げて、なんていうか、土下座をしたまま、話し続ける。
「……伯爵の邪魔にならないように、気を付けます。屋根がある所を貸してください。ごはんは、捨てるものがあったら、それを食べさせてもらえればうれしいです」
すごく立派なお家に、立派な伯爵様。
私は伯爵に会うまで養育費を!養育の義務を!と、そんな風に息巻いていたけど、たぶん、伯爵は私が生まれたことというか、存在していたことも知らなかった気がする。
立派な貴族の、立派な人。
オルハンでさえ緊張してしまう、そういう偉い人を前にして、私は気持ちがシュン、と萎れていっていた。
というか、この人は本当に私の実父なんだろうか?
……私が知ってる乙女ゲームの、悪役令嬢カナンには裏設定があるって、友達は教えてくれた。父親はルーカス・コルヴィナスっていう、悪の魔法使いでと、そういう……「これ以上はネタバレになちゃうから言えないんだけど!!」と言ってたけど……。
だから、私がカナンなら、父親はルーカス・コルヴィナスだと思うんだけど、こんなおじいさんだと、違うかもしれない。
「……」
じぃっと、伯爵が私を見つめているのがわかる。でも何も言ってこないから、私も何も言えない。
突然押しかけてきた、汚い子供が衣食住を要求するなんて厚かましい。呆れて言葉も出ないのかもしれない。
「……」
「…………あ、あの」
「……君は、どこで寝てもいいし、お腹が空いているのなら、いつでも何でも食べればいい」
と、伯爵は言ってから少し考えるように口元に手を当てて、くるり、と後ろを向いた。
「来なさい」
「……?????」
なんだろう。
追い出されるんだろうか。
お風呂にも入れてもらって、お腹もいっぱいになってる。
外に出されるのかもしれない。もう十分だろうと言われたら、私は食い下がることができるだろうか?
動いたらそのまま追い出されると思って動けないでいると、伯爵がため息をついた。
「……屋敷を見て回って、君が一番良いと思った場所を君の部屋にしよう」




