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魔力無しで家を追放されて婚約も破棄された令嬢が炎の魔女様と共に帝国の皇帝となるまで~けれど、皇帝陛下はわたくしを愛していらっしゃったそうですわ~  作者: カイロ
後編 フィアラ戴冠編

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秘されし願いですわ~!!

 結局、わたくし達は玉座の間を出てお部屋で待機する事を命じられました。

 ロズバルトの望みを聞くため、彼と陛下だけが玉座の間に残る形です。


「まったく、我らにも聞かせられん事でも頼んでいるのか? あの男そんな欲望を心の内に秘めておったのか」

「そういう話じゃないですよ」

「……もう少しこっちへ来ても大丈夫ですのよ~」


 ドアの向こう側の壁に寄りかかりながら喋るラトゥに部屋の中に来るように言います。

 すぐにお声がかかるかもしれませんので、みんなでわたくしとカトレアの部屋へ集まってロズバルトを待っていました。


「でも、本当に大丈夫なの? 姉さんは『悪い人じゃない』って言ってたけど、人に打ち明けられない望みがある人ってのは不安なんだけど……」

「う~ん……詳しくは教えてあげられませんけれど、怖がらなくってもいいんですのよ~!」

「そうなの?」

「ええ! ロズバルトは別に悪い事をしようとしているわけでは……。ええ、まあ……こういうのは捉え方次第ですから~……」

「姉さん、こっち見ながら喋ってよ」


 あの方の望みはおそらく奥様、ファルメリア様の命を奪った方への復讐なのでしょう。

 不当な理由で殺されてしまった彼女の恨みを晴らすため、ロズバルトはその犯人を陛下に探し出してもらおうとしているはずです。

 あまり広められない話ではありますけれど、見方によっては悪事を働いた人間に罪を償わせるべく動くわけですから、決して後ろめたい行いとまでは……言えないのではないでしょうか?


「だ、大丈夫だよ。ロズバルトさん、怖い顔してるけど優しいから」

「優しい、んだ……。そうは見えなかったけど」


 オルフェットがアッシュに頷いて肯定します。反乱軍で共に過ごした中で、この子もロズバルトの芯の部分を理解していたようです。


「うん、特にフィアラ様には優しいから、心配しなくていいよ、アッシュさん」


 そう言われ、アッシュは真剣な顔で何かを考え始めました。

 それから彼はゆっくりとわたくしの目を真っすぐに見てきます。


「……姉さん、僕より小さい子に様付けで呼ばせてるのはどうかと思う」

「そこですの~~~~!?!?」


 思う所があったのはロズバルトに関してではなかったようです。まあアッシュ自身よりも年が下の子にその呼び方を強制させていたならば変な目で見られても仕方ないのかもしれませんが。


「でもわたくしが呼ばせているわけではありませんから言われても困りますわ~~!!」

「自分から呼んでるのか……」

「はい。僕、フィアラ様の事すっごく尊敬してますから」

「オルフェット君はフィアラさんに助けてもらったんですよねー」

「は、はい」


 カトレアに聞かれてオルフェットは頷きました。

 ……それ、確かカトレアから助けたんだったような気がするのですけれど。


「ま、姉さんが助けた子が言うんなら信用しようかな。反乱軍のリーダーだったのは引っかかるけど……あのオッサンも姉さんの仲間なんだもんね」

「うふふ、後でロズバルトにも直接言ってあげてくださいね~。きっと喜ぶと思いますわ~」


 わたくしもアッシュも、ファルメリア様の姉であるフォルトクレアお母様の子供ですから、きっと嫌われているよりも心を開いてくれている方が彼も嬉しいでしょうから。


「ちなみにアッシュよ、この我ラトゥ・ノトリアス・フェリアスもまたフィアラに助けられた者の1人だが……フィアラの仲間として、我に少し血をくれはしないか?」

「いやだ……」

「即答だと!? 別にいいだろう我もフィアラの仲間なんだから信頼してその身を差し出しても!!」

「……やっぱりもうちょっと離れてくださいませ~」


 弟に詰め寄ろうとしていたラトゥは名残惜しそうにしながらまたお部屋の外まで後退していきました。

 完全に退室した所でカトレアがドアを閉めてしまいます。


「まったく、あいつなんでアッシュ君の血を吸おうとしてるんでしょうかね」

「ラトゥに気に入られてしまったのかもしれませんわね~」


 先程アッシュがわたくしの弟だと知った辺りからラトゥが彼を見る目は変わったように思えます。

 以前にわたくしの血の味がお気に召したような事を仰っていた気がしますから、もしかすると弟の血の味も興味があるのかもしれません。


「なんにも嬉しくないんだけど……。っていうかあのヴァンパイアに血を吸われたら僕、どうなるの?」

「多分、ラトゥのいいなりになってしまうのではないでしょうか~」

「今は力が戻っちゃったみたいですしねー。フィアラさんの時とは違って普通に眷属にされちゃうと思います」


 リゲルフォード陛下を救うため、ラトゥには本来の力を取り戻させてしまいました。

 なぜか陛下には効果がないものの、ヴァンパイアの王である彼にアッシュが吸血されてしまえば、間違いなく従属させられてしまうはず。

 後できちんとアッシュの血を吸ってはいけません、と命令しておかなくては危ないかも。


「う、嘘でしょ……。ロズバルトはまだわかるとしても、なんで姉さんあんなのまで連れてきちゃったの?」

「なりゆき、かしら~。血を吸えば眷属が増やせるみたいですし、放っておくのも危ないですから~」

「あ、ああ……そう言われるとあれを自由にさせたら帝国の不利益でしかないし、仕方ないのか」

「ククク、それどころか我はリゲルフォードの命を救った功労者であるぞ。それを無碍になどできまいよ」


 ドア越しにラトゥの笑い声が聞こえます。まあ、確かにこの上なく素晴らしい功績ですから、そういう意味でも放っておく事のできない人ではあります。ヴァンパイアなんですけれども。


「は? 陛下を……?」

「そ、そのお話はおいおいいたしましょう~!」


 さらりと衝撃の事実を聞いてしまったアッシュは目を丸くしているのですが、それについてはまた後日説明するとしましょう。

 今朝目覚めたばかりの彼に詳細を聞かせては、また寝込んでしまわないとも限りませんから。


「え、気になるよ姉さん!? あいつが陛下を助けたって、何したの!?」

「アッシュもまだ疲れてますでしょうし、今度お話ししますから~」

「知りたいか? ならば我にその血を捧げれば教えてやっても良いぞ、さあこの扉を開けて我の元へ来るがいい!」

「だ、駄目だよアッシュさん! 血を吸われたら大変な事になるから……!」


 オルフェットが必死にアッシュを止めにかかります。まあそこまでラトゥの誘いに乗りそうな雰囲気はないのですけれども。

 もう少し彼が回復した頃合いに話してあげようとは思いますので、それまで我慢していただきたいです……。

 そう思っていると、ラトゥが待ち構えていたはずのドアがいきなり開かれました。


「あ、駄目じゃないですかあ! 離れてってフィアラさんに言われたでしょう!」

「……? 知らない内に嫌われてしまったのか?」


 ラトゥが乗り込んできたのかとカトレアが叱りましたが、そこに立っていたのはリゲルフォード陛下でした。ラトゥはその後ろに下がらされています。


「あっ陛下~!」

「フィアラ。……あまり俺は近付かない方がいいのか」

「ご、ごめんなさい、今のはラトゥかと思って。……どうぞ」


 自分の早とちりに頭を下げ、カトレアは陛下を部屋の中に通しました。


「ええっと、陛下がいらっしゃったという事は~……」

「ロズバルトの褒美の件について、話が終わった所だ」


 わたくしの問いを肯定し、陛下は話し合いの終わりを直接告げに来てくれたようです。

 どのような内容だったかまでは想像するほかありませんが、少なくとも陛下の表情からするにロズバルトの望みは叶えてもらえそうな気がしました。


「これで一通りの願いは聞き終えた。玉座の間で続きを話そうじゃないか」


 また玉座の間へ戻るようです。今の状況はラトゥが原因で横道に逸れた結果のようなものですから、帝位継承についてのお話の事でしょうね。

 ちょっと時間が空いて気が緩んでしまいましたけれど、しっかりと気を引き締め直さなくてはいけませんね。

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