ばかな彼女
お父様が目の前で断罪された。
お母様が発狂していた。
妹が狂ったように笑っていた。
私はただ突っ立っていただけだった。
そして私はただそれを見ていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
十歳の時、お父様が妹を連れてきた。平凡な私とは違い可愛らしい見た目の子だった。当たり障りのない挨拶を済ませたのを最後に妹とは六年近く会うことは無かった。同じ家にいるはずなのに一切見掛けることすら無かった。妹と再会したのは彼女が十五歳の時、学園へと入学してきた時だった。初めて会った時と変わらず可愛らしかった。両親に頼まれたので学園について説明をし、入学式の会場まで案内した。
それ以来、会えば挨拶するぐらいの関係を妹と続けていた。仲がいいわけでも悪いわけでもない。仲がいいほど関わっていないし、悪くなるほどの関係にもない。
妹が入学してきて数ヶ月たった頃悪い噂を聞いた。妹の事だった。入学してから数ヶ月で妹は第二王子とその側近と一緒に行動しているらしい。この時嫌な予感がした。側近の方達はもちろん第二王子にも婚約者がいたはずだ。この噂を聞きすぐ実家に帰ってお父様に話した。何か事が起こってからでは遅いと。だが、お父様はポツリと「思ったより早いな」と私に聞こえるか聞こえないかの音量で呟いた。お父様はハッとしてこちらで対処しておくと私を部屋から追い出した。
お父様が何をしようとしているかまでは分からなかったが良くないことをしようとしているのは明らかだった。
そして何をすることも出来ず数ヶ月たった。
お父様が何を企み妹を連れてきたのか、妹は何を思い第二王子達に近づいたのか、お母様が何故何も言わなかったのか。分かるほど私は両親や妹の事を知らなかった。必要最低限なことしか関わっていなかったからだ。
だけど、今日全てが終わるのだということは分かった。
お父様が押さえつけられながら歯をガチガチ鳴らしながら「私は悪くない」「この国のためにやっていたのだ」とボソボソと呟いていた。
お母様が綺麗に整えた髪をぐしゃぐしゃにしながら発狂していた。
妹が「こんなはずじゃなかった。イベントは上手くいっていたのに」「リセットボタンはどこよ」と、騒ぎ終えるとどこか一点を見つめながら狂ったように笑っていた。
その姿を見たあと私は陛下の次の言葉を待った。
冷たい石に囲まれたベッドに横たわった。
やっと終わったと、安堵した。
意識を手放す瞬間彼の顔が浮かんだ。




