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白楽天 舞夢訳  作者: 舞夢
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東南行(3)

繡麵(しゅうめん)誰家婢 鴉頭(あとう)幾歲奴 泥中采菱芡(りょうけん) 燒後拾樵蘇(しょうそ) 

鼎膩(ていじ)愁烹鱉(べつ) 盤腥(ばんせい)厭膾(かいろ)鱸 鐘儀(しょうぎ)徒戀楚 張翰(ちょうかん)浪思吳

氣序(きじょ)涼還熱 光陰旦複晡 身方逐萍梗(へいこう) 年欲近桑榆(そうゆ)

渭北田園廢 江西歲月徂 憶歸恒慘澹 懷舊忽踟躕(かちゅ)


どこの家のは婢女なのだろうか、その顔には入れ墨がある。

何歳の子供なのだろうか、あげまきをしている。

ヒシやミズブキを泥の中から取り、焼け残った柴や草を畑から拾い集めている。

鼎(かなえ)は脂まみれ、そろそろスッポン料理にも飽きた。

皿は生臭く、鑪魚の刺身は見たくもない。

鐘儀(しょうぎ)は、こんな楚の国をどういうわけか恋しがっていたし、張翰(ちょうかん)

も、こんな呉をやけに慕っていた。

気候にしても涼しくなったと思えば、また暑さがぶり返す。

一日だって、朝かと思えば日暮れになる。

我が身は、浮草や木切れを追って漂ってきたけれど、歳を考えれば既に黄昏だ。

郷里の渭北では、田畑も荒れてしまったと思う。

しかし、そのままで、この江西で歳月が過ぎていく。

帰りたいという思いで、心は常にボロボロだ。

昔なじみの顔を思い出すと、そのまま歩くこともできなくなる。


※繡麵(しゅうめん):顔に入れ墨をすること、南方の習俗。

※鴉頭(あとう):あげまき。子供の髪型。

※菱芡(りょうけん):ヒシやミズブキ。

※燒後:焼き畑の後。

※樵蘇(しょうそ):柴と草。

※鼎膩(ていじ):煮物を作る鼎(かなえ)が脂ぎること。

※烹鱉(べつ):スッポンを煮ること。

※膾(かいろ)鱸 :スズキをナマスにすること。

※鐘儀(しょうぎ):春秋時代、楚の人。普の国で捕虜になっても楚の冠をかぶり続け、楚の音楽を奏で、故国を忘れなかった。

※張翰(ちょうかん):普時代の人。秋風が立つと故郷の呉の真菰やじゅんさいの羹、鱸魚の膾を思い出し、官職よりは自由を選び、郷里に戻ったという故事がある。

※光陰旦複晡:晡は日が暮れる時刻。時間の経過が早いことを表現する。

※萍梗(へいこう):浮き草と木切れ。

※桑榆(そうゆ):桑とニレ。人生の夕暮れ、黄昏を表現している。

※渭北:白楽天は渭水の北に荘園を持っていた。

※踟躕(かちゅ):思いが溢れて、立ち止まってしまう様子。

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