5月22日 火曜日 黒板消しと真珠色の雨5
黒板をふき終わったので、ベランダに出て黒板消しを叩くことにする。
雨は降っているが、ベランダには屋根があるのでぬれることはない。
黒板消し掃除の大敵は、雨よりもむしろ風だ。湿った空気だとチョークの粉もさほど飛ばないので、風向きに神経質になることもなく思う存分叩ける。
そういえば理保、昼休みに聞いたんだが、と彼が私の背に話しかけてくる。
「お前、男子に人気あるんだな」
「まあ、それなりにですね」
何を言われるかちょっと身構えていたので、たいしたことのない話題で安心して答えを返す。
「知ってたのか?」
おもしろくなさそうに彼は問うてくる。
「いや、人気があるっていっても定期的または季節性に、ですよ」
本当にたいしたことのない事情なので、軽く告げた。
「何だそれは」
いぶかしげな声が説明を求めてくる。
「えーと、定期テスト前にはノート見せてほしい男子にちやほやされますよ。今日みたいに宿題があるときとか」
ただいま定期テスト3週間前でございます。まあ、まだまだテスト範囲分の授業は終わっていないけれど、あんまりぎりぎりになってノートを貸すのは嫌だと私が言ったため、これくらいの時期になると授業を聞いていない男子がちらほら訪れるようになる。
ノートをきれいにまとめることには自信があるが成績は上の中。
十分じゃないかといわれるし、自分でも不満はないが、上の上は殿上人だな、としみじみ感じるポジションだ。
上の上の人はそもそもノートをとっていないとか、書き殴りで読めないとか、自分用に途中をすっ飛ばして意味不明とか、そんなのばっかりなので、微妙な地位の私が頼りにされる。
私の成績は大きく上がりも下がりもしない、高め安定の優良株だ。
宮口くんなどは、番号順に席を入れ替えるテストのときには、私の後ろに座ることになる。だからいつもテスト前には、「ノート見せねえとカンニングするぞ」と脅すのだ。
よく考えると意味不明の脅迫である。カンニングして困ることになるのは宮口くんの方じゃないか。 そう思うのだが、なぜか毎回押し切られてノートやプリントを貸すことになってしまう。
ノートはともかく、プリントは全員配られるのだから、人のものを当てにしないでほしい。
まあ、これが定期的な人気の正体。
「あとは、バレンタイン前。チョコがほしい人に露骨にほのめかされますしね」
露骨にほのめかす、っておかしいか。いや、実際の話、君たちそんなにチョコがほしいか、とつい思ってしまうくらい熱心にアピールされる。
チョコは少しならおいしいが一度にたくさんはつらい。そう思ってしまうので私はあげない路線を貫いている。なによりめんどくさいしね。麩菓子の方がおいしいし。
こっちが、季節性の人気の正体。
「人呼んで周期的モテ期」
まあ、自分で名付けたんだけど。
サインカーブのごとく(別にコサインでも同じことだが)、瀬戸内海沿岸の雨量図のごとく、きれいな周期性を示して人気が出る、ようにみえる。
あくまでみえるだけなのがポイントだ。実際に人気があるわけではない。




