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5月22日 火曜日  黒板消しと真珠色の雨4

 だいたいにおいて、とチョークの箱を元通り棚にしまいながら反撃ともいえない反撃を開始する。


「チョークと埃の違いもわからないような人に馬鹿と言われたくありませんから」

「蒸し返すな。文系だからいいんだよ」

 彼の主張はめずらしく投げやりだ。もしかして理系科目は苦手なクチか。

「私だって文系ですが、炭酸カルシウムくらい知ってます」

 1年のときに化学の授業で習った記憶がある。水に入れると二酸化炭素を発生させるのだったはず。

「チョークがカルシウムだろうがナトリウムだろうがどうでもいい」

 本当にどうでもよさそうな口調で言われたが、そこはどうでもよくはない。

「よくありませんって。例えば重曹は炭酸水素ナトリウムですよ。重曹とチョークの区別もできなくて生きていけるんですか? チョークの入ったカルメ焼きを食べるんですか?」

 ちょっと支離滅裂になってしまったが、つまりは私にとって、チョークは黒板消しと同じくらいにどうでもよくない存在なのだ。


 彼は黙って聞いていたが、軽く息をついてから言う。

「その状況はまさかないだろうが、おかげさまで十分楽しく生きてるよ」

 まあ、楽しく生きているなら重畳重畳。私も黒板消し掃除を楽しみつつ日々を過ごしているのだし。

 それに、と含むように笑ってから、彼は確認するように問う。

「お前はちゃんと区別がつくんだろう?」

「そりゃまあ、わかってますよ。現役の高校生がわかってなかったらまずいですし」

 いくら文系といえども、少なくともテストに出る範囲に関しては、化学もわかっておく必要がある。


「それなら、平気だ。お前とずっと一緒にいればどうにかなるだろう」


「……そうきましたか」

 ずっと一緒ってなんだ。

 チョークの箱をもっていなくてよかった、と思う。今の発言は、確実にチョークを1箱分破壊するだけの威力がある。

 しかも不意打ちだ。


 藪蛇の追究はやめたのに、なんで私は追い詰められているんだ。

 わからない。

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