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異世界人の経世済民 転移者は経済を立て直す  作者: キャズ
民主派VS復権派

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第51話 不安

 場所は変わってペンブローク領。

 メディナは自分の部屋の中、緊張と不安が入り混じった顔でウロウロと歩きまわっていた。


「はぁー、ついにこの日が来てしまった。本当に私に出来るのでしょうか」


 本日はメディナが国民に向けて講演と演説を行う日。支持を得られるか失うかが決まる正念場だ。本番直前という事もあり、メディナもその張り詰めた気持ちを抑えられないでいる様だ。

 そんな中、ドアをノックする音。


「メディナ様。そろそろお時間ですよ」


 ジェーツが出発の時間を告げた。


「あぁ、もう時間が来ちゃったー」


 悩んでいる間にも無情にも時は過ぎ、時間切れ。覚悟を決める前にメディナは会場へと向かう事となった。


 移動中の馬車の中、緊張と心配で張り詰めているメディナに、向かいに座っているジェーツが話しかける。


「大丈夫ですか?メディナ様」


 メディナは一呼吸置いてうつむきながら答える。


「私、不安なんです。私のせいで民主派が負ける事になるんじゃないかって。私は富楽さんが来るまで、有力者の良い様に使われるだけのどうしようもない領主でした。ペンブローク領の問題を解決できたのも富楽さんが手を貸してくれたからで、私の実力ではありません。地位も、成果も、全部なぁなぁで手に入っただけのもの。そんな私が民主派全体の経済政策を代表して国民に講演と演説をするなんて」


 今回民主派全体の経済政策の方針として採用されたのは、ペンブローク領で行われているもの。故に今回民主派の経済を代表する事となったのはペンブローク領の領主であるメディナとなった。メディナは突然民主派の代表の一人として扱われる事となった訳だ。


「メディナ様の不安な気持ちも分かります。ですが、私はこうも思うのです。そんなメディナ様だからこそ、民主派の経済政策を進める事ができるんじゃないかと」


 励ます様に言うジェーツにメディナは首を傾げる。


「私だからこそ?」


 ジェーツは頷き答える。


「えぇ。これはヴィヴィエットづてで聞いたのですが。富楽殿が言うには、民主主義のトップは好かれ過ぎも嫌われ過ぎも良くないらしいのです」


 メディナは再び首を傾げて聞く。


「嫌われ過ぎがダメなのは分かります。でも、好かれ過ぎてもダメなのですか?」


「私も最初はそう思っていました。好かれて支持されていれば経済政策も進めやすくなるものだと。ですが、スパニエル領の実態を聞いてその理由が分かりました。好かれ過ぎていると、国民の間にこの人に任せておけば大丈夫だという風潮が広がってしまい、国民からの意見が応援の声ばかりになってしまう様なのです。現状の問題点を知りたいから国民からの意見を求めているのに、国民が現状の不満を語らなくなるなってしまう。さらには現状の不満を言ってくれている人に対して誹謗中傷をする場合まであったとの事。これでは国民の意見を聞いて現状の問題を修正するなんて事が出来なくなってしまいます。支持も過ぎれば毒となるといった所でしょうか」


 メディナはウンウンと頷き納得の様子を見せた。


「支持している領主が好きすぎて、少しの指摘すらも受け入れられなくなっているのですね」


「確かに支持を得る事は重要です。民主主義で支持が無かったら領主になれませんから。ですが、支持が信仰になってしまっても民主主義でまともな政治は出来ないのです。国民の意見を聞いてくれるという信用と、この人に全部任せても上手くいかないという頼りなさ、その両方を持ち合わせている今のメディナ様だからこそ、国民の意見を取り入れて政策に生かす民主派の経済政策の代表にふさわしいのではないでしょうか」


「頼りない私だからこそ・・・か・・・」


 メディナは自身の領での事を思い返す。

 富楽が策を進めてからというもの、多くの領民が政策について意見を出してくれる様になった。メディナもこれまで多くの領民の意見を聞き、目にしてきた。

 内容としては不満の意見ばかりで最初は気が滅入ってしまったけれど、それはただメディナを批判するだけのものばかりではなかった。今の商売を続けていくためにどんな制度や政策が必要なのか。国民はどういった理由で将来に不安を持ち、貯金を止めれないでいるのか。供給と需要、それらをどうすれば維持し成長させる事ができるのか、それらを考えて意見してくれていたのだ。

 富楽から聞いた事がある。民主主義において必要なのは適切な批判意見だと。供給を担っている生産事業者が自分達の商売に必要な政策を自分達で考え、より良い商品やサービスが提供できる様に変えていく。需要を担っている国民がどうすれば自分達がお金を使いやすくなるかを考え、お金が流れる様に変えていく。そのための批判意見が出てくる様にする事こそが民主主義の経済政策において必要なのだと。

 メディナはこの人なら任せられるという絶対的な信用がある訳ではない。だけど、こいつを辞めさせなきゃダメだと言われる程に嫌われている訳でもない。もしかしたら、そんな半端な自分だからこそ今の立場を任せられたのかもしれない。

 メディナは頬をパンパンと叩き、気合いを入れる。


「もう大丈夫です。有難うございました。ジェーツ」


「いえいえ、メディナ様をお支えするのが私の仕事ですので」


 ジェーツとの会話で心の準備も出来た。

 メディナは覚悟を決め、民主派の経済代表として講演と演説へと赴くのだった。

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