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7〜ハッピーなエンディング?〜

俺は今、人の数がまばらな教室で頬杖をつきながら窓の外の桜の木を眺めている。

桜の木は鮮やかなピンクから青々しい葉による緑へ衣替え中だ。


「類は友を呼部」の記念すべき第1回目の朝練(?)は日下部萌という存在によって無駄な時間へと化した。

いや、そもそも練習など何もしてないからノーカンか?

そもそも朝練と言ってはダメな気がする。だって「練習」じゃないし。


「おっす、おみ。今日は朝早いな」


丸坊主で爽やかMAXの親友、中野大河なかのたいがが俺に話しかける。

ジャージ姿であることから野球部の朝練後だろう。


「おー、大河。色々あってな。大河は野球部の朝練?」

「おう! 朝から階段ダッシュ20本に、高校の裏の坂道ダッシュ20本に、サーキット系のトレーニングを・・・・」

「お、おう。わかった、わかった」


まだまだ続きそうだったので俺は大河を話を強制終了させる。

さすが強豪野球部、朝からそんなにやるのか。鬼嶋よ、これが朝練と言うものだ。


「てか、聞いたぜ。臣って部活入ったんだって?」

「ま、まぁな〜」


もう知ってんのか・・・・

あまり知られたくなかったのだが。

だって、友達を作ることを念頭に置いている部活なんていかにもやばいやつらの集まりみたいじゃん。まぁ、実際そうなんだけど。


「何部? 体育会系? 文化系?」

「そ、それはだなぁ〜」


自分でも分かるからいに目を泳がせている俺。

どうする! これは本当のことを言うべきか、それとも・・・・

その刹那。


「おい、中野!校内は制服が基本だぞ!早く着替えろ!」


身長190センチ近くあり、ガッシリとした体格の男が大河の服装を注意した。


「リューチ、まだホームルームも始まってないからセーフだろ?」

「ダメだ。教室に入ったら制服着用は義務! 生徒手帳に書いてあるだろ?」

「へいへい、わかったよ」


リューチ。

それはこの大男のあだ名だ。

リューチ、こと成田なりた隆一郎りゅういちろうは俺や大河と同じで中等部からのエスカレーター組だ。中等部から学級委員長を務めたりなどリーダーシップ抜群のやつで星翔学院初代生徒会長に任命されている。

最初は「リューイチロー」と呼んでいたが「リューイチ」や「イチロー」と呼ばれ、時が経つにつれて「リューチ」が定着した。おそらく「リューイチ」の「イ」が言いやすくするために抜けたのだろう。

まあ、俺の推測だが。


オミも気づいたら注意してくれよ」

「お、おう。今度から気を付けるよ」


リューチは俺に人差し指をビシッと突き立てて言う。

その威圧から俺は心に思っていないことを言って難を逃れようとする。


リューチは「じゃあ、頼むぞ」と言い残し教室から出て行く。



放課後―――――――

俺は例によって嫌々、第三社会科準備室こと友達を作る部活「類は友を呼部」の部室へ足を運ぶ。

本校舎から部室のある別館へつながる渡り廊下を歩いていると、その途中にある掲示板に同じ内容の掲示物が貼られているのに目がいく。

その内容は、


『どうも皆さん初めまして類は友を呼部、部長の星川です!

  皆さん新しい生活には慣れましたか? でも中には不安に思っている人もいるはず!

  そんなときは僕たちが力になります! お悩み相談などお気軽にどうぞ!

  場所・別館、第三社会科準備室           代表・星川龍臣』


俺は無言で掲示板にあった同じ内容の紙をむしり取り、部室へ走った。


「鬼嶋ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


俺はその勢いのまま、部室のドアを豪快に開ける。


「コレはどういう事だ、説明しろ!!」


すでに部室の中には鬼嶋と日下部がいてそれぞれ飲み物片手に談笑をしていた。


「すごくフレンドリーな感じがして良いでしょ」

「何が『フレンドリー』だ! なんで俺が代表者になってんだ! それに言わせてもらうが俺はこんなキャラじゃねえ!」


俺はもっと愛想がなく、機嫌が良いのに「え? 何怒ってるの?」って言われるキャラだぞ。

うんうん。


「あんたのキャラが合ってるか合ってないかなんてどうだっていいのよ」


鬼嶋は俺の熱量とは正反対の冷たい態度を取る。

「それに」と言って一枚の用紙を鞄の中から取り出す鬼嶋。


「あんたがこの部の部長になっているから、よろしく」

「オミオミが部長さんなのかぁ。頑張ってねぇ~」


俺のいない所で話がドンドン進んでいく。

今の反応を見る限り、日下部が知らないということは鬼嶋が一人で決めているのだろう。


「あのな、あんなものを張ったところでそう簡単に誰か来るわけないだろ。しかもお前の目的は友代を作ることだろ?」


俺の投げかけた質問に鬼嶋は軽くため息をついて心底呆れた表情を俺に向ける。


「あんたほんとバカね。相談に乗ってあげることによって私に『かし』ができるわ。それを弱みに友人関係を築けるわ」

 

鬼嶋はなぜか勝ち誇った表情をしている。

ため息をつきたいのは俺の方だよ。それは本当の友達と言えるのですかい? 


「お前な――――――――」


その時、部室のドアをゆっくりと開ける音がする。


「・・・・・・あのぉ」


振り返るとそこには眼鏡っ子で気の大人しそうな女子生徒が恐る恐るこちをの様子をうかがっていた。


「サク、さっそくお客さん来たんじゃないのぉ?」


え、嘘でしょ? あんないかにも怪しい部活のあんないかにも怪しい掲示物を真に受ける脳内お花畑野郎がいるとは。


「え、と・・・・あの・・・・その・・・・・・・・」


おいおい、どうしました鬼嶋さん。

日下部に話を振られて顔が強張る鬼嶋。


「あ・・・・え・・・・ぶ、ぶぶぶ部長はその人だから」


鬼嶋は俺を指さし、日下部の後ろに隠れる。

鬼嶋さん、まずそのコミュ障を治さないと。

俺は鬼嶋の決定的な改善点を見つけた。


「えっと、何か御用ですか?」

「あの、新倉先生がコレを鬼嶋さんに渡してほしいと」


ん、何だ?

眼鏡女子から手渡された一枚のプリント。

彼女は俺にプリントを渡すや否や「失礼しました!」と逃げ出すようにその場からいなくなる。

いや、そんなあからさまに嫌がらなくても。

よくわからない出来事に俺は唖然とする。

てか、先生が俺達に一体何の用なの?

とりあえず、俺はプリントを鬼嶋に渡す。


『桜子、人間というものは誰かの頑張っている姿を見て惹かれるものだ。

 見せない影の努力、それが友を作るための第一歩だと私は思う。

 というわけで、校舎裏の雑草を抜いてれ』


俺は紙に書かれている内容を鬼嶋と一緒に確認した。

あの教師、上手いこと言って俺らに雑用をさせようとしているようだ。まあ、全然上手いことは言っていないのだが。論点ずれずれだし。


「鬼嶋、そんなの無視してもう帰ろうぜ。俺は忙しいんだ」


そう俺は忙しい。

今週の週刊少年マゲジンも読んでいないし、この前ネットでぽち買いした漫画の新刊もまだ手を付けていない。これではマンガたちが可哀そうだ。


「友達への第一歩・・・・・・」


鬼嶋は目をキラキラ輝かしている。

え、嘘でしょ。


「こうしちゃいられないわ! 萌、龍臣行くわよ!」


俺と日下部は鬼嶋に腕を掴まれて強引に部室から出される。

え、マジで信じちゃったの? 

てか、初めて鬼嶋に名前をちゃんと呼んでもらった気がする。まあ、クソほどもときめかないのは確定だが。



それからというもの、新倉先生からのこの依頼と言う名の雑用は二週間に及んで行われた。

真面目な性格・・・・おっと、訂正。

真面目バカな性格の鬼嶋はそれを愚直に受け止め、こなしていった。

日下部は「これじゃあ、掃除部だねぇ」と呑気のんきなこと言っているが俺はたまったもんじゃない。あまり使われていない教室の清掃。新校舎となってバタバタしていたのか片付いていない荷物や資料の山。校外の美化活動。

新校舎を建てる金があるならこういうことは業者に頼めよ! と、俺は帰り際に正門にある理事長の像を睨む。あれ? ここ最近毎日のように睨んでいる気がする。

鬼嶋は相変わらず誰かに話し掛けられてもあたふたしてまともに会話が出来ていない。

それを俺は鬼嶋の席の後ろなのでよくその光景を目にするのだが別に助け舟を出してやるといったことはしてやるつもりは毛頭ない。         

鬼嶋を助けて「あれ、あの二人なんか怪しくない?」というちょっと仲良くすれば付き合ってると見る、女どもの腐った偏見の思考があるからだ。

なので決して、面倒臭いという理由ではない。

・・・・本当だぞ?




――――――――そして季節は5月へ入ろうとしている。

連日の重労働で体はもうバキバキ。

中学生来の筋肉痛を毎日のように味わっている。


早くあの訳の分からん部活から身を引けないものか。

俺はここ最近そのことをずっと考えていた。いっそうちの連中を出してしまうか、ということ思ってしまうところまで俺は来ていた。


「じゃあ、これで朝のホームルームを終了するが連絡事項等あるやつはいないかー」


新倉先生が今日も気怠そうにみんなの前に立って言っている。

あんたの雑用を代わりにやってあげているのに何であんたがダルそうにしてんだよ。


「はい」


一人の男子生徒が手を上げる


「おう、成田。どうした」

「来週に行われる球技大会についてです」

「もう来週か。そろそろ出るメンバーを決めなくてはな」


あぁ、球技大会か。

俺はリューチの話を聞きながら中学の時のことを思い出していた。

男だけでやる球技大会。それは「球技大会」なんて呼ぶなど烏滸おこがましいものがある。

そんなもは球技大会と呼ばない。ただの「体育」だ。

でも、そんな男だけの球技大会でも活躍したら一定期間みんなからチヤホヤされたものだ。




ここで俺はハッと閃いた。

みんなの前で球技大会の概要を話しているリューチの話を遮るように立ち上がる。


「それだ!」

「お、臣? どうした?」


クラス中の視線が俺に集まる。

だが今の俺にはそんな視線などどうでもよかった。

俺は閃いたのだ、すべてが上手くいくハッピーエンドな方法を。

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