井口二佐の不器用な言葉
井口二佐は以前このような話をしていた。
「SBUの隊員に成るために必要な事が、有るとすればそれは、覚悟だろう。いつどこで死ぬか分からない危険性のある部隊にあって、その覚悟がないと言う事は、任務にあたる上で整合性を欠くことは確かである。口で言うのは容易いが、これを実行するのは相当にハードである。どの様な覚悟を持って事に臨むべきかを理解しているという事は、SBUで成功出来るか否かという事にも関わって来る。当たり前の事かもしれないが、TPOによっては人を殺してでも、任務を遂行しなければならない事もあるだろう。そういう時に覚悟があるのとないのでは、捉え方も変わってくるはずだ。私は口で説明するのが下手なので、上手く説明出来ないが、要するに心構えをきちんと持っておく事。それがSBU隊員には求められているのだ。」
赤村も青野もこのセリフを井口二佐の口から聞いた時は、流石だなと感心したものである。口下手な井口二佐の話術でも、充分に伝わる内容であった為に、その場にいた全てのSBU隊員に伝わった。
勿論、それを踏まえた上で訓練を重ねる事が重要であり、井口二佐が伝えたかったのもそういう事であった。SBUの小隊長として長くやって来た苦労人である井口二佐の口から出た言葉だけに、その重みは充分にある。
そして何よりも、経験者として後輩達に語る一人の先輩として、語りかける井口二佐の姿は、いつも怒ってばかりいる口うるさい鬼上司ではなく、一人の人間として充分に尊敬に値するモノであった。赤村も青野もその様に感じていた。




