人の上に立つ者として
いつまでも新人ではないし、いつまでも部下ではない。組織に属する以上は、大なり小なり責任を負わなければならない立場になっていく。
物語の最終盤は、人の上に立つ者として、必要な要素をクローズアップして行きたい。民間企業の役員と、自衛隊幹部の最も大きい違いは、何よりも人の命を預かるか預からないかと言う点にある。確かに民間企業でも社員の生活を守るのは、役員だ。だが命の補償まではしてくれない。
ところが、自衛隊幹部は、部下を守る以上に日本国民の生命・財産を守る事が主任務になる。戦闘行為による直接的命の危険にも、配慮しなくてはならない。そう考えると民間企業の命を預かると言うのは、本当の意味では命を預かっている事にならないのかも知れない。命を預かると言う事は、自衛官ならば避けては通れないテーマであると共に、どんな状況でもこれはつきまとうテーマであるとも言える。
部下や上官が死ぬ事も考慮すれば、精神的負担も大きい。実際に仲間が命を落とすような事になれば、もっと平常心ではいられなくなる。大切な事は、何が起きても不動心でいられるかという事だろう。冷静かつ正確な状況判断能力が必要になってくる。
勿論、きちんとその後で悲しみを乗り越える作業をする必要はある。部下を守れなかった自分を後悔する事だってあるかもしれない。酷な言い方かもしれないが、それは幹部自衛官の登竜門である。最も今の戦争が無い世の中には発生する事は無いだろう。




