命をかけるのにこれ程の浪漫は無い
役割分担は、任務の時以上にしっかりしていた。赤村が文章としてスピーチの骨組みを組み立てた。青野はワードとなるパーツをバンバン赤村に出して行く。文章は、構成がかけやすい様に、文明の利器であるパソコンを用いた。
初めのうちは、思うようなワードを青野が出せず作業が滞りがちだったが、慣れて来ると次第に自分の想いが文章になって行った。そして遂にスピーチ三日前にスピーチ本文が完成した。タイトルは、当初の通り「俺達の守るべきもの」で、スピーチの二本柱は、赤村の守りたいものと青野の守りたいものが中心になっている。紙面の都合上全文を記載する事は出来ないが、一番重要なスピーチ最後半部分を少しだけ紹介しよう。
「(…。前略)こんな時代だからこそ、守らなければならない誇りとか、日本人の生きざまという様なものがある様な気がしてならないんです。我々は自衛官という職業柄、どうしてもこう言った内に秘めたる想いを国民の皆様に開放する機会がありません。その為に知ってもらいたくスピーチをさせてもらっております。幸いにもこのスピーチで、現役のSBU隊員の一端を公開する許可を内閣総理大臣から得ています。いつ死ぬかも分からず、不安に押し潰されそうになる事もあります。しかし、我々が何の為に戦っているのか?それは、はっきりしています。日本の為です。日本人が大好きです。俺の回りにはこんなにも守りたいもので溢れている。だからこそ、命をかけられる。命をかけるのにこれ程の理由があれば、もう充分でしょう?命をかけるのにこれ程の浪漫は無いでしょう。大好きな日本人を守る。ご静聴誠にありがとうございました。」
青野は少し調子に乗ってしまったが、スピーチが終わった後は何故かスタンディングオベーションであった。




