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引き寄せ体質のお転婆婚約者と僕のミュージカル鑑賞  作者: 秋桜星華


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01 幼馴染、胃底なしのお化け

「あ、フリードだ。待ったー?」


 王都の中心にある時計台の前で本を読んでいると、元気なアンゼローナの声が耳に飛び込んできた。


 僕の幼馴染であるアンゼローナは、伯爵令嬢としてのお淑やかという概念をかなぐり捨てたお転婆娘である。



 幼い頃から無茶なことに挑戦し続け、両親では手綱を握りきれないことから、幼い頃からストッパー役を務めてきた僕の元に婚約者の立場が回ってきた。かくいう僕の父親も伯爵のため、身分は問題なかったらしい。



「聞いてよ! さっき乗り合い馬車で隣国の王子様に会っちゃったんだ。どんな確率? 挨拶したら『今度一緒にお茶でもいかがですか』だって。私にはフリードがいますからって断ったけどさー!」


 彼女がただの「お転婆娘」で終わらないのは、その引き寄せ体質に由来する。アンゼローナの行くところ、やること、会った人、なにかに巻き込まれた回数が常人の比じゃない。だから彼女と一緒にいる僕も相当な割合で事件に巻き込まれてきた。


 事件といっても多種多様で、嫌疑を晴らさなければならなかったり、死にそうになったことだってある。それでも彼女といることをやめないのは。


「おはよう、アンゼローナ。思わず王子様に嫉妬しちゃうところだったよ。さすがに不敬罪かな?」


 僕もなんだかんだで、アンゼローナのことが好きだからだろう。

 少しおどけた僕を見て、アンゼローナは笑う。何ともいえない達成感と幸福に包まれた。



「今日のミュージカル、楽しみだねー!」


 アンゼローナの言葉には裏がない。貴族としては褒められることではないが、僕はそこも含めてアンゼローナが好きなのだ。


「そうだね。王族御用達の劇団だし、テーマも、その、僕たちに合ってるかな、なんて」


「あぁー、恋愛ものなんだっけ? それも、私たちぐらいの年齢の」


 僕は肩に掛けていた鞄から今回の公演のパンフレットを取り出した。アンゼローナが興味津々に横から覗き込んでくる。


「わあー、王立劇場の前に屋台も並ぶんだって。なんか買おう!

 何がいいかなー。ポップコーンとか?」


「ミュージカルを観ることを考えると、つまめるものがいいよね」


 王立劇場では、盛大にこぼす危険性のないものや、他の観客の迷惑にならないものに限って、客席での飲食が認められている。もちろん、バリバリボリボリ音を立てるのは御法度だが。



 他愛ない話をしていると、王都の一番北、すなわち王城が見えてくる。


「いつ見ても王城って大きいね。カツサンド一兆個分くらいありそう」


 アンゼローナがしみじみといった。例えがありえないほど想像しにくいけれど、大きいという点には賛成だ。

 僕ら王都住みでも、王城に近い北側はあまりにも都会だから、あまりくることがない。王城だとか、なにかの本店だとか、そういうところに用事がないと北側には来ないのだ。ここら辺に住んでいるのは、王城で働く家族や、相当な富豪だけである。だから、北側に家があるというのは多くの王都民の憧れなのだ。

 ……僕もいつか、北側に住んでみたいなぁ。アンゼローナと一緒に。


「あ、屋台あるー!」


 言うが早いか、アンゼローナは駆け出した。どんどん小さくなっていく彼女の背中を僕は慌てて追いかける。野望より、今は食だ。


 僕が追いつく頃には、アンゼローナはすでに屋台のおじさんと仲良くなって値段をまけてもらった後だった。サングラス、と言ったか、硝子の部分が濃い色をしている眼鏡がやけに似合うおじさんだ。

 厳ついおじさんと見た目だけはおっとりした少女が楽しそうに談笑しているのは、なかなか見られる光景ではないだろう。

 ……おっとりしているのは本当に見た目だけなんだけどな。


「フリードおそーい。もう買っちゃったよ?

 はい、こっちフリードの分ね」


「ありがと……仕方ないだろ、君みたいに毎日走りまくって鍛えてるわけじゃないんだ」


 さらっと僕の分も買ってくれる彼女に惚れ直したところで、十一の鐘が鳴った。開演まではあと鐘半分はあるけれど、入場は早いに越したことはない。

 別に鍛えてるわけじゃない、とかふざけたことを言っているアンゼローナと僕は劇場の方へと歩き出す。その運動量で鍛えてるわけじゃないのなら僕は一体どうなるのか。



「そうそう、さっきの屋台のお兄さんに、いい感じの石もらったの! 数時間後くらいに役立つよって。未来視の魔法持ちなのかな?」


 アンゼローナが大事そうに手に乗せて見せてくれたのは、透き通った黄色のトパーズだった。魔法石であるトパーズには、お腹の調子を良くする働きがある。きっと、彼女が食べ過ぎることを見越したおじさんの優しさだろう。


「ふふ、綺麗な石」


 ただ、いつになく嬉しそうな彼女を見ていると、食べ過ぎに対する忠告をして水を差す必要はないような気がした。


 学院で魔法石サークルに属する僕とは違い、彼女は石による魔法効能にあまり詳しくないのである。


「何かで役立つかもしれないし、無くさないようにね」


 次、アンゼローナへ贈るものは、魔法石がいいだろう。できればオリジナルの魔法を込めた、とびっきりのやつを。

 屋台のおじさんなんかに負けてはいられない。


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― 新着の感想 ―
トラブル引き寄せ体質だね。 特異点だ。 カツサンド1兆個って東京ドーム約158個分になるってさ(≧▽≦) 億単位の方が良かったかも? いや、でもカツサンドのサイズって、標準サイズってあるのかな?
フリードくん、死にそうになったこともあるんかーーい\(^o^)/♪笑 それだけアンゼローナちゃんのことが好きということにしておこうw そして、カツサンドで例える大きさww わかりにくっっ!!ww これ…
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