表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きっといつかは最高の旦那様  作者: 黒塔
最終章 特別な存在
33/41

-3




「…っ、メリッサ!!!!」


自分を呼ぶ声がして、メリッサは瞼を開けようとするものの…体がだるすぎて力が入らなかった。


それでも、聞きなれた声から目の前の人物がヴァンスであることが分かる。目が開けられないために自分の状況は分からないものの、メリッサの体は彼によってがっしりと抱きしめられているようだった。



それからは、メリッサの傍でずっと騒がしい声が聞こえていた。


ヴァンスがメリッサをどこかに連れ出したのか、驚く人々の声がメリッサの耳元を駆けていく。その時、メリッサは自分の腕が久しぶりに動くことに気づいて、ずり落ちないようにとヴァンスの体にしがみついた。



「っ、ヴァンス!!お前、とうとう頭がおかしくなったのか!?」



そうして聞こえたのは、焦ったようなセドリックの声だった。更には聞きなれたような泣き声が聞こえ、どこかで王妃や乳母が泣いていることが分かる。




「ヴァンス様…娘は…まさか…」


そうメリッサの父親の声が聞こえた頃、ようやくメリッサの体が自由に動いてくれた。重かった瞼が開き、眩しい光が目にかかる。辺りはまたぼんやりとしていたものの…時間が経って少しずつ、メリッサは周囲の光景が理解できた。



「メリッサが…メリッサの心音が…ちゃんと聞こえるんです!いつもの弱く途切れるような音じゃなく、ちゃんと胸が動いていて…」



ヴァンスが震えるような声でそう漏らし、メリッサはこちらを見つめる多くの人たちの瞳にも涙が浮かんでいることに気づいた。しかし、メリッサはそれと同時に、この場にいるのは身近な人々だけではなく、着飾った貴族たちが集まっていることに気づいてしまう。こちらに向けられる視線に、嫌な緊張を覚えてしまうメリッサ。



なんて場に連れて来てるんだとヴァンスを責めようにも、メリッサの声はまだ戻っていなかった。しかし、そんなメリッサの気持ちを察したようにセドリックが気遣ってくれる。



「ヴァンス、まずはメリッサを医者の元に…」

「いやでも、メリッサにはあの子たちを」



そうヴァンスが告げると、セドリックはため息を付きながらも侍女たちに指示を出す。この頃、ようやくメリッサもヴァンスの考えを理解できた。



侍女が連れてきた彼ら…そう、ずっとお腹の中にいた子たちにようやく顔を合わせることができたのだ。


1人はか弱く鳴き声を上げる男の子。そうしてもう1人は、隣の男の子の手を握るようにしながらも小さな目でこちらを見つめてくる女の子だった。



メリッサはそんな2人を見ながら、彼らに会うことができたことに何よりの喜びを感じる。…ようやく、メリッサは自分が生きているのだと実感できた。




そんな中、メリッサの元へはウィルが駆け寄ってきた。後ろから慌てた様子のローガンが追いかけてくるものの、ウィルの素早さには敵わない。ウィルの手には少し不器用な形になった花冠があり、無邪気な笑顔をメリッサに向けていた。



「メリッサ様、今日もお祝いの花冠を受け取ってくれますか?」



ウィルがそうして白い花の花冠を差し出してくれたとき、メリッサは自身の結婚式で花冠をプレゼントした少年のことを思い出す。今までずっと気づかなかったものの、結婚式で花冠をプレゼントしてくれたのは彼だったのだ。



メリッサが声を出せずにいると、代わりにヴァンスが優しくウィルに声を掛けてくれ、受け取った花冠をメリッサの頭へと乗せてくれる。



(…あぁ、どうしてこんなにも幸せなのだろう)



胸に湧き上がってくる感情に少し苦しくになりながら、メリッサの瞳からはまた涙が止まらなくなってしまうのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ