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断罪される悪女。  作者: 徒然草
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第1話

※このお話はハッピーエンドではありません。主人公が幸せにならないと無理! という方は閲覧注意です。


「オリーブ・オーイル公女! 私は貴女との婚約破棄を宣言する!!」


 サーラダ殿下の生誕を祝うパーティーの筈が、私を断罪する為の舞台となっていた。


(そんな……一体どうしてなの?)


 回避する事が出来なかった最悪の状況に戸惑ってしまう。何故こうなってしまったのだろうか…。





◇◆◇


 私はオイスター王国に住む公爵令嬢、オリーブ・オーイル…に転生した女だ。私には前世の記憶がある。


 前世の私は柿原伶奈(かきはられな)という日本人女性だった。オリーブが20歳の誕生日を迎えた時、柿原伶奈はオリーブになっていた。


 柿原伶奈は自分で言うのもどうかと思うが、平凡な女だった。小学生の頃は同学年の中で一番可愛くて、美人だと言われていた。勉強もスポーツも常に上位で、私の周りには常に誰かが居て、とても充実していた。何があっても周りの人達が私の味方をしてくれる、そんな環境だった。  


 しかし、中学生になってから変わった。私は“井の中の蛙”だったと思い知らされた。私の中学校は、複数の小学校の卒業生が集って通う中学校だった為、新しい人達が一気に増えたのだ。


 私では到底及ばないくらい可愛い人、美人な人が居た。小学校の頃の勉強は簡単だったが、中学校は難しいと感じるようになった。私が難しいと感じるテストで、常に上位をとる頭の良い人が居た。外見や能力に関係なく、コミュニケーション能力が高くて人気者の人も居たりして、私は同学年の中心人物ではなくなり平凡な存在となった。


 悔しくないと言えば嘘になる。でも私は友達は居たし、クラスメイトとの関係もそこそこ良好だった。勉強もスポーツも平均より少し上くらいの成績でいられた為、何の問題もなく生活していた。

 

 その後、中学校を卒業し、高校生になり、必死に勉強して希望の大学に入学する事が出来た。平凡なありふれた日常は物足りなさを感じる事もあったけれど、とても幸せな生活だったのだと今ならよく分かる…。

 

 20歳になった時、柿原伶奈は死んだ。大学生の時に虐めを受けた事が原因だった。大学2年生なった私は涼太(りょうた)という彼氏が出来た。付き合い始めてから数ヶ月は本当に楽しかった…涼太に付き纏う女が現れるまでは。


 その女の名前は智恵(ちえ)。智恵は美人で人気者だった。ファンクラブが出来ていると噂される程であった。そんな智恵がどういう経緯で涼太と知り合ったのかは分からない。とにかく、智恵は涼太の彼女である私が邪魔だったのだ。


「わ、私…柿原さんに嫌がらせされちゃった。」


「ち、違う! 私はそんな事してない!!」


 私は智恵に嵌められて、“智恵に嫌がらせをする女”として、智恵を知る学生達から虐められるようになった。人気者の智恵と、平凡な私…誰も私を信じなかった。同じ学部の人達も、友達も私から離れていってしまった。


 智恵が人を貶める事が出来る人間だと知っている人は私だけだったのかもしれない。私以外の人達は、智恵はとても優しくて愛らしい性格だと思っていたのだろう。


「伶奈、お前がそんなヤツだとは思わなかった。もう智恵に嫌がらせをするのは辞めろよ。」


「だから、違う! 私は何もしていない……っ、ま、待ってよ涼太ぁ!!」


 物を隠される、壊される。悪口を言われて無視される。足を引っ掛けられて転ばされたりと、虐めを受ける中、涼太も離れてしまった。私は独りになってしまった。悲しくて、辛くて、何もかもが嫌になった。


(なんで、…なんで私がこんな目に合わなきゃならないの?)


「あらぁ…柿原さん。私を虐めにきたのぉ? 怖〜い♪」


 宛もなく、無意識に歩いていたら大学の屋上に来ていた。そこには、フェンスに凭れ掛かっている智恵が嫌味を言ってきた。私を見て、楽しそうに笑っていた。


 …智恵の姿をみた途端、悲しみと絶望しかなかった私に、憎悪と怒りが湧き上がってきた。

 

「そうそう、私と涼太はお付き合いする事になりました〜! 柿原さん残念だったね♪ でもぉ、柿原さんなんかが涼太と付き合ってたのが悪いのよ?」


 友達がいなくなり、大学での居場所を失って、涼太を奪われた……私は智恵に危害なんて加えてないし、何もしていないのに。


 智恵が好きになった人が、私の彼氏だったというだけなのに…。


(どうして…どうしてっ!? なんで、私がこんな目に遭うのよっ…!)


 私は、智恵に向かって全力で走り寄ると、知恵をフェンスに全力で押し付けた。


「へっ? なっ…ちょ、ちょっと!! い、イタイ、イタイッや、ヤメテぇぇぇ!!!」


 喚く知恵が抵抗してきても、私はそれを捻じ伏せて、力を弱めなかった。  


(死ね、死ね死ねシネシネ!! あんたさえ、あんたさえいなければぁぁぁ!!)


―――ガッシャーーン!!


 その時、知恵の背中が当たっていたフェンスが外れて私と知恵は宙に放り出されてしまった。屋上のフェンスは脆かったのだろう。屋上から地面へと落下していく中、色んな思い出が頭の中に流れて来た。その思い出は過去に遡っていく…。


(走馬灯…てやつなのかな、これ。)


 虐めに合う前の日々が流れていく。涼太と付き合った事、大学に合格した事、高校時代と中学時代での友達と楽しんで過ごした事、そして小学校…私はクラスで1番可愛くて美人だと言われた。成績も優秀で、いつもクラスの中心にいたんだ。まるで、私を陥れた智恵のように…。


(やっぱり、小学生の時が、1番楽しかったなぁ…………あ、もう終わりか。)


 地面が目の前にあると思った瞬間、衝撃が襲い、意識が途切れた。それが、柿原伶奈の最後だった―――。      





◇◆◇

 


「オリーブ様、お誕生日おめでとうございます。」


 次に目を覚ました時に、私はオリーブになっていた。この世界が別世界だとわかったのは、暫くしてからだった。



 

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