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第5話:話が進まなくても頑張って書き続けようと思う今日この頃

です。

「おはようございます」

ランドは欠伸をしながら、皆が集まる居間に顔を覗かせた。

居間には、パメラ母とパメラが食卓を囲み食事をしていた。ランドも適当に座り食事をしだした。

パメラは、何故か毎朝顔を拭いている。

「くそー悔しい!ズルいよ!何で毎朝毎朝、あと1歩の所で目を覚ますのよ!」

今度は保険をかけて、油性から水性にしていた為か、パメラに施された顔の落書きはほとんど落ちていた。

「気配を消さなきゃ駄目だよ。気配を殺して近付き落書きをしなきゃ到底、俺の顔に落書きなんて出来ないけどな」

ケラケラと笑いながらランドは答えた。

「気配って──お母さん!気配ってどうやって消せば良いの?」

急に話を振られた母は、少し戸惑った表情を見せたがすぐに答えは出た。

「パメラちゃんが、オヤツをつまみ食いしようと思い、お母さんの目を盗んで静かに食べようとする時が、気配を殺せてると思うのよ」

なるほど!とパメラは相づちをついた。

「コレで、明日は油性で顔に花の楽園パラダイスを書いてあげるわ!」

ビシッとランドに向けて指をさしたが、その場にランドの姿は居なかった。

「ランド君なら、食べ終わって学校に向かったわよ。パメラちゃんも早く行きなさいね」

パメラ母はお茶を飲みながら言う。

パメラの中で、異種格闘技戦パメラvsランドの勝手な戦いは0勝3敗0分となった。

魂学の時間になり、生徒の数は昨日の半分以下になっていた。

普通生徒は、1人も残っておらず特別生徒も魂に本当に興味のある生徒しか残っていなかった。

これくらいの人数ならばと、教室は元の寂れた小さな部屋に戻り授業は開始された。

「俺が最初にあった魂を持った奴は、俺の最初の友達であり仲間だったキッシュと言う奴だった。キッシュの魂は、今までに8人くらいしか宿した事が無いと言われていた飛龍の魂だった」

大半の生徒がざわめいた。

「飛龍と言えば、魂を宿すと言うのは難しいと言われていたが、アイツは何なくと魂を体に宿したんだ。俺は、まだ家族以外の人間に慣れていなかったけど、アイツはいきなり俺に魂を見せて来て俺の信頼を得たんだ」

ランドはケラケラと笑った。第3者から見たランドは、とても楽しそうに見えた。

「俺はアイツと盗賊稼業をしていたんだが、突然アイツは俺の前から姿を消してしまった。残された俺は、今度は兄さん達と一緒に盗賊稼業を始めたんだ──と言っても、悪い事は一切しない良い盗賊だったんだけどな」

ランドはニヤリと笑う。

「それから俺は、クルシスランドの王女様と出会った」

それを聞いた1人の生徒は手を挙げてから立ち上がった。

「それは、貴族が大嫌いなプリム様の事ですよね?」

「おうっ!プリムは、町外れのBARでいつもクリームソーダを飲んでるんだよ」

パメラは、嬉しそうに話すランドの姿を見て直感した。ランドはプリム様の事が好きなのかと──。

「俺がプリムと出会ったその頃に、町では切り裂き魔事件と言うのがあった。その事件の犯人は、狼の魂を持った奴が犯人とされていたんだ」

また生徒がざわめいた。

「もちろん、俺じゃ無いよ。だけど、町の人達は犯人だと決めつけていた。それもその筈、昔森で狼狩りをしていた猟師が何人も殺されたのだから──それは俺なんだけど、その事件があり今回も狼が犯人だと決めつけられた」

重大な事をさらっと言ったので、誰も違和感に気づかなかった。

「町では、1人の剣士が狼討伐に申し出たんだ。その剣士に憧れていたプリムも討伐に申し出た」

ランドはため息をつくと、目の前に置いてあったお茶を1口飲んだ。

「俺達兄弟は、面白半分で討伐隊の後を付けていったんだけど、途中でその剣士が討伐隊に襲いかかったんだ!そう、犯人はその剣士だったんだよ。そいつは、カマキリの魂を宿していたんだけど、半獣状態だったんだ」

また1人の生徒が立ち上がった。

半獣(はんじゅう)状態って何ですか?」

「情を持たないで、強引に魂を体に宿すと肉体と魂が拒絶反応を起こし、魂を使って獣人化をしても半分人間のパーツ、半分獣のパーツ状態になるんだ。もちろん、出る力は半減されるんだけど、何も力を持たない人間を殺すのは容易い事だったんだよ」

何人かの生徒は、ノートに今の話を書き止めていた。周りの先生達も、メモをしている。

「俺は、あまり狼になる姿を見られたく無かったので、なるべく人にもプリムにも見られたく無かったんだけど、意外にもプリムが気丈な奴で、カマキリ人間に襲いかかったんだよ。結局、軽くあしらわれて兄さん達も助けに向かったんだけど、あっさりやられちゃって──プリムの前で狼の姿を表す事になったんだ。半獣と獣人の戦いは、力の差がありすぎた。もちろん、俺が勝ったんだけどな」

「どうやって倒したんですか?」

「この俺の爪と早さでな」

そう言うと獣人化をする。狼の姿になったランドは、一瞬消えてまた戻ってきた。

しかし、その腕の中には何故かパメラが居たのだが──。

「えっ?あれ?何で?」

今まで、席の後ろの方で話を聞いていたパメラだったが、いつの間にかランドに抱えられて皆の前に立っていた。

「この素早い動きは、人間の時でも出来るんだけど狼の姿になれば倍以上の早さで動く事が出来るんだ」

ランドはパメラを解放すると頭をポンと叩いた。

「これと爪で、カマキリ人間は死んでる事も気づかないでバラバラに吹き飛んだけどな」

一部の生徒から、パメラに対して嫉妬の気配を感じた。ランドは気にせずに授業を続けようとしたが、あえなく鐘がなった。

「じゃあ、今日はここまでで明日は、対カボチャ人間の話をするから」

獣人化を解き理事長に連れられて部屋の外に出ていった。

「カボチャ人間…?カボチャって魂があったのかな」

誰に聞くわけでも無いが、パメラは呟いた。そこへ、同級生が近づいてきた。

「良いなぁ〜…どうだった?ランド君の狼姿の触り心地は?」

「何か──干したての布団にくるまってるみたいな感じだったよ」

「凄いね!魂を宿すとあんなに早く移動出来ちゃったりして」

同級生はなかば興奮気味に話す。

「そうよね──だから私、毎朝顔に落書きされる事に気づかないんだ──」

と言葉を止めた。パメラはまだ、同級生にも誰にもランドが居候している事を言っていなかったのだ。

「毎朝、ランド君がパメラの顔に落書きを!?」

その声は、かなり大きな声で教室中に響き渡った。

やっちゃった…と言う顔をしながらパメラは静かに後ろを振り向いた。

全員がパメラ達の方を見ていた。これは隠しきれないと思い、パメラは説明を始めた。

「ほら、ランドってクルシスランドから来たじゃ無い?住む所が無いからって、婆ちゃんが勝手にうちに泊めちゃったのよ」

ほとんど嘘なのだが、これくらいなら他の人は信じるだろうと思った。

「羨ましすぎる!1つ屋根の下で暮らしてるなんて!」

同級生は叫ぶ。

この学校の生徒達は寮で暮らしている。寮の中には、買い物が出来る場所や遊ぶ場所も設けられている。

その寮を囲む様に、学校が建てられていて生徒達は、寮で全ての事が出来るので外出は出来ないのだ。もちろん、寮の中の店は全員女性である。

パメラだけは例外で、実家から通っているのだ。

「別に羨ましくなんて無いわよ。毎朝、人が起こしに行って時間があるから顔に落書きしようとしてるのに、いつもあの素早い動きで反撃されるし、ご飯を食べてても人の話を聞かないで先に学校に行くし」

ため息をつきながら、ランドの愚痴を言うパメラを全員は目をキラキラさせながら話を聞いていた。

「別にランドにとっては、1つ屋根の下で暮らすって言っても、何も感じて無いのよね」

「良いんじゃないの?それが、ランド君の愛情の裏返しかもしれないじゃん!」

「愛情の裏返し──って、そんな訳無いでしょ?ランドは、自分の国の王女様の事が好きなんだから」

パメラが言うと、同級生は笑いだした。

「無い─無いって、プリム様なら確か何処かの国の領主の息子と婚約をしたのよ?貴族とよ!ランド君とは身分が違いすぎるって」

そう言えばそんな話が合った気がする。

「って事は、本当に愛情の裏返しかも!」

パメラは小さくガッツポーズを決めた。

「でも、パメラとイチャイチャする事で私に嫉妬をさせようとさせてるのかも知れない!どうしよう!」

同級生の妄想が始まる。女って言うのは、この手の話が大好きなのか話はドンドンと教室中に広まっていった。

自分から振った話なのだが、なんだかんだ言う同級生と他の人達を見ていたら、うんざりとしてきた。

パメラは再び絡まれる前に、気配を消して教室を出た。

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