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2話 生まれ変わった理由

魔力を集めていたことは、今のところ問題になっていない。

むしろ、その才能に喜んでいるようだった。


あの後、母親に呼ばれた父親がやってきた。

母親は興奮した様子で、さきほど起こった事を父親へ話し、

両親とも俺を散々褒めた後、お互いの遺伝の良さを褒めあっていた。

そして、濃厚なスキンシップを行い、部屋を出て行ってしまった。ナニをするのであろうか化不思議でならない。

現在、この部屋にいるのは、俺ともう一人の赤子、それと不思議生物が一匹だ。


(ようやくお話が出来ますね)


そう、今から不思議生物である猫の妖精さんと念話をしようと試みているのだった。

話しかけてきた不思議生物に、念話にて会話を試みる。


(いまいち感覚がつかめないけど、聞こえてるのかな?)

(はい、聞こえております)


電話で話している感覚に近いのだが、通話音が直接脳内に響く様な感覚。

脳が揺さぶられるような感覚になる。


(魔力が肌に触れる感覚もそうなんだけど、この脳に響く感じ、とてつもなく気持ちが悪い)

(慣れたら呼吸をするのと同じように、違和感なく出来るようになりますよ。身体に染み付いたらまず忘れることはありません)

(へえ)


意識をせずに行るようになるのはいつだろうか。

慣れるしかないのだろうが、それまでこの違和感と付き合っていかなと考えると憂鬱になる。


(念話が出来るようになったので、今日はこのくらいで済ませても良いのですが――何か聞きたい事があったら答えますよ)


聞きたいことがありすぎて困るほどだ。

分からないことが、分からない。

今の俺は混乱しまっているのか、あたまの中がごちゃごちゃしていて、上手く考えることが出来ないでいる。

元々、頭は良く無いのがそうさせるのだろうか。


(えっと、俺って死んだの)

(はい、主様は一度死んでいます。事件が起こった時を思い返すと、主様を守れなかったのがとても悔しさでいっぱいです)


ケット・シー。可愛いことを言ってくれる。

守りたいと思ってくれていたのか。

張った命が、少しは無駄で無かったと思える。


(俺、死んだのに生きてるって変じゃない? 生まれ変わって言われても、いまいちピンと来ないよ)

(生まれ変わったと言うのはそのままの意味です。死んで、産まれたのです)

(それでも良く分からないのだけど。単純に、今生きてはいるんだけど、前の体じゃないって事? それって夢でも何でも無く、ここに居るって事?)


生まれ変わるという言葉の意味をそのまま鵜呑みに出来れば、「あ、俺生まれ変わったんだ。やったー」で済ませることが出来のだろうけれど。


(あまり物事を上手く理解出来なくて小心者の俺としては、急な展開にどうしてもついて行けないし、納得もできないんだ。生まれ変わたって言われたって、夢なんだろうなって思ってしまうし)


こんな状況、どう考えても夢でしかありえない。

そう思えって言われたって、そう思えない。


(嬉しくはないのでしょうか)

(そうだね……俺って、生きることにあまり執着していなかったから、もう一度赤ん坊から人生を歩めますよって言われても、あぁ、なんか面倒くさいなって思ってしまうんだ)

(そうだったのですか、ごめんなさい。わたしがわがまま言ってしまったのです)

(いや、生き返る事、それ自体は嬉しいんだよ。魔力とか不思議な力が使えるって聞いて、正直わくわくしているし、この世界ってどうなっていんだろうって気になっているし)

(そういってもらえると嬉しいですね)


不思議生物の悲しげな表情は見るに耐えられなかった。

それに、なんで生き返らせたんだ、どうしてあのまま死なせてくれなかったんだ、という気持ちではない。

生きているのは嬉しいから。


(ちなみにわがままを言ったってどういう事?)

(幻神様にお願いしたのです。主様を生き返らせてくださいって)

(幻神? 神様なの? そんなの存在している訳が……)


あれは、説明付かない理不尽な物事に対し、人が無理やり納得するために作ったただの言葉で、物語にのみ登場する、人が作った想像上のものだ。


(でも、いるんですよね、神様。主様を生まれ変わらせたのが幻神様で、わたし達の様な、人が普段見る事が出来ない存在を司るのが幻神様です)


いるんだ。神様。

人を生き返らせる事が出来るなんて、確かに神様しかありえないだろう。

生前、そういった存在を、どこか鼻で笑ってしまっているような無神論者でごめんなさい。

生き返らせてもらったのにごめんなさい。


(ちなみに、主様が生まれ変わった理由は、たまたま、死ぬ直前にわたしの側に居たからですかね。主様の魂の綺麗さと、優しさに触れていたら好きになってしまって、幻神様との謁見する場所へ、つい連れて行ってしまいました。そしたら、興味を持った幻神様が、この世界だったら生き返らせても良いと言ったのです)


好きになったから連れて行かれて生き返ったとか、その程度で神様に会って生き返ったとか、その程度で人一人生まれ変わるんだ。

なんだか、俺の命って安いなぁって思う。

「ちょっとコンビニ行って来る」みたいなノリで神様の元に連れて行かれたって聞くと、特別感が薄れてしまう。

それに、俺の命がコンビニエンス扱いされるのは、多少は心外である。

なんだか価値観揺らいじゃうよな。

生まれ変わって、このような世界で生きているのは嬉しいと事だとは思うのだけれど、ディスプレイに並んでいるプリンの様に扱われるのはモヤっとする。


(幻神様は、感謝していましたよ。私の存在地位を上げる事が出来たのは主様のおかげだって。私みたいになれる存在ってなかなか居ないそうですよ)


そうなんだ、感謝してるんだ。

しかし、特別な事をした記憶なんて無い。


(私達の数がとても少ないから困ってたみたいです。だから、主様と私は丁度よいって)


そりゃ、そんな不思議生物があちこちに居るわけがないだろう。


(この世界が抱えている問題は根が深いですからね)


微かにぼそっと言われた言葉を、俺ははっきりと聞き取ることが出来なかった。


(主様が生まれ変わった理由としてはこんな所でしょうか)


生まれ変わった理由については分かった。

なんというか、神様の気まぐれで、大したことのない理由で生まれ変わってしまったんだなと思う。

俺以外のもっと生きるべき人間達に申し訳ないが、生き返ってしまったんだ、折角だから、ひとまず感謝して生きてみよう。


(今までの価値観と違いすぎて信じられないことばかりだけど、なんとなく分かったよ)

(それは良かったです)


そういいつつ、片腕を上げ、かわいらしく招き猫ポーズを取るケット・シー。

可愛い、その毛に顔を埋めて、深く呼吸をしてみたい。


あと一つ、とても気になる事がある。


(魔力の話なんだけど)


そんな、不思議パワー。

男子たるもの一度は憧れるてしまた事はある。

年甲斐もなくわくわくしてしまう。

今、俺は赤子なんだど、精神年齢的に。


(では、魔力についてお話ししましょう)

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