19話 神殿1
評価、ブックマーク有難うございます。
とてもうれしく思っております。
引き続き楽しんでもらえればと思います。
神殿にやって来た。
昼食をたらふく食べてしまったため、小さな丘を登る程度なのに、いつもより足取りが重い。
ここまで、それなりに登ってきたのもあるが、この程度の運動でも息が上がってしまう。
神殿は、近くで見ると印象は変るもので、遠目で見たときよりかは神聖さを感じる。
神殿と呼ばれるだけあって、ここらの建物の中では一番大きい。
ティアは、とても感動しているようで、「うわぁあ。凄くおっきいねぇ」と感嘆の声を上げている。
ヘリオス兄に限っては、自分の感情をどのように表現して良いのか分からないのか、ずっと黙って神殿を眺めている。表情から察する限り、感動はしている様に見える。
立派な建物に入るのって、すこしばかり勇気がいる。
俺なんかが、こんな立派な場所に入って良いのか、とても不安になる。
そんな感じで、入り口の前でまごまごしていると、神殿の中から一人の女性が現れた。
とても清潔感を感じる女性だ。
神殿に勤めるだけあって、身なりには気をつけているんだろう。
「あなた達、何をしているの?」
「えっと、精霊の加護というものを受けに来たのですが」
「分かりました。では、そちらにお掛けになってお待ち下さい」
女性が示した先に、長椅子があった。
俺達は言われるがまま、椅子に座って待つ事にした。
隣ではヘリオス兄とティアが「何をするんだろうか」とか、「緊張するけど楽しみだねー」など話している。
俺はそんな雑談を聞きながら、さりげなくケット・シーの頭を撫で、無言で待っている。
しばらく待っていると、先程の女性に声を掛けられた。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
俺達は言われるがまま、女性の後について行く。
すると、一つの部屋に案内された。
案内役の女性は「こちらでお待ち下さい」と言った後、部屋を出ていった。
案内された部屋には、ひとつ高い所に祭壇があり、その周りを不思議な文様が囲っている。
泉と表現すればよいのだろうか、その中心に水晶のような物が置かれており、その辺りから流れ出す水が、文様と祭壇を囲うように、さらさらと水が流れている。
意識せずとも肌で分かる。
魔力が他の場所よりも濃い。
ただ、普段の感じる魔力とは感触が違い、重くねとっと纏わりつく感覚がする。
それが渦を巻き、風の様に撫でてくるから、余計気持ちが悪い。
けれど、視覚だけで判断するならば、うっすらと白銀の靄がかかっていて、とても幻想的な空間だ。
「うわぁーキレイ」
「本当だな」
「へえ、こんな魔力もあるんだ」
二人は、不思議そうにこちらを見ていた。
ティアはこちら見て首をかしげており、兄さんは「何を言っているんだ?」と、思っているような表情をしている。
「あなた。魔力が見えるのかしら?」
後ろから女の人の声がした。
「え?」
急な問いかけに驚いて、後ろを振り向いた。
「あなたは、魔力が見えるのかしら?」
そこにはボブヘアーの女の子が居た。
毛の色は茶色なのだが、光の当たり具合ではきらきらと輝いている。
銀色なのかなと錯覚してしまうほど。
少し眠そうな印象を受ける瞳も、銀に近い水色。
肌の色が白い、可愛らしい女の子が立っていた。
可愛らしい女の子と言ってもティアと同い年くらいだろうか。
「聞こえているのかしら?」
「え、あぁ、聞こえていますよ」
彼女の幻想的な雰囲気に呑まれ、魅入っていたが、ふと我に返った。
「魔力が見えているの?」
「うぇ? ああ、そんな気がしただけで。あれ、目が霞むなあ」
目をごしごしと擦り、「あれ? なんだろう?」とすっとぼけてみる。
誤魔化せれば良いのだが。
「まぁいいわ。さっそくだけど始めようかしら。あなた達、精霊の加護って分かる?」
そんなの知らない。
だって「受けたほうが良いよ」と言われただけなのだから。
兄さんとティアも、頭に?マークが浮かんでいるような表情をしている。
「分かりません。神殿に行くと言いよって言われただけで」
「ふーん。じゃあ一通り説明してあげるわ。そこに座って頂戴」
案内された、丸いテーブルと椅子が設置してある場所に座る。
「個人差があるけど、人はみんな魔力を持っているわ。
魔術には属性が存在することも知っているわよね。属性は火、水、冷、風、雷、地」
その程度なら知っている。
「人が持つ魔力にも、属性があるの。その人がどの属性を持つかは、生まれ持った魔力の質だったり、環境によって決まるわ」
「魔力の属性によって、得意な魔術だったり特性があって――」
「そうね。例えば、その人が持っている魔力が火属性と親和性が高ければ、その人は火属性の魔力に適していて、火属性魔術を扱いやすい。得意という事になるわね」
「そして、火属性の特性は燃焼。魔力を運動エネルギーに昇華、燃焼して運動能力を上げる事を得意とするわ。そして他の属性だけど……」
一通り説明されたが、要約するとこんな感じだった。
火属性 特性:燃焼
魔力を運動エネルギーに昇華、燃焼して運動能力を上げる事を得意とする。
剣術士に向いている。
水属性 特性:浸透
魔力を物質に流すことを得意とする。身体強化、身体活性、治癒を得意とする。
回復術士に向いている。
冷属性 特性:凝縮
魔力を凝縮させる事を得意とする。
物体の強度を上げる事が出来る。
物理攻撃力、防御力を上げる事を得意とする。
騎士に向いている。
風属性 特性:放出
魔力を放出に長けている。
魔術の威力を上げたり、遠距離型の動きを得意とする。
魔術士に向いている。
雷属性 特性:分解
魔力が分解の性質を持っている。
物質を破壊する事を得意とする。
採取型職業に向いている。
剣術士、魔術士としても適性あり。
地属性 特性:構築
魔力を使って無機物を作ることが出来る。
生産型職業に向いている。
騎士、魔術士としても適性あり。
「特性はこんな感じね」
女の子は髪の毛をいじりながら、椅子へ深く座り、軽く深呼吸をした。
「この説明でわかったと思うけど、それぞれの属性には向き不向きがあるのよ。
かといって、火属性の剣術士が風属性の魔術が使えないってわけじゃないし、風属性の魔術士が、騎士になれないってわけでもないわ」
「魔術士として大成するには勉強に時間を掛けないといけないし、才能も必要ね。
それと、相応の訓練も必要だしね。
あ、騎士とかが楽という訳ではないわ、もちろん訓練が必要だしね。
ただ、魔術を習うためには、相応の施設と師と知識、それとお金が必要となるの。
だから気楽に学べるわけでもないし、環境を整えるのが難しいのよ。
そのせいなのか、比率的には、剣術士、騎士が大半って話らしいわ」
「才能と興味が一致するとは限らないし、皆平等に機会が与えられるわけでもないから、しょうが無い話ではあるんだけどね。そこら辺は工夫と努力で補うのね」
世知辛い話である。
才能があっても、開花できる環境や時代、運などが必要だったりする。
悲しいけれど、その上で落とし所を見つけて、自分なりに生きていくしか無いのだろうか。
世知辛い。
「とまぁ、魔力についてはこんな所ね」
「んで、魔力が不安定で属性が身体に定着しきっていない、今のままだと使えたものじゃないから、魔力と属性が身体に馴染みやすくするよう、私の力とこの部屋を使って上手い事するって話ね」
「そうすれば、自分の属性も分かって、目指す方向性を定めれられるってわけ」
女の子は、髪を両手でかき上げると、ふんっと息を吐き、やりきった表情をした。
「そんな所かしら。この魔力を身体に定着させる儀式を、精霊の加護と呼ぶのよ」
女の子は席を立って、何かを思い出したのかのようにこちらを見た。
「あ、そうそう。私は精霊の巫女やってる、リディエル・ラルエストって言うの。あなた達の名前を教えてちょうだい。」
俺達はそれぞれ、自分の自己紹介をする。
兄は元気よく、ティアは行儀よく。
二人と成長したんだな。
「あ、そうそう。皆が皆、属性持ちになれる訳では無いから、その時はドンマイって事で!」
え、マジで。
「さぁ。早速始めるわよ 一人ずつ祭壇へ上がってちょうだい!」




