プロローグ
俺は今、海外で旅をしている。
といっても、実際の所としては、
何の役に立っているか分からない、やりがいもない、
会社のためだけに稼ぐ働き蟻、社畜と言われる生き方に疲れ、
自暴自棄になり、生きる意欲も全く沸かない日々、
無価値感に苛まれる日々に辟易し、
いつしか全くやる気が起きなくなってしまい、勢いで会社を辞めた、
そして、日本にいることが、とてつもなく嫌になってしまい、
勢いで日本を飛び出して、ふらふらしている、というのが正解だ。
現在、死に場所を求めるように、各地を転々と彷徨っている。
日本に居た頃は、仕事は出来る訳でもなく、出来ない訳でもなく。
人からは好かれるわけでもなく、嫌われるわけでもなく。
まぁ、そこら辺にいる凡人代表という訳だ。
というか、居る居ないかも分からないような、
透明人間と言ってしまったほうが良いのかな。
人間の事はあまり好きではなく、付き合いも面倒で、
基本的に一人で居ることが多かった。
何のために生きているのか、と常々考えており、
夢も希望もなく暮らす日々に、耐えることが出来なかった。
「そろそろお金の余裕がなくなってしまうけども、
とても帰国する気にならないなぁ」
今日は、といってもほぼ毎日だが、日当たりの良い軒先で日向ぼっこをしている。
それ以外は、気が向いたら程度で現地民の手伝いや、子供たちの交流で、暇を潰しているといった状態だ。
「よーし、よし」
傍らで寝ている野良猫を一なでし、現実逃避を行う。
餌を上げていたら懐かれてしまった、今はほぼ毎日一緒にいる。
人との付き合いは面倒だと言いながらも、
寄り添ってくれるものがいると安心する。
身体を撫でると目を細め、頭を擦り付けてくる、愛い奴だ。
そんな暮らしの、ある日、爆撃音が響き渡る。
地面が震えるほどの轟音だ。
「何事!?」
咄嗟に、側に居た猫を抱えて、なるべく姿勢を低くし全力疾走。
その場から素早く走り出した。
「こんな時、どうするんだっけか……、
鼓膜が破れないよう、耳を塞いで口をあける!?
とにかく、音源地から離れないと!」
焦る、ただただ焦る。
ある程度は、覚悟はしていたものの、
いざ、実際に巻き込まれると、感情や思考が混乱する。
「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……!」
あれだけ無気力でありながらも、実際に命の危機が迫ると、
身体が反応し、全力で逃避行動をとってしまうようだ。
「-----------!!!」
背後から、焦ったような、憤ったような男の怒声が響く。
その後、何かが当たったようなするどい衝撃、身体をかき混ぜるような感覚。
よく分からない、体験した事がない衝撃と感覚が身体を劈いた。
赤黒い液体が視界に入り、鉄のような匂いが鼻腔を満たす。
「せめて、この猫だけは――」
遠のく意識の中、さらに続く轟音と衝撃を微かに感じながらも、
朦朧とする意識の中、頭に微かに響く声。
(ありがとう)
(え――何―?)
(また、お会いしましょう)
(――誰の声だろう)
そんな事を考えていたら、視界が少しずつだがぼやけてきた。
体中の感覚が無くなりつつ、ひどい睡魔に襲われる。
そして、完全に視界が失われてしまう。
そして俺は、完全な暗闇の視界の中、意識を手放す事にした。
拙い文章とお話で、大変恐縮ではありますが、
自分が楽しく掛けて、みなさんに少しでも楽しんで貰えるのなら、
心から嬉しく思います。