表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カオティックアーツ  作者: 日向 葵
第二章
51/74

51:海上戦 伝わる想い

明けましておめでとうございます!

年明け初の投稿です。

「FAAAAAAAAAAAAAAAA」


 ヴァネッサにより召喚された【アロケン】が天に向かって吠えた。

 その姿は、赤い獅子、炎のような瞳を持ち、鎧を来た姿の悪魔。


 楓はこの悪魔を知っていた。

 旧約聖書の中に記載されている、イスラエル王国、第三代の王ソロモンが封じたとされる悪魔の一体。

 序列第52位。炎の目をもつ戦士公の異名をもつ大悪魔。36の軍を従えるほどの強力な悪魔だった。


 ただ、悪魔の存在は楓の世界で、いないと証明されたものでもある。

 もし、幽霊や悪魔が本当にいるとしたら、誰しもがその存在を認知できるだろう。


 それなのに、存在が信じられてきたのはなぜか。


 幽霊や悪魔が見えるという人たちがいるからである。その者らは霊能力者などと言われている人たちである。

 しかし、霊能力者たちは「自分たちは見える」と言っているだけであり、その他大勢には見えないのだ。

 そのため、見えない人にとって存在しないのと同じである。


 さて、ここで一つ謎が生まれる。


 霊能力者がなぜ、幽霊や悪魔を認知できるのかという点である。

 魔導書が発見される前は、存在を信じるものと、妄想癖や幻覚症状によるものだとも言われていた。

 様々な憶測が生まれ、全く証明ができなかった問題。

 悪魔や幽霊に対する問題は、とある魔導書の発見により、全てが証明された。


【オルビオレジストル】


 この魔道書は、とある生命体について記述されている。それは、精神生命体。

 精神生命体などと言っているが、本当は生命じゃない。

 微弱な電気信号が何かしらの影響で複雑に絡み合う現象のことを精神生命体と言われる。


 なぜ、精神生命体などと呼ばれるかと言うと、複雑に絡み合うことで、信号でしかないものが意思を持つからである。


 信号が意思をもつなどありえないと考えられているが、人間が脳で思考することだって、電気信号の伝達により行われている。


 その事実は魔道書が発見される前からわかっていたことである。

 脳はニューロンといわれる、神経細胞の結合によって構成されている。


 どのようにして、伝達が行われているかというと、静止電位状態であるニューロンに入力刺激が入ると、活動電位が発生し、電気信号が送られる。入力刺激というのは、他のニューロンからの信号伝達があると電位が上昇するのである。ただ、ニューロンは一対一で結合しているのではなく、複数のニューロンと結合している。そのため、一つのニューロンが活動電位に達していても、閾電位を超える入力がなければ、静止状態のまま、他のニューロンに信号伝達を行わないのである。

 そして、このような複雑な神経細胞の組み合わせと、信号伝達により、様々な思考を可能としている。

 人間が鮮明な思考ができる理由として、脳が大きいとあるが、これはニューロンの結合が他の生命より多く、複雑な信号伝達をしているからである。


 魔道書が発見される前までは、脳の信号伝達により、脳が動いており、何らかの事情で、信号の誤作動が起こり、幻覚として幽霊や悪魔が見えるのではという、仮説が立っていた。

 しかし、何らかが全く見当つかなかったのである。


 魔道書が発見されてから、ある事情が判明された。

 環境などで生まれる電波などの信号と、暗黒物質による信号の絡み合いが原因で、本来影響のない信号が脳に影響を及ぼす現象である。

 恐るべきことに、暗黒物質によって複雑に絡み合った信号は、脳と同じような原理で動くため、意思を持ち始めた。

 そして、自らの意思により、人間に影響を及ぼしていたのだ。


 魔導書の著者は、意思を持った信号の集合体を精神生命体と定義した。


 精神生命体は、人間の脳内で行われている信号伝達に干渉することにより、干渉した人物に幻覚などを見せる。

 これが幽霊や悪魔の正体であり、干渉されやすい人間であった霊能力者だけが見ることができる理由である。


 そのことを知る楓には一つ、疑問が生まれる。

 それは今のヴァネッサの状況についてだ。

 ヴァネッサは精神生命体に干渉されていることがわかる。

 精神生命体に干渉された人物は、情緒不安定になるなど、様々な行動を見せる場合がある。

 それにヴァネッサが使用した魔法【アロケン】は、楓の世界でも危険とされている精神生命体。

 しかし、信号の集合体でしかない悪魔が、なぜ魔力によって具現化されたのか。


 精神生命体に干渉された場合、干渉された人物のみが、精神生命体を認知できる。

 そのため、精神生命体の影響は、干渉された人物のみに起こり、他に害が出ない。

 今回は、魔力で、精神生命体が具現化されている。


 楓には一つの仮説が生まれる。

 楓の世界にはない、エネルギーによる事象。

 魔力が精神に作用することだ。

 そして、ヴァネッサの魔力を通じて具現化していること。


 魔力は楓の世界にはないエネルギーである。

 だが、楓の世界にあるように、魔力により信号が絡み合い、精神生命体が生まれるのではないだろうか。

 そして、その魔力によって産まれた精神生命体が干渉する場所といえば、当然他の生命の魔力となる。

 魔力が人の思考、心に作用すると考えれば今の現状は不思議ではない。


 ヴァネッサは楓の言葉にひどく揺れていた。その心の隙間に悪魔と呼ばれる精神生命体が干渉したならば、今の現状にも頷ける。


 ヴァネッサの今の現状は、天然の聖呪痕による心の暴走そのものに近い。

 まるでカノンの親が聖呪痕に蝕まれている時と同じ感じである。


 そこから分かることは一つ。魔力を発散させることにより、ヴァネッサを救うことが可能ということだった。


 楓は改良を重ねて作っておいたカオティックアーツを取り出した。


 その名は【アペレフセロスィ】


 カノンの親に巣くった悪しき魔力を吹き飛ばすために作成したカオティックアーツ【インパクト】の改良を重ねて作ったカオティックアーツである。

 原理としては【トーペックス】にも用いられたエネルギーの反発現象により、相手の魔力を全て吹き飛ばすことである。


 【トーペックス】の場合、密閉空間でエネルギーの反発現象を起こすことで、暴走を起こす。

 魔力と暗黒物質により生まれたエネルギーが反発したとき、密閉空間にある場合、他のエネルギーとの衝突が起こる。

 エネルギー同士が衝突する事で生まれる熱エネルギーが高密度のエネルギーが体となり、エネルギー暴走、つまり爆発が起こるのである。

 では、密閉空間でなければどうなのであろうか。

 それは同じ極の磁石を近づける時と同じように、エネルギーが反発する。

 その時に衝突する別のエネルギーが存在しないので、反発したエネルギーは、その方向に進んでいき発散する。

 つまり、相手の魔力を完全に消し去ることができるカオティックアーツとなる。


 現状のヴァネッサを観察すると精神生命体【アロケン】に完全に乗っ取られている状態だった。


 「燃やせ、壊せ。全て、全て、全て、全て」


 「FAAAAAAAAAAAAAAAAA」


 【アロケン】が放つ炎が船を襲う。

 【リフレクト】により、船自身が燃えることはないが、【リフレクト】の耐久制限に限界が近い。

 いつ壊れてもおかしくない状態だった。


 「畜生、あれじゃあ近づけない。助けてやる方法はあるのに……」


 【アペレフセロスィ】を使えば、ヴァネッサを確実に救えるという自身はあった。

 しかし、それをぶつけられるビジョンが浮かばない。

 クレハに頼んで束縛系の魔法を使用してもらうことも考えたが、【アロケン】を束縛することは不可能だと、直感でわかった。

 クレハの使用する束縛魔法は、実際に存在するものに魔力を通して命じ、相手を束縛する。

 だが、【アロケン】は魔力の塊であり、炎自身とも言える存在だった。

 つまり、どんなもので束縛しても、あの炎で全てを打ち壊される。

 炎をどうにかしない限り束縛することは不可能である。


 「畜生。絶対に、絶対に救ってやる」


 「楓!」


 突然、後方待機していたクレハたちが、声をかけた。


「私たちが、あの炎の変なのを引き付けるから、ヴァネッサを……」


「でも、どうやるんだ。あいつに束縛魔法は」


「効かない」と言おうとしたとき、【アロケン】が吠えると同時に、炎をまき散らした。


 降りかかる炎の雨が、楓たちを襲った。


「閃光よ、大いなる災厄を振り払う守護の聖域を【クレラオ・アミナ・カタフィギオ】」


 フレアが展開した魔法が守護聖域を展開する。

 降り注ぐ炎の雨を守護聖域を防ぐ。

 しかし、炎の雨の威力は凄まじく、フレアが展開した守護聖域に(ひび)が入った。


 「クソ、このままじゃ崩れる」


 「フレアさん、何とか持ちこたえられない?」


 「ちょっと魔力が足りない」


 苦しそうにするフレア。クレハとティオはこの状況の打開策を必死で考えた。

 それは、ブラスの一言ですべて解決した。


「そういえば、【ブーストリング】には、溜まったエネルギーを相手に渡す機能があるはずだ。

 それを応用すれば……」


 「でも、どうやってエネルギーを溜めるのよ!」


「クレハが魔力をつぎ込んで、それをフレアさんに渡せ。そうすれば、あの炎の雨はしのげるはず。ですよね。フレアさん」


「ああ、そうだ、ブラス。できるかどうかわからないが、やれ、クレハ!」


 クレハは、楓に渡されていた、【ブーストリング】を取り出す。

 渡されたというより、借りたまま返していない代物だった。

 メンテナンスもちゃんとしていない。そんなもので、この危機的状況を乗り切れるのか不安になる。

 できるかどうかわからない。もし失敗したらと考えると、クレハの足は震えた。


「クレハ姉さん。きっと大丈夫だよ」


「がうがう!」


「ティオ、カノン……

 わかったわ。やってみるよ」


 クレハは【ブーストリング】に魔力を込める。

 すると【ブーストリング】が優しい輝きを放つ。

 それはまるで月の光のように、穏やかで優しい光。


「みんなを守るために、受け取ってください。フレアさん」


「任された!」


 追加の魔力により、守護聖域の輝きが増す。

 そして炎の雨と同時に守護聖域は消え去った。


「何とか、守り抜いたか……」


「やった、みんな無事だよ」


 何とか凌いだ攻撃。みんなが無事であることを喜んだ。

 これは大きな油断だった。


「クレハ、危ない!」


「え?」


 【アロケン】が黒く濁った炎の弾がクレハに向けていた。


「全員消えてなくなれぇ」


「FAAAAAAAAAAAA」


 完全に飲み込まれ、周りの見えないヴァネッサは、守るべきはずだった魔女、クレハに向けて攻撃を放った。


「ちょ、待ってよ。私はもう魔力が……」


 フレアに魔力を渡してしまったことにより、防ぐすべがなかったクレハ。

 燃え上がる炎の弾がクレハに向かって一直線に進んだ。


「いや、いやぁぁぁぁぁ」


 爆発音とともにクレハを炎が包み込む。

 疲弊しているフレアや、フレアを介抱していたティオ、ブラスは衝撃により吹き飛ばされた。


 誰も、クレハを助ける手段を持っていなかった。


 誰もが、クレハがやられてしまったと思った。

 それは、ヴァネッサも同じであり、不敵な笑みを浮かべながら高笑いした。


 吹いた風が、爆発により巻き上がった煙を払った。そこに映ったものは……


 自らを盾にして、クレハを守った楓の姿だった。


「楓……」


「大丈夫か、クレハ」


「私は大丈夫。それよりも楓が……」


「グ……ちょっとやけどしたぐらいだよ」


「いったん下がってよ。あとは私たちが」


「それじゃあダメなんだよ。俺が、俺がやるんだ」


 そう言って、ふらつきながら、楓はヴァネッサを睨みつけた。

 その背中を、クレハは心配そうに見つめた。

 本当は止めたい。だけど、楓は止まらないだろう。

 クレハはそう感じていた。だから、楓のしたいようにさせてあげようと思った。


「なんでだよ。どうして魔女のために体を張れる人間がいるんだよ。お前は一体何なんだよ」


 錯乱したように叫び続けるヴァネッサ。

 楓に行動により、心がグラついたことにより【アロケン】の動きが鈍くなった。


 それでも、吠える【アロケン】。

 しかし、術者が攻撃をためらってしまったがために、次の攻撃ができなかった。


 悪魔による精神汚染が始まる。

 頭を抱えながら、ヴァネッサは苦しんだ。

 でも、その目に映るのは、傷つき、ふらつきながらも近寄ってくる楓の姿。


「来るなよ。なんなんだよ。お前は何がしたいんだよ」


 一度取り乱した心は【アロケン】の精神汚染をも上回るものだった。

 そして、楓はヴァネッサの目の前までやってきた。


「言っただろ。俺がお前を救ってやるって」


「そんな、そんな戯言……」


「お前を蝕んでいる魔力を、全て吹き飛ばしてやる。ちょっとしんどいかもしれないけど、我慢しろよ」


 楓はヴァネッサにに向けて【アペレフセロスィ】をセットした。

 そして、起動するための音声ワードを言い放った。


「アペレフセロスィ」


 【アペレフセロスィ】が起動し、ヴァネッサの魔力をすべて吹き飛ばした。

 吹き飛ばされた魔力に引っ張られるように【アロケン】が吹き飛んだ


 魔力を失ったヴァネッサと、限界だった楓は、その場に座り込んでしまった。


「はは、もう殺せ。私を殺してくれよ。そしたら、プリシラの元に……」


 そんな弱音を吐くヴァネッサの肩を掴み、楓は言った。


「お前に何があったのかわからない。でも、死んだところで何も変わらないんだ。死ぬんじゃない。生きろ。魔女や人間だって互いに歩み寄れるんだ。辛いことを全部吐け。俺が半分背負ってやる」


「ック……ううう」


 ヴァネッサがホロリと涙を流した。

 今まであった辛い記憶。

 今までため込んできたものをすべて吐き出すようにして、ヴァネッサは泣いた。


 ここで誰もが決着がついたと思った。

 その油断が悲劇を生む。


 【アロケン】はヴァネッサから切り離されたことにより、自身の意思で攻撃できるようになっていたのだ。

 だが、魔力の元となる術者がいない以上、あとは霧散するだけだった。

 【アロケン】は消える間際に、炎の弾を放った。

 【リフレクト】の使用限界は過ぎていて、船は激しく揺れ、燃え上がった。


 それを見た【アロケン】はニヤリと笑い、消えていった。


 それが原因で、クレハとブラスにとってある意味大事件な出来事がおまけで起こってしまう。


 ほとんど力尽きている、ヴァネッサと楓は激しい揺れのせいで、バランスを崩し倒れた。

 そして、口と口が触れ合っていたのだ。


 ヴァネッサは、この事実に気が付いた瞬間、楓を突き飛ばした。

 そして、ヴァネッサと楓がお互い見つめあい、顔を赤くして俯いたのだ。


「あああああ、そんなそんな。敵の魔女と楓ぁぁぁぁぁ」


「そんな、嫌よ。楓がそんなこと……」


 クレハとブラスにとって、予想外の出来事であり、取り乱しまくった。


 発狂するクレハとブラスを置いておいて、フレアは、そんなそんなことより、最後の攻撃のせいで燃え上がる船をどうにかしないといけないと考えていた。

 ティオが言うには、万が一船に何かあった時の場合に、脱出用のボートを用意してあるという。

 船が燃え上がる前に、そのボートを準備しなければ、全員が海に沈んで、死んでしまう。


 フレアが、発狂するバカ二人を蹴り上げて動かそうとしたとき、突然雨が降ってきた。


 雨により、激しく燃えていた炎が鎮火する。


 そして、雨の中、一人の少女が舞い降りた。


「アクア……何しに来たんだよ」


「なんじゃ、ヴァネッサ。そう嫌そうな顔をするな。折角、魔女の国の当主、アクア・リヴァイヴちゃんが来てやったというのにのう」


「うるせぇ、っぐ……」


「おい、大丈夫か、ヴァネッサ」


「あ、あたいのことなんか……気にするなよ」


「そんなこと言うなよ。なんともないんならそれでいいんだ……」


「楓といったよな。その……なんだ。いろいろ溜めていたことを吐き出したらすっきりしたよ。お前のおかげだ。なんだ……ありがとう」


 楓にお礼を言う、ヴァネッサを見てアクアがニタニタと見つめる。


「ヴァネッサよ。お前の心の闇を何とかしてくれる誰かがいたら、コロッと落ちちゃうような気がしたが、本当にそうなるとはのう。チョロ子じゃ、チョロ子。それにしても、ヴァネッサに男か。長生きしてみるものじゃのう」


「そそそそ、そんなんじゃねぇよ。てか長生きとか言ってるけど、お前いくつだよ。そんな年いってねぇよな」


「ワシは今年で十二歳じゃ!」


「子供じゃねぇか!」


「のほほほほほほ。そう慌てる出ない。ぷぷぷ、可愛いのう。

 それはそうと、火も鎮火したことじゃし、この雨どけるかのう。正直うっとうしい」


「水陰の魔女がそれを言うか……」


 あきれ顔のヴァネッサを無視して、アクアは空に向かって魔法を放つ。

 すると、嘘のように雨雲が消えて、快晴になった。


 火も消えて、船も無事だったことを確認したフレアたちは、楓の元に駆け寄った。


「楓、大丈夫」


「無理そうなら、俺が……」


「変態は黙ってよ」


 クレハとブラスの楓を介抱するための、喧嘩が始まったので、その隙に、ティオが楓の世話をした。


「お兄さん。大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫。っつ。沁みるな」


「それは、仕方ないですよ。あれは無茶しすぎです」


「その、ごめんな」


 そういって、涙目になっているティオを優しくなでた。

 ティオに先を越されたクレハとブラスは、どこからか出したハンカチを噛み締めて、シクシクと泣いた。


「おお、お主は愛されているの。うむ、気に入った。気に入ったぞ」


「おい、アクア。また変なこと考えてんじゃねぇだろうな」


「何を言う。この者たちなら大丈夫なのじゃ」


「だから何なんだよ!」


「この者たちを、魔女の国に招待する」


「な!」


「別にいいじゃろう。ヴァネッサが気に入るほどの男がいるんじゃ。魔女の国はいつも男不足で困ってのう。この際、この男を魔女の国に引き込んで少子化問題を解決してもらおうと……」


「「「「それは絶対にダメ!」」」」


 クレハ、ブラス、ティオ、なぜかヴァネッサの声が重なった。

 つい、叫んでしまったヴァネッサのにやにや見ながら、楽しそうにアクアは笑った。


「ダメと言っている割には、楓とやらを気にかけているみたいじゃのう。そんなに気に入ったか。のほほほほほ」


「うっせぇ。あたいは、そんなんじゃ……」


「でも、好いておるのじゃろう。ちゅっちゅした仲じゃしな」


「ーー! お前、いつから見ていた!」


「ヴァネッサが【アロケン】を使ったあたり?」


「だったら助けろや!」


「いやぁ、こやつなら、本当にお前を救ってくれそうじゃったからな。それにしても、本当に救ってくれるとは。魔女の国の代表として礼をいうのじゃ。ありがとう」


 アクアは、楓に向かって、深々とお辞儀した。


「そんな、当然のことをしたまでだ。困っているときはお互い様だろ」


 そんな楓の返答を聞いて、アクアは目を輝かせた。

 まるで、獲物を狙った肉食獣のごとく。


「楓、お前がどうしても欲しい。だから、ぜひとも魔女の国に来るのじゃ」


「まぁ、俺たちの目的地が魔女の国だから、これから向かう予定だったんだけど……」


「そうか、そうか。しかし、このまま魔女の国に連れていくことは難しい。転移系の魔法を使えるっちゃ使えるんじゃが、この人数だとのう。じゃから、魔女の国がある大陸まで来ておくれ。港町に案内人を派遣しようぞ」


「そうか、それは助かる。ありがとう」


「のほほほほ。お主たちが来るのを楽しみに待っているぞ。

 それでは、わしらはこれで」


「ちょ、今、あたいは魔力が……

 ちょっとまてぇぇぇぇぇ」


 アクアは、ヴァネッサの襟を掴んで、霧のように消えていった。


「慌ただしいやつだったな」


「うーん、それでも、魔女の国の道が見つかったんだからいいんじゃない?」


「それもそうだな」


 全員は、無事に事態が収拾したことを喜んだ。

 そして、一同は、いったんアパダリアに帰還したのだった。


読んでいただきありがとうございます!


さて、新ヒロインになりましたヴァネッサ!

これでちゃんとしたヒロインが増えましたよ。

第二章もあとちょっと。

え、ここで第二章が終わりじゃないのと思う人がいるかもしれませんが、魔女の国に辿り着くまで続きます。

うん、コミケも終わったので、もうちょっとペースをあげられたらと思います。

頑張る……


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ